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封鎖

    -6番街-


 港への行き来で混雑するAF(アメリアフィールズ)6号線。

 その港方面と中心街方面にサイレンがなり響く。港湾警察署とAF中央警察署のパトカーだ。

 港湾警察はエイダリンダ亭より喧嘩の仲裁を頼まれての出動。そして中央警察署は、連邦軍士官ケン・アリエス少尉の要請による出動だ。

 「こちらPC3号。指定地域、現着!」

 逃走中の海賊は、あのクロウ海賊団の幹部だという。そして、その逃走に鉄腕クックも噛んでいるらしい。このジャンクションに配属になって2年、ウィケット巡査は最大の事件に掌が汗ばんだ。

 『本部より了解。封鎖用の装甲車到着まで7号車と8号車と共同して交通整理に当たられたし。以上』

 ウィケットは唾を呑む。

 「緊張するな」

 運転席の相棒、ハリー巡査長は突然パトカーの後輪をロックさせ、3車線の中央に停止させた。

 直後、クラクションの音と共に車が衝撃に揺れた。後続車両が止まり切れずに追突したのだ。

 「晴れ舞台だと思え!」

 追突した車からの罵声が聞こえたが、そんなことは関係なかった。

 「行くぞ!」

 ドライバーからの罵声が響く中、二人はパトカーより飛び出した。

 その時丁度、PC7号車と8号車が到着、同僚警官も車外へ。

 「ウィケット、お前は下り線用に行け!」

 その指示に反応し、8号車のデーリー巡査が上り車線に向かう。それを確認したハリーは警棒を振り回して追突車両へ仁王立ちに。

 「ここは凶悪犯逃走中につき封鎖だ!」

 「ふざけんな!船に乗り遅れるだろ!!」

 非難の飛び交う中、ウィケットは身の丈程の柱に取り付いた。6号線27バリケード。暗証番号を入力すると、蓋が解放された。

 「封鎖ぁ!!」

 警笛を一吹き、スライド式のそれを持ち、対面より向かってくるデーリーへ走る。伸ばされたそれは中央で接続、6号線がバリケードで封鎖された。

 「封鎖完了!!」

 そう宣言した後、僅かに静寂の狭間が出来た。

 その直後、感じた。

 その場に居る誰もが、商業地区より接近する騒音を肌で実感した。

 車の暴走。しかも、巨大な4WDを先頭に、数台の車が連なって。

 「止まれ~!!」

 巡査長の声を合図に、背後の野次馬がパニックを伴い逃げ惑い始めた。

 無論、止まる気配はみじんもない。

 「くそ!」

 悪態を吐き6人はホルスターより銃を引き抜いた。もう、逃走車両は目の前だ。

 「撃てぇ!」

 官給品のリボルバーより銃弾が放たれた。しかしそれは、車のフロントグリルで火花を散らして弾かれた。

 勢いは……増していた。迫る巨大なバンパーと、直径1mを越すタイヤ。

 ……駄目だ!

 絶望的な感情が押し寄せ、左右に身を投げ出した。

 そこを、車はバリケードを踏み付け、パトカーを潰して通過していった。



 「うっひゃー、この走破性がたまらん!」

 ステアリングを握るジョーカーはご満悦だ。

 パトカーを踏み潰し、放置された車両の上を乗り越える。ぐしゃぐしゃ潰れる車の感触が堅いシートを通じて感じられた。

 「信じらんない……」

 リアシートで京子は呟いた。

 SFなのに、宇宙なのに……横浜中華街だわ店で乱闘だわ車にタイヤ付いてて強引に乗り越えて行くわ……。

 全てが雑!

 映画好きの京子としては、落胆しきりだ。しかも育ての親がこれである。

 「これじゃ海賊と同じじゃない……」

 だから、海賊だってば。

 「京子、何むずかしい顔してんだよ」

 助手席より振り返る雷。

 「別に」

 京子は視線を外した。すると銃声が。

 「ひっ」

 弾丸はリァウィンドを貫通した。

 「伏せてろ!親父、何か計画あるんだろ!?」

 ジョーカーは銃撃を惑わすように、車を左右に振った。

 「ねぇよそんなもん」

 「な……い!?んだよいい加減な!!そんなんで飛び出してくんなよな!!」

 「馬鹿やろー!あそこで出なきゃぁお前らやられてたろーが!!」

 「喧嘩はやめなさいよ!!」

 京子の一喝に二人は沈黙。王女の気迫……と言うよりは京子が怖い。

 ジョーカーはこそりと雷に耳打ちした。

 「おい……王女の記憶、戻ったんだろ」

 「育ての親がよく言うぜ。気品なんてある訳ないだろ」

 「あ~ず~まぁ!」

 「聞こえてた?まぁいいや。で、冗談いいからさ、なんとかしようぜ」

 「そーだなぁ……」

 そこに、イゾーデからの呼び出しが。

 「はいこちら逃亡者」

 『ライツ様ですか?緊急事態です』

 雷はジョーカーと目を見合わせた。

 「何があった?」

 『反対側の3番埠頭よりガーヘルトが出港しました。そして、フォクスターが接近中です』

 「フォクスター……クラウスか」

 ジョーカーの口に笑みが走る。

 ジョーカーとヨハン・クラウス、そしてエドワード・フェスト。この三人は連邦宇宙軍士官学校の悪友だ。つまり、手の内は互いに知り尽していた。

 「なら、ちょいと手荒くいくかな」

 ジョーカーは交差点で擱座する車を踏み付け、そのまま左折。

 「雷、プランが決まった。詳細をイゾーデに伝えろ!」

 「りょーかい!」

 いつの間にか、ジョーカーと雷は親子を超えた、絶妙の呼吸になっていた。

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