じゃぁな
-アメリア・フィールズ8番埠頭-
「カロス!まだ出せねぇのか!!」
鉄腕海賊の艦、ガーヘルトの航法士のウォードンが声を上げた。
「偉そうに命令してんじゃねぇよ!ちったぁ黙ってろ!!」
探査要員のカロスも腹立ち紛れに返した。
クック、そしてルーテシア不在の際にはウォードンが艦内の指揮を采る。ところがここは海賊艦だ。癖ありのならず者があっさり命令を受ける筈がない。
いや、それ以上に……。
「くそぅっ!閉鎖しやがった!!」
艦橋クルーが一斉にカロスに視線を集めた。
「ちゃんと報告しろ!」
ウォードンをじろりと一睨み。
「軍が介入してきやがったんだよ!」
「軍だと!?」
ウォードンを無視して、カロスはヘッドセットを耳に押し当てた。
「こっちの出港要請を受けるどころか、埠頭の出口が閉じやがった!今問い合わせる!!」
「どういうことだ!!」
焦るウォードン。砲撃管制のガリーがにやりと笑う。
「いらねぇよ。隔壁なんざ、ぶっ放しゃいいんだろ」
「まぁ待て」
と、言うことは、撃つ気はある訳だ。
「やべぇぜおい!港の閉鎖命令は第225独立特務部隊から……フォクスターが軍港を出てやがる!!」
ざわり、と艦橋がざわめいた。
あの巡洋艦、フォクスター。フェストのエステールと共に、このガーヘルトには中々癒えない瘡蓋のような存在。
「待ってられっかよ!」
操舵手のゲンを皮切りに、次々に怒声が上がる。
「頭と姐さん、助けに行こうぜ!」
「いや、その前にフォクスターを沈めちまおうぜ!!」
「ガリー、砲撃用意だ!!」
「応よ!」
「ま、待て待てまて!!」
ウォードンが止めると同時、港に衝撃と爆音が轟いたま
「ガリー!!」
「いや……俺はまだ撃っちゃいねぇよ……」
-6番街外れ-
「こいつぁ大層な……」
ジョーカーは余裕の笑みを口許に浮かべて一渡り見回した。道路は軍の装甲車が塞ぎ、その周囲と、そしてビルの窓から海兵隊がライフルを構えて包囲を固めていた。
『抵抗はするな!交戦を望むなら全力を以って対処する!!』
装甲車の中からがなり立てているようだ。
「聞いたか雷。対処っての、見てみたいと思わねぇか?」
軽く肩を竦めた雷を押し退け、京子が詰め寄った。
「わざと?ねぇわざと荒立ててる!?」
「荒立つのはこれからだ。雷、マーカーは?」
「捉えてるはずだぜ。そろそろ……」
言葉を途中に、京子の左腕、ブレスレットが煌然と光を放つ。
「……っ!」
言葉を失う京子。
咄嗟に海兵がトリガーに指をかけた。射撃……しかし地面が鳴動。射撃体勢が崩された。
「な、なに…!?」
「掴まってろ!」
固まる京子を雷が引き寄せた。
……行きます。
「イゾーデ!?」
装甲車が横転し、ビルが崩れそして……轟音と共に、地面が割れた。
「何だこれはぁ!!」
ベア小隊のロバートは装甲車の助手席に怒鳴り付けた。
「ふ、埠頭から報告!6番埠頭、砲撃によって大破!!」
「な……」
ロバート絶句。
割れた地面が隆起し、その中央より白亜の塔が突き出した。
……何事!?
京子の思考が真っ白に。
『お待たせしました』
その塔より不意に発せられた声……イゾーデ!?
「まさか翔龍姫!?」
翔龍姫の、衝角による突貫。宇宙島外郭より貫通したのだ。
裏返る声で叫んだ京子の手を、雷がしっかりと掴んだ。
「立てるか!?」
『急いで下さい。艦艇が接近中です』
傷一つない塔の一部が解放された。
「雷、ぐずぐずするな!」
ジョーカーは既に割れたアスファルトを乗り越え、エアロックに手をかけていた。
「野郎!待ちやがれ!!」
崩壊したビルの陰より飛び出したのは、鉄腕クック。
しかしジョーカーはそれを無視して雷と京子の手を取り翔龍姫へ放り込む。そしてクックと、崩壊した連邦軍の封鎖車両を一渡り見回し……
「じゃぁな、鉄腕。また会おう」
手を一振り、エアロックが閉じると同時、翔龍姫は金属のひしゃげる轟音を残し、一瞬にして宇宙空間へ姿をくらました。
第5章「大集合」終
第6章「追手」につづく……
備考……
第225特務隊主計課報告書より
アメリア・フィールズにおける作戦にて、懲罰あり
ジョージ・マッコイ大佐
懲罰内容
3時間の反省房、2日間のフォクスター艦内海兵隊待機所便所掃除、報告書に反省文を添えての提出
事由
作戦行動中における飲酒、及び飲酒運転
「飲んだうちに入らねぇだろ!一口じゃねぇか‼︎」
「飲んだことは認めるんですね」
「アリエス、裏切りやがったな!」
「仕事です」




