チェックメイト
-翔龍姫-
雷鳴のように轟き渡っていた砲撃音が、不意に熄んだ。いや、これは死角に潜り込んだのだ。
……いける!
ぎりぎり、雷の体は意識を繋ぎ止めた。
「京子、行け!」
奴の弱点、エンジンノズルが迫る。雷は微調整を入れて、トリガーに指を掛けた。
と、京子は胸の奥に熱い固まりを感じた。
……あれ?
体が重い……そう感じた直後、
「かはぁっ!」
熱い、真っ赤な液体を吐き出した。
……セリア様!
吐血。
京子は大量の血を吐き出し、その体から金の光が消え失せた。同時に翔龍姫が停止。糸の切れた凧のように漂った。
「京子!!」
-エステール-
観測情報は即座に異変を分析した。
「翔龍姫、機関停止!」
「システム閉塞、こちらの通信受け付けません!」
……あれを使ったのか!
コールの心に焦りが疾る。
王女の身に……。
「砲撃中止!フォクスターへ突っ込む!!」
-フォクスター-
百戦錬磨、海賊の天敵……常に最前線に身を置くフォクスターのクルーも、さすがに息を詰めた。至近より後部を晒す、これはチェックメイトだ。
しかし、その瞬間未だ訪れず。
対して艦長は機敏だった。
「艦尾観測!急げ!!」
そこは軍人、命令あらば反応は早かった。
「翔龍姫、機関反応なし!停止、及び慣性にて漂流!!」
……好機!
「後部アンカー用意!翔龍姫を捕獲しろ!!」
「エステール加速!最短距離で本艦に向かいます!!」
「無視しろ!翔龍姫捕獲を最優先!!」
-翔龍姫-
「京子、おい京子!」
雷の呼び掛けに、まるで反応がない。その雷も、体が動かない。既に限界を超えていたのだ。
「イゾーデ、どうなってんだよ!」
船が……動いていない。
外部のモニターと、生命維持システム以外、全て停止していた。
「応えろイゾーデ!どうなってんだよ!!」
ディスプレイにフォクスターの動向が映る。係留用のアンカーがカタパルトにセットされていた。しかし、雷の目はそんな物など写していない。その手前……コンソールに表示されるバイタル、京子の心拍だ。
「……なんで」
その波形は素人目にも弱かった。
「うぅおぉぉぉ!」
激痛に耐え、雷は席を立つ。
「イゾーデ、京子を解放しろ!!」




