死守すべし
衝突は2勢力。統制の取れた集団と、各々無秩序に戦う集団だ。
「てんめぇ、なめてんなよ!」
京子が椅子を直撃させたのは無秩序な集団……明らかに海賊だ。
「娘っこでも容赦しねぇ」
柄の悪さ丸出しで、相棒を連れて京子に向かう。
「きゃー、雷助けてぇ~」
その顔は明らかに楽しんでいた。
「けっ。兄ちゃん、後悔すんなよ」
「あの、京子さん……?」
雷は京子を一睨み、決然と争乱の中心へ向かい、口の中で一節呟いた。
「一つ、騎士は王女を死守すべし」
「ごちゃごちゃうるせぇ!!」
男がおもむろに銃を振り上げる。
沈み込むように回転。雷の後ろ回し蹴りが男の銃を蹴り飛ばし、回転そのままに肘を脇腹へ叩き込む。肋骨を陥没させた男はカウンターへ吹き飛んだ。
「店内の銃器使用は危ないっすよ」
「て、てめぇ……」
相棒が生唾を飲み込んだ。
……フェスト五式体術弐の型、か。
雷に吹き飛ばされた男を見てふと笑う。
この騒動にあって、このフードを目深に被っ男はカウンターで悠々とグラスを傾けた。
上下打ち分けられたブレード、三撃目は空いた腹へと滑り込む。
「くっ!」
アリエスはその鋭いルーテシアの剣撃を辛うじて防ぎ切る。
「あら、優男の割にはやるじゃない」
未だ押し付けるルーテシアのブレード。その細腕のどこから力が出て来るのか、アリエスは徐々に後退した。
「鬼に……鍛えられてますんで……」
減らず口も鍛えられているようだ。ルーテシアの口許が微笑んだ……瞬間、腹に衝撃を感じて吹き飛んだ。
「中々可愛いじゃない、坊や」
「げほっ、げほっ!!」
蹴りだ。ルーテシアのハイヒールが、ジャストでアリエスの鳩尾にめり込んだのだ。
「でも、許してあげない」
ブレードがアリエスの喉目がけ、突きの体勢でゆっくりと引かれた。
「じゃあね」
その時、誰かがルーテシアの体に突っ込んだ。
「いったぁ……」
「……ちっ!」
舌打ち一つ、膝を付いたルーテシアはぶつかってきた…少女を睨み付けた。
「あんた、死にたいようだね!」
ブレードを一振りしたルーテシア、しかしそこに果てしない違和感を感じた。
「……なに、あんた」
どう考えてもこの大喧嘩に似つかわしくない、ごく普通の……ずぶ濡れの少女だ。しかし、ルーテシアの記憶を激しく揺する。
とそこに、一人男が割り込んだ。
「はいちょっと失礼!隠れてろって言ったろ!!」
「あ……」
その鮮やかな去り際。一瞬ルーテシアは息を詰めた。
「ラ……クーック!」
全てを忘れ、声を張り上げた。
「クック!居た、居たよあいつだ!!」
しかし大混乱の中にあって、ルーテシアの声など一切届かない。腰よりファイマン製のハンドグレネードを抜いて、懐より取り出す擲弾を装槇、天井に振り向けた。
喧嘩には掟破りの大火器使用。天井の爆音と爆風で瞬時に店内が静まった。
「お、おいルー……」
顔面青痣作り、マッコイと互いの胸ぐら掴んで拳を固めるクックは唖然と声を発した。
「みんなやめだよやめ!ライツだよ、ライツとセリアの王女さんが居るよ!!」
「……は?」
しばし頭が停止した。が、ざわり、と一部が潮のように引いて空間を開けた。
その中央には二人の若者が。
「はぁい、ライツ君。挨拶なしなんて冷たいわよ」
「いやぁ、子供を相手してもつまらないっしょ」
驚愕は波紋のように伝わった。




