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ホールアウト

3


  -ホイスト艦橋-

 緊張高まる中、CICデスクに立体投影される駆逐艦ホライゾに僅かながら不振な動きが現れた。

 当然クロード艦長はそれを見逃さない。

 「ホライゾと回線開け。このままでは陣型を形成出来ん。それと、救助者の情報を急かせ」

 「それが……」

 通信士が僅かに言いよどむ。

 「先程より回線が通じません」

 ……なんだと?

 「なぜそれを先に言わん!」

 「申し訳わりません!」

 「弁解はいい!至急……」

 艦長の言葉を遮るように警報が鳴り響く。CIC上のホライゾが赤く点滅。

 「ホライゾより後続のハリエルにピンガー、レーザー測距です!並びに魚雷発射菅解放!!」

 緊急通信が艦長のコンソールに。

 『クロード大佐!これは一体……』

 駆逐艦ハリエルの艦長シーゲル少佐。その焦りはひしひしと伝わった。

 「くそ……。構わん、ホライゾへの砲撃を許可……」

 「ホライゾ魚雷発射!ハリエルの予定進路と交錯!!」

 通信が乱れた。CIC上のハリエルが点滅し、消失。メイン・ディスプレイに鮮やかな炎の花が開花した。

 「ハリエル……轟沈……」

 報告するその声がかすれていた。


 異常な事態に全員が絶句した。

 味方の艦に砲撃されるなど想定外だ。陣型復帰後の操艦の乱れ、味方への砲撃。

 ……トロイの木馬か!

 続けて警報。

 「ホライゾン、続けて駆逐艦ヒールズにレーダー測距(ピンガー)照射!!」

 もう疑いはない。

 「全艦に通達!デフコン1発令、デフコン1発令!!駆逐艦ホライゾを敵艦と見なし、砲雷撃戦用意!!」

 砲撃管制のケリー大尉がアクティブセンサーによる測距をホライズに照射した。

 『大佐、何事ですか!!』

 ヒールズ、センティストの艦長がデフコンに反応して通信を寄越した。

 ホライゾの魚雷を向けられたヒールズなどは顔面蒼白だ。

 「ホライゾは占拠された。説明は後だ、今は従え!!」

 砲撃管制よりビープ音。

 「艦長、砲撃管制にエラー!IFF(識別信号)チェックにひっかかりました!!」

 ……そうか!

 クローズは舌を打つ。砲撃管制によって、味方への誤射を避けるためにロックがかかる。

 データバンクのロックを解かなければ着弾点の距離さえ測れない。

 「30秒待て!!」

 クローズは設定変更用の鍵をポケットより引き出した。

 その時、ヒールズの通信が切断した。

 「ホライゾ魚雷発射!ヒールズ轟沈!!」

 再び、鮮やかな炎の花が咲いた。

 思わずクローズはコンソールを殴りつけた。

 2隻も……いや、3隻も失うとは!!

 噛み締める唇より血が流れた。

 「艦長、通常回線(平文)で通信です!」

 ……通信だと!?

 この緊急時に、通常回線でなどセンティスからは有り得ない。

 そう、シュッテガルド、輸送船からだ。

 「黙らせておけ!」

 ……あぁ、護ってやるさ!!

 それが任務だ。

 「デニス、ロック解除!主砲、ホライゾに向け!!」

 「アイ・サー!」

 砲撃管制のデニス大尉は既にセンサーを向けていた。

 「測距よぉし!主砲0421へ回頭!!」

 「主砲全9門、一斉射!!」

 9条の光芒が闇を駆け抜けた。



 「時間です」

 頷くと、彼女は耐Gシートで淡く輝いた。

 「同調準備オッケー。ちゃちゃっとやっちゃお」

 「了解しました。modeXへ移行します」



 ……やったか。

 超至近距離であり、事前の回避行動は観測されなかった。直撃は確実だろう。

 やはり、ディスプレイに爆炎が投影された。

 「直撃確認!ホライゾ轟沈です……」

 こんなに後味の悪い勝利はない。

 4隻の僚艦は残すところセンティス1艦のみ。それでも、護衛対象が無事なだけましだ。

 「よし……周囲警戒しつつ、陣型を……」

 クローズの命令を遮るように警報が耳を貫いた。

 クローズは息を詰めた。

 この警報は……亜空間からの重力震警報!

 「重力振増大!何者かがホールアウトします!!」

 艦が細かく揺れ始めた。警報から数秒でこの揺れ。

 ……近い!

 「どこの馬鹿だ!!」

 「通報ありません!方位1300、距離……0600‼︎」

 最後はほぼ悲鳴だ。

 近すぎる!

 「全艦に通達!総員対ショック体勢!!」

 重力の波動は水面に出来る波紋のようなものだ。近ければ近いほどその波は荒れ狂う。僅かな計算ミスで、相互干渉による消滅を引き起こす超近距離ホールアウト。まともじゃぁない。特殊部隊の強襲作戦でさえ却下案件だ。

……死ぬ気の突貫か!

 艦内に緊急警報の回転灯が点灯するより早く、ホイストは模型船のように激しくシェイクされた。

量子分解は免れた。そんな安堵も束の間、転倒したクローズは額の流血も無視して身を起こした。

 「DC班に連絡!各部損傷と怪我人を確認させろ!!」

 激震が治まって第一声、クローズは吠え立てた。

 「シュッテガルドに通信!安否確認急げ!!」

 「シュッテガルド、損傷軽微!……センティストが盾になった模様」

 と、いうことは……

 「センティストと回線開け!」

 通信士官がかぶりを振った。

 「応答……ありません」

 光学映像がセンティストを捉えた。

 主砲3門と魚雷発射管を備えた艦尾が、えぐり取られたように消えていた。

 「くぅ……」

 ふと、その向こうに艦影が。

 警報が疾る。

 「0600の方向に敵艦1!エネルギー反応増大!!」

 「後方に障壁展開!!」

 光った。

 それを確認した直後、艦首の第一装甲が吹き飛んだ。

 「敵主砲、至近弾!損傷軽微!!」

 「な案…」

 クローズは一瞬言葉を失った。

 相手に測距を行った形跡がない。しかも……。

 「障壁無効化されました!一部消滅しています!!」

 有り得ん!!要塞砲クラスのエネルギーさえも70%遮るというのに……。

 「障壁再展開!全対空砲火、砲門開け!!」

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