エイダ・リンダ戦役
2
-エイダ・リンダ亭-
「ちっ!!」
クックは舌を打つ。マッコイは床を転がり笑って見せた。
「びっくりしたぜ。左腕、便利になってんなぁ。俺に感謝してもらいたいぜ」
「抜かせ。てめぇもこの義手に殺されりゃぁ本望だろうが!!」
再びブレードが唸りを上げる。それをマッコイは右手をかざして受け止めた。ライト・シールドだ。
「勝手に決めるなよ。俺は美人に殺されることにしてんだからよ」
「……この」
「じゃ、私じゃいかが?」
横合いより光が。
マッコイは左手をかざしてそれを止めた。
「げげ、クラレンスまで!」
ブレードを振るったルーテシアは目を細めてマッコイを睨めつけた。
「あら、シールドを2つも持ってたの……残念だわ」
「殺すんならベッドの上にしてくれよな!!」
マッコイは右手を腰に回し、ライトニング・ブレードを抜いた。しかし、手練二人が相手だ、防戦一方のまま後退。騒然と沸き立つ店内。ふと視線を巡らせると、ただ一人テーブルで食事を掻き込む男が居た。
……アリエスだ。
「アリエスてめ!上官が一人奮闘してんのに無視かよ!!」
クックの刃を逃れ、アリエスのテーブルに。
「いや……食べたら加勢しようと……」
「やかましぃ!!」
嫌だなぁ……という気持を隠そうともせず、アリエスがフォークを置いた……直後、ルーテシアの一振りがテーブルを両断。アリエスも後退しながら慌ててブレードを抜いた。
「そもそも大尉、なんでこんなことになってるんですか!」
「知らねぇよ!」
2人の前にクックとルーテシアが並んで立ち塞がる。
クックの顔が皮肉るような笑みで歪んだ。
「クラウスの命令で、三流は相手にしねぇんじゃねぇのか?」
「やかましぃ!貧乏人と違って売られた喧嘩は全部買うんだよ!!」
アリエスがポンと手を叩き、
「あ、それは連邦宇宙軍海兵隊裏憲章ですね」
実はそれを作ったのはマッコイだ。
「そうかそうか、喧嘩ときたか。俺はてめぇが任務で来たと思ってたがな」
クックは更にニヤニヤと笑った。
「何が言いたい」
「任務で来たんなら、遊ぶだけで済ませてやろうと思ってたが……海賊の巣窟に居て、喧嘩じゃ負けられねぇやな。喧嘩で負けちゃぁ、恥ずかしくって仕事が出来やしねぇ」
マッコイは訝し気に眉を寄せた。
「野郎ども!!」
クックのバカでかい声で、周囲で酒持ち歓声を上げていた客たち……いや、海賊たちが静まった。
「そこの二人は連邦の、クラウスの犬だ!そのまま帰しちまっちゃぁ海賊の名折れってもんだぜ!!」
低くも通る声。殺気の篭った視線がマッコイとアリエスに集中した。
「おっしゃぁ、みんなで畳んじまえ!!」
うおぉぉぉ!!
「戦術的に言うと、多勢に不勢ってか。やべぇな……」
「いえ、そろそろです」
今日のアリエスは妙に落ち着いていた。
「こーなりゃ海賊連合復活だ!行くぜぇ!!」
その時、入り口付近の男が殴り飛ばされ、数人が店内になだれ込む。
「中隊長殿!」
ウルフ中隊の面々だ。
「加勢に参りました!!」
呆気に取られるマッコイがアリエスに視線を送る。
「さっき、招集かけたんですよ。余計でしたか?」
「いや、上出来だ。ウルフ中隊、かかれ!!」
アメリア・フィールズの一角……そこでささやかに連邦軍と海賊連合との戦争が勃発した。




