反中間子砲
-翔龍姫-
ディスプレイが炎に包まれ、遅れて足下に響く振動が伝わった。
「ランディさぁぁぁぁん!!」
ディスプレイはブラックアウト、もはや動力炉の状況は分からない。いや……確認するまでもないだろう。
「動力炉メルトダウンしました。30秒後、電力停止します」
「分かってる!!」
イゾーデの冷然とした報告に、雷の腹が熱くなる。
「そんなことは……」
頑固親爺そのものの、騎士を代表するようなあの人が……。
「港の隔壁、停止しました」
雷は一気に現実に引き戻された。
電力の供給が絶たれたのだ。当然である。未だ1/3しか開放されぬ隔壁を、どの艦艇も通り抜けることは叶わない。
……ランディさん、このことを危惧して。
今更ながら、自分の浅はかさが情けない。
「あずま……」
コンソールに向かっていた京子の呼ぶ声。
「火器管制……解除したよ……」
雷は息を詰めた。
「イゾーデ、港の艦艇配置図!」
「了解しました」
そう、進まねばならないのだ。
全艦艇が、港の隔壁に対して艫を向けていた。これでは主砲を放てない。そんな中、最も小回りが利くのは……。
「副長、いいですか!?」
隔壁の状況に慌てていたコールは、突如入った雷の通信に言葉を失った。
「出港させてください!」
『まて、隔壁はどうする!!』
「翔龍姫でなんとかします、続いて下さい!」
『な……おいライツ!』
焦るコーツを横目に、雷は京子に顔を向けた。応えて京子は頷いた。
「巻き込まれんで下さいよ!通信終わり!!」
一方的に通信を終了。雷は耐Gシートにがっちり収まった。
「イゾーデ、出力上昇!出港する!」
「え……?」
さすがのイゾーデも対応に戸惑いが生まれた。
「ライツ様、この船体では隔壁を抜けられません」
「そりゃ、抜けられるとは思ってねぇよ。慣性制御システム起動!」
もう雷は止まらない。イゾーデは言われるままに起動。
「京子、前後150mm機関砲用意しとけ」
京子は無言で頷いた。
「行くぞ、翔龍姫浮上!!」
雷の声と同時、白亜の船体が港より浮上した。
「まさか……ライツ様!!」
ようやくイゾーデも気付いたようだ。
「やめて下さい!!幅が足りません!!船体に傷が……」
「やっかましい!死んじまったら傷もくそもあるか!!」
ディスプレイに港の映像とワイヤーフレームによる相対図が表示された。
「イゾーデ、主砲用意!」
浮上した翔龍姫は、狭い港でその船体を旋回させ始めた。
しかし、その全長は港の横幅よりも僅かに長い。これでは翔龍姫の両端が港の両壁にさしかかる。
「京子、前後150mm砲撃て!!」
「はい!」
翔龍姫の機関砲が前後で咆哮を上げた。
激しい砲撃に屈した壁は孔を穿ち、翔龍姫が反転する隙間を与えた。
「素晴らしい……」
傷はなし。その手際にイゾーデは思わず嘆息を洩らした。そこに、砲撃の振動で岩盤が崩れ落ちた。
「……うぅ」
「よっしゃぁ!」
翔龍姫の反転は成功、船首が港の隔壁に向いた。
「あぁぁ、せっかく修復した装甲が……」
「イゾーデ、へこんでる暇はないぞ。主砲用意だ!」
「凹んだのは第3区画の第1装甲板です」
明らかに不機嫌だ。しかし雷はまるで気にしない。
「副長、聞いてますか!?」
『ライツ!貴様港内でやる気か!?』
「さすが、察しがいい」
『いや、そうじゃなくて……』
「他にいい案あったら乗りますが」
コールは言葉に詰まる。
「んじゃ、格艦に通達頼みます。念の為にシールド展開しといて下さい!!」
『ライツ!!』
雷は当然通信カット。
「反中間子砲、準備整いました」
「照準合わせ……隔壁に向けろ!」
イゾーデの操作により、ディスプレイ上のレティクルが隔壁に重なった。
「出力上げとけよ!爆破と同時に出る!!」
京子の目の前にトリガーが起き上がる。
「了解です。対電磁防御……完了。いつでもどうぞ」
「よし……反中間子砲、撃て!!」




