暴走
-翔龍姫-
「……くぅ!」
フォクスターの対空機関砲と副砲の連射率が急増した。副砲に関しては照準をまともに付けてはいまい。これに、迎撃ミサイルまで混じり始めた。
……距離を取るしかない。
翔龍姫後退。
「主砲、撃て!」
一時安定させた船体より、主砲が咆哮を上げた。
しかし、今度はフォクスターの装甲に接する前に霧散する。
「被害を与えるには距離を詰めるしかありません」
……突っ込むか!
多少の被害は覚悟。
「よし……京子、多少揺れるけど、我慢……」
「通信です」
雷は言葉途中でディスプレイに目を向けた。
『ライツくん、無茶はいかんぞ!』
口髭をたくわえた、四角い顔。ミーティア艦長のベィリスだ。
「ベィリスさん……」
エステールとミーティアが至近まで詰めていた。
『この艦が楯になる。その隙に……』
「駄目だ艦長!今のミーティアじゃぁ装甲が保たないだろ!!」
『足手まとい……かな?』
ベィリスが寂しく笑う。
「そ、そんなことは……」
『いや、君の言う通りだ。だから、出来ることをやる。言っておくが、これは艦内の総意だ』
「ばかな……」
『後を頼むぞ。イージスの加護があらんことを……』
通信が一方的に切れた。
「くそぉ!なんで、なんでみんな勝手に俺にかぶせて行くんだよ!!」
ディスプレイの右端で、巨大な艦影が通過。砲弾の嵐の中へ身を晒し、尚も前進した。
……速い。
砲撃を受け止めつつ前進するミーティアの速度が、損傷を受けた艦とは思えぬ程速かった。
イゾーデは見抜いていた。
「機関を、暴走させていますね」
「そんなに冷静に言うな!!」
声を張り上げてから、雷は奥歯を噛み締めた。
……取り乱したりしたって変わりゃしないんだ。
横へ視線を移すと、京子が不安な面持ちで雷を見詰めていた。
「ごめんね、あたしのせいだよね……」
「違う。絶対それだけは違う!」
自分はなんて小さいんだ。
「いいか京子、二度と自分のせいだなんて言うなよ!……イゾーデ!!」
腹を決めた。
「ミーティアの開ける砲火の隙を抜ける!捕捉しといてくれ!!」
「了解しました」




