ダイモス崩壊
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-翔龍姫-
「地表までの安全高度カウントダウン!!」
「了解しました」
刻々と近付く赤土。火星の大地にそびえる高峰、オリュンポス山がディスプレイで大写しに。
「あ……雷、このままじゃ火星に墜ちる……」
青ざめる京子。
「解説します」
イゾーデがそつなく対応した。
「緊急事態ですので、反転せず、惑星の重力を利用した加速でダイモスの重力圏内より離脱します。衛星落下に巻き込まれる可能性もありますので」
「丁寧な説明ありがとよ」
それでも京子には理解不能であった。しかし雷に構っている余裕はない。
「そろそろ機首上げ……」
後方より閃光が追い抜き、シェイカーにかけられたような激震が翔龍姫を襲う。
「……っくぅぅう。イゾーデ、今のは!?」
メインのディスプレイに後方の映像が表示された。
「な……」
ダイモスが火を噴いていた。そしてその全面に、紅い亀裂が……。
「メルトダウンした炉心が貯蔵庫の燃料に反応しました。動力炉は35秒後に崩壊します」
と、もう一つの閃光が。
……今のは!?
京子の胸を鋭い痛みが貫いた。
多くの、とても多くの……。
「巡洋艦リステン、ダイモスに巻き込まれました」
言葉を失う雷。そして、京子の頬を涙が伝う。
……灯が消える、たくさんの、命の灯が。
-エステール-
メインのディスプレイが閃光に包まれた。もう、艦体を包む激震など当たり前だ。
「デルフィ!今のは!?」
コンソールに齧り付くコールの指示が飛ぶ。
「リステンが……炉心の爆発に巻き込まれました!轟沈!!」
「……くぅ」
あれには多くの一般フェスト民が……。
しかし、今嘆いている暇はなかった。エステールとミーティア、両艦とも同じく轟沈の危険を孕んでいるのだ。
「転舵!ハード・スタァボー(面舵一杯)!!」
火を噴き、火星へ落下するダイモス。軌道を更に変えたそれに合わせ、エステール及びミーティアは急ぎ右舷へ舳先を向けた。
巨大な岩石は回転しながら左舷へ。
……抜けられるか!
コールの素早い判断が艦を救う。とその時、正面に、回転する衛星より突き出した岩山が。明らかに衝突コースだ。
「……っ!!」
ブリッジの誰もが息を止め、最期の瞬間を覚悟した。
すると映像にレティクルが重なり、計6門の主砲が旋回、一斉射。蒼い光芒に襲われた岩山は消滅した。
コールはその光景より目をはがし、砲撃管制のクリスティーナを見た。
彼女はにこりともせず一言、
「な、必要だっただろ」
コールはやっと息を吐き出した。
「クリス、今回は感謝だよ」
-フォクスター-
「敵巡洋艦、リステン轟沈確認!」
オペレーターの報告にクラウスは表情を歪めた。
戦う相手とはいえ、衛星に巻き込まれるとは……。戦士である限り、戦いの中で倒してやりたい。しかしそんな思いも……
「私の勝手な思い込みか」
ロックハートが振り向いた。
「なにか?」
「いや、何でもない。急げ!まず先制に主砲を放つ!!」
「巡洋艦2艦は衛星の影になります。このままの針路では……」
クラウスの眉間に強く皺が寄る。代わってロックハートが命令。
「護衛は無視しろ!目標は飽くまで翔龍姫だ!!」
レーダーが火星地表近くにプラズマの反応を感知。すぐさま光学映像の望遠が追尾した。
「発見しました!」
白い船体がプラズマの後流を曳き、赤い大地に浮き上がる。
「魚雷発射菅1番2番開け!魚雷4線、衛星に向けて射出!!」
エステールへの牽制だ。魚雷、旋回式射出機より射出。光の筋が高速で衛星へ向かった。
「主砲用意!目標、惑星上の翔龍姫!飽くまで威嚇だ!!」
フォクスターの砲搭が旋回、エネルギーの束が咆哮した。




