暴走
「この車はクズか!!」
マッコイは腹立ち紛れにステアリングを殴り付けた。
アメリア・フィールズの連邦軍出先機関で徴用したジープなのだが、踏み潰された車を乗り越え、中途半端に停まる車を押し退けしているうちに、車体はボロボロ、エンジンは白煙を上げ始めた。
「スピードが出やしねぇ!」
「クズにしたのは大尉でしょーに!とにかく安定させて下さい、当たりません!!」
「にゃにおぅ!!」
助手席で銃を構えるアリエスを睨め付けた。
「お前が下手なんだろーが!!」
反論の言葉を飲み下したアリエスは、9mm口径の銃を身を乗り出して連射した。しかし、4WDは停まらない。
「アリエス、タイヤ狙うんだよタイヤ!!」
「そこ以外どこ狙うってんですか!!」
止めるためにはタイヤをパンクさせるのが一番だ。そして、銃弾は確にタイヤに命中していた。あれだけ大きなタイヤだ、誰が外そうというのだ。ただ、どうやら強化タイヤをはいているらしい。手持ちの火力ではパンクに至らない。せめて、同じ場所に当てなければ……。
アリエスは通信機を手に取った。
「アリエス少尉です!増援はまだですか!!」
一瞬スピーカーにノイズが走る。
『こちらベア中隊のロバート少尉。悪いアリエス、渋滞で出遅れた!』
応えたのは同期のショウ・ロバートだ。
「ロバート、頼む、早くしてくれ。大尉が暴走中なんだ!」
「てんめぇ、暴走してんのは海賊共のほーだろーが!!」
ジョーカーを追って、交差点で潰れて擱座する車に激突しつつ左折した。
「お、おんなじじゃないっすかぁ!!」
そこに、スポーツタイプの4WDが並走し幅寄せ、そのままアタックを敢行した。
「っの野郎!」
カウンターステアを当てるマッコイが悪態を吐く。
「マッコイ!おめぇはおとなしく見てろ!!」
向こうの運転は鉄腕クックだ。
「伏せろ!」
マッコイはステアリングより手を離し、銃を助手席のアリエスへ向けた。咄嗟に伏せたアリエスの頭上で連射。5発の銃弾は確実にクックの側頭を襲うが、義手に阻まれ跳弾した。
「いい腕だ」
平然と笑うクック。
と、クックの後ろで窓がゆっくりと開いた。そこより……
「クラレンス!!」
ベルリッツBG11機関銃を窓枠に構えるルーテシアがウィンクを送る。
「付いて来ちゃ駄目よ」
「はぅっ」
機関銃のマズルフラッシュが閃く直前、急ブレーキ。アリエスはダッシュボードに頭を打ち付けた。
「っつぅぅ……」
先行するクックを睨み、マッコイはステアリングを殴り付けた。
「許せねぇ!!」
アクセル全開。アリエス今度はヘッドレストに頭を打ち付けた。
「ぞ、増援まだっすか~」
『予定地点に配備完了!追い込まれたし!!』




