天斬
車は爆発の衝撃にあおられ、左折しつつ側面をビルのショーウィンドゥにすりつけた。
「やぁぁぁ!!」
シートに伏せる京子の頭上を炎の余波が通過した。
「お京、楽しんでるか!!」
ジョーカーは車を道路へ引き戻す。
「んな訳ないでしょ!無茶苦茶よ!!」
ひびの入ったフロントガラスを雷と一緒に叩き割りながら、ジョーカーは肩を竦めた。
「アクション映画好きじゃねぇか」
「それは映画だから!!」
「京子の好きな映画って、格闘系だよなぁ」
「そこ、論点違うから!!ってか、この状況で冷静に論じないで!!」
雷の視線がちらと後方へ。
「頭下げろ!!」
後方の車のルーフで、ルーテシアがゼントリックRG44対戦車ライフルを構えていた。
轟と咆吼。
戦車の正面複合装甲をも貫くテフロン加工された弾丸が、車のルーフをごっそり吹き飛ばす。
「雷、ありゃぁ反則だぞ!!」
ルーテシアがボルトを引いて、第2弾装槇。
「今度あの姐さんに会ったら言っとくよ!!」
雷の背筋に冷気が疾る。
「京子!」
京子の手を取り引き寄せた……直後、RG44のマズルブレーキが閃光を放ち、弾丸がビックホイールのタイヤを車体よりもぎ取った。
「きゃぁぁぁぁ!!」
放り出された。無我夢中で体を縮める京子は、路面で回転することだけが辛うじて感じられた。
「怪我は?」
止まると同時に雷の声。意外にも近かった。
「な……い」
「よし」
雷が抱えて転がってくれていたのだ。
視線を走らせると、車は無惨な姿でビルに突っ込みフロントからひしゃげていた。
「お京は無事か!?」
「当たり前だろ!」
京子を立たせた。
「奇跡だってば」
京子の呟きなど毛程も耳に入らない。
落ち着く間もなく、エンジン音が。クックだ。そのルーフでルーテシアがRG44のトリガーに指を掛ける。狙いは……ジョーカー。
「どいてろ!!」
雷は京子を抱えて飛び退いた。対戦車ライフルの轟咆。
「っせぁ!!」
ジョーカーが抜き打ちに振るった剣が弾丸を両断、左右の路面が吹き飛んだ。
「奥技……天斬」
ジョーカーの真正面に突っ込んで来たクックの車が……余波で両断。クックとルーテシアが脱出して間もなく、左右に割れた車はビルに突っ込んだ。
「すご……」
その姿に、京子は思わず息を呑んでいた。
京子は、剣を肩にかけて悠然と立つジョーカーに、改めて感心した。
「ただのぐーたらおやじじゃなかったんだ……」
「おいこらお京」
睨み付けるジョーカー。京子の傍では雷が必死に笑いを堪えていた。
「そーいやぁ京子が親父の暴れっ振り見るの、初めてだったよな」
「雷もひとのことを猛獣みたいに言うな」
そこに、軍用の装甲車が押し寄せた。
『そこまでだ、ジョーカー・クロウ!!』




