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ダイモス崩壊

     4

    -翔龍姫-

 「地表までの安全高度カウントダウン!!」

 「了解しました」

 刻々と近付く赤土。火星の大地にそびえる高峰、オリュンポス山がディスプレイで大写しに。

 「あ……雷、このままじゃ火星に墜ちる……」

 青ざめる京子。

 「解説します」

 イゾーデがそつなく対応した。

 「緊急事態ですので、反転せず、惑星の重力を利用した加速でダイモスの重力圏内より離脱します。衛星落下に巻き込まれる可能性もありますので」

 「丁寧な説明ありがとよ」

 それでも京子には理解不能であった。しかし雷に構っている余裕はない。

 「そろそろ機首上げ……」

 後方より閃光が追い抜き、シェイカーにかけられたような激震が翔龍姫を襲う。

 「……っくぅぅう。イゾーデ、今のは!?」

 メインのディスプレイに後方の映像が表示された。

 「な……」

 ダイモスが火を噴いていた。そしてその全面に、紅い亀裂が……。

 「メルトダウンした炉心が貯蔵庫の燃料に反応しました。動力炉は35秒後に崩壊します」

 と、もう一つの閃光が。

 ……今のは!?

 京子の胸を鋭い痛みが貫いた。

 多くの、とても多くの……。

 「巡洋艦リステン、ダイモスに巻き込まれました」

 言葉を失う雷。そして、京子の頬を涙が伝う。

 ……灯が消える、たくさんの、命の灯が。



   -エステール-

 メインのディスプレイが閃光に包まれた。もう、艦体を包む激震など当たり前だ。

 「デルフィ!今のは!?」

 コンソールに齧り付くコールの指示が飛ぶ。

 「リステンが……炉心の爆発に巻き込まれました!轟沈!!」

 「……くぅ」

 あれには多くの一般フェスト民が……。

 しかし、今嘆いている暇はなかった。エステールとミーティア、両艦とも同じく轟沈の危険を孕んでいるのだ。

 「転舵!ハード・スタァボー(面舵一杯)!!」

 火を噴き、火星へ落下するダイモス。軌道を更に変えたそれに合わせ、エステール及びミーティアは急ぎ右舷へ舳先を向けた。

 巨大な岩石は回転しながら左舷へ。

 ……抜けられるか!

 コールの素早い判断が艦を救う。とその時、正面に、回転する衛星より突き出した岩山が。明らかに衝突コースだ。

 「……っ!!」

 ブリッジの誰もが息を止め、最期の瞬間を覚悟した。

 すると映像にレティクルが重なり、計6門の主砲が旋回、一斉射。蒼い光芒に襲われた岩山は消滅した。

 コールはその光景より目をはがし、砲撃管制のクリスティーナを見た。

 彼女はにこりともせず一言、

 「な、必要だっただろ」

 コールはやっと息を吐き出した。

 「クリス、今回は感謝だよ」


  -フォクスター-

 「敵巡洋艦、リステン轟沈確認!」

 オペレーターの報告にクラウスは表情を歪めた。

 戦う相手とはいえ、衛星に巻き込まれるとは……。戦士である限り、戦いの中で倒してやりたい。しかしそんな思いも……

 「私の勝手な思い込みか」

 ロックハートが振り向いた。

 「なにか?」

 「いや、何でもない。急げ!まず先制に主砲を放つ!!」

 「巡洋艦2艦は衛星の影になります。このままの針路では……」

 クラウスの眉間に強く皺が寄る。代わってロックハートが命令。

 「護衛は無視しろ!目標は飽くまで翔龍姫だ!!」

 レーダーが火星地表近くにプラズマの反応を感知。すぐさま光学映像の望遠が追尾した。

 「発見しました!」

 白い船体がプラズマの後流を曳き、赤い大地に浮き上がる。

 「魚雷発射菅1番2番開け!魚雷4線、衛星に向けて射出!!」

 エステールへの牽制だ。魚雷、旋回式射出機より射出。光の筋が高速で衛星へ向かった。

 「主砲用意!目標、惑星上の翔龍姫!飽くまで威嚇だ!!」

 フォクスターの砲搭が旋回、エネルギーの束が咆哮した。

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