燃えた男
「げほっ、げほっ……る、ルー!やりすぎだ!!」
ひびが入り、高熱で溶けたフロントウィンドより黒煙は容赦なく侵入し、クックの喉を刺激した。
「でも、突破したでしょ」
くぐもった返答。ルーテシアはちゃっかりマスクを着用していた。その傍らで、シュバイツァーの無反動砲がごとりと音を立てて転がった。
「そんなことより、しっかり追い詰めなさいよ!!」
……こ、怖ぇ~。
不覚にも心に疾るその言葉。クックは改めて口許を引き締めた。
もう一台、黒煙をまとわりつけて、炎の中より飛び出した。
「ぶへっ、げほっ……アリエス、窓開けっぱなしにすんなよ!」
全開にされた窓より黒煙は容赦なく車内を襲った。
煤で真っ黒な顔を袖で拭うマッコイ。しかし、汚れを拭っているのか広げているのか分からない。
「大尉の方だって開いてるじゃないですか!」
アリエスはポケットよりウェットティッシュを取り出し洗顔。きれいになった所で通信機に手をかけた。
「ポイント通過!これより誘導のためにアタックを掛ける!!」
そしてマッコイに向き直り、
「大尉、そーゆーことでお願いします」
マッコイはちらと一瞥し、アリエスの頬に袖の煤を押し付けた。
「やってやろーじゃねぇか!」
視界の先にある2台の車を睨み付け、アクセルを踏み込んだ。
「アリエス、射撃用意!!」
今にも壊れそうな音をさせて加速。ビッグホイールの4WDを一気に追い越した。
「撃て!!」
サイドブレーキで180゜ターン。同時にバックギアでフルアクセル。ビッグホイール4WDのフロントを向き合わせた瞬間、アリエスは銃を連射した。
正面に回った車からの連射。フロントガラスに着弾、ひびで視界が奪われた。
「やるじゃねぇか!」
ジョーカーは左へ逃げた。
と、背後の車より榴弾が。ルーテシアの構えるシュバイツァーの無反動砲だ。ぎりぎりリアをかすめ、榴弾は……バックする車に直撃し、そのまま爆発した。
「お、おいおい…」
クックが思わず腕を振り上げた。
「よっしゃぁ、よくやった!!」
しかし、ルーフより身を乗り出して無反動砲を構えるルーテシアは舌を打つ。
「ハズレよ」
彼女の義眼には、爆炎の中にもすれすれ榴弾を躱して左へ曲がったジョーカーの車が見えていた。
「左、左に曲がって!」
正面で炎を上げる軍用ジープより転げ出た二人を認めたルーテシアは、ウィンクと投げキッスを進呈した。
「てんめぇ、クラレンス!やりゃぁがったな!!」
呆れたものである、マッコイとアリエス、ほぼ無傷だ。
「燃えてる男って好きよ!」
「やっかましぃ!」
走り去るクックの車に、マッコイは車の破片を投げ付けた。




