神業
-翔龍姫-
……思い出したぜ。
馬鹿みたいに容量のでかい翔龍姫の慣性制御装置も追い付かない高機動。姿勢制御スラスターのタイミング。神業レベルの話ではない。
肋骨の軋む音を感じつつ、雷は思い出す。
『direct link system』
……噂だと思っていたのに。
人の神経と直結して操船する。まさかその技術がこんな所に。
『雷、大丈夫!?』
……やけに元気じゃねぇかよ!
「だ、だいじょぉぶ!」
正直、意識が今にも飛びそうだ。無数の弾幕を紙一重でかわす機動、雷の腕では無理だ。
「イゾーデ、照準補助頼む!」
歯を食い縛り、雷は火器管制を移行、自分のコンソールに集めた。しかし、この機動に合わせることが出来るのか……。
「おいイゾーデ、イゾー……」
無理矢理ネジ曲げた首で見たのは、シートに完全固定され、意識を飛ばすイゾーデの姿だ。
「くそ!」
完全にリンクしていた。アシストは望めない。
『大丈夫、雷になら出来るよ。騎士なんでしょ』
「そーでした!」
もうヤケだ。退くなど出来よう筈がない。
「京子、後ろだ、エンジンノズルに回り込め!」
『うん、分かった!』
正面に主砲の光芒が迫る。
「……くぅ!」
しかし、翔龍姫は素早くロールを切ってあっさり回避。そのまま更に接近。
……内臓がいっちまいそうだぜ。
雷の口端より、僅かに血が流れた。
レッドアウトだろう、視界も真っ赤である。
……あと少し、もってくれればいい。
前後左右に振り回され、飛びそうになる意識を、必死に繋ぎ止めた。
……一撃を食らわせるまで!
ディスプレイの光学映像にフォクスターが大映しに。
霞む視界に意識を集中した。
-フォクスター-
「対空砲3番5番、8番から12番砲身異常加熱!速射60%減!」
「照準追いきれません!」
「翔龍姫尚も接近、止まりません!」
次々に報告される戦況に、クラウスは言葉を失った。
オリオン腕最強と詠われた、第225独立特務部隊巡洋艦フォクスター。それが今、小さな船たった1隻に翻弄されていた。
「翔龍姫、砲撃死角まであと50!」
……奴の狙いは!
「エンジンノズルか!何としても食い止めろ!!」




