表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/75

業炎と疾風

   -港 埠頭口-

 埠頭と通じる路は、耐爆使用の隔壁によって閉鎖されていた。

 「爆薬を増やせ!」

 ファルコン・リーダー、コーツ大尉の命令に合わせ、隔壁に取り付いた兵士が指向性爆薬を壁にセットした。

 漂う硝煙の臭いと、焦げ具合。既に2度の挑戦がなされた後だ。

 「爆破準備、完……」

 振り向いた兵士は、そのまま凍り付く。

 怪訝に眉を寄せるコーツ。

 「どうした?」

 自分に焦点があっていない。更に向こうの……。

 「困るなぁ、連邦の……」

 ゆっくりと肩越しに背後を見る。二人、手配書で何度も確認した、クロウ海賊団『業炎のディアス』と『疾風のレオン』、ゲィツの2ndと3rdのお出ましだ。

 「ドアは普通に開けてくれよ」

 余裕の笑みを浮かべるコール・ディアス。

 最前線で戦うコーツも、危険人物のワースト10入りをする有名人に直接会うのは初めてだ。百戦錬磨の海兵隊大尉は緊張に喉を鳴らした。

 「連邦の、騎士の情けだ。今撤退するなら、格納庫で私の部下を殺したことは忘れよう」

 クリスティーナがにやりと笑う。

 ……嘘だな。

 「ふざけてもらっては困る。我々腐ってもクラウス大佐揮下の海兵隊だ。情けなど無用!」

 コーツの手が上がる。

 「撃てぃ!!」

 整然と並ぶ海兵15人、一斉にライフルを斉射した。

 「来い、守護神シルフィード!」

 二人の足下が一瞬閃いたかと思うと、姿が消えた。

 轟く銃声の後、兵士達は着弾位置を凝視。

 ……消えた!?

 いや、風を纏ったコールとクリスティーナは高速で兵士の視界の外、隊列の左手へ駆け抜けた。

 いち早く気付いたコーツが、速射性能を誇る空挺用ライフル、ジッツァSA-86の銃口を振り向けフルオートで弾丸を射ち出した。

 5秒で弾倉内の30発は空に。

 「イージス!」

 しかし、その全弾が見えない何かに阻まれ、コールの前で停止、地面に転がった。

 「く……」

 呻きを洩らし、スペアの弾倉を取り出した。その間に……、

 「せぇやぁぁ!!」

 コールとクリスティーナが入り乱れるように隊列へ。その手には光の剣が。一瞬にして15人の兵士が崩折れた。

 「最後だな、連邦の……」

 コーツは凍り付く。

 ……格が違う。

 コールが手を組むと、足下に法円が輝いた。

 「来たれ、我が神獣イフリート!!」

 コーツの背筋に戦慄が疾り、咄嗟にライト・シールドを展開。

 ……業炎のディアス!

 その字を思った時には遅かった。突如空間に出現した紅蓮の炎は、いとも簡単にシールドを浸食し、周囲の鋼鉄ごと焼き付くした。


 「ふぅ……」

 未だ熱気に陽炎を浮かべる中、コールは軽く息を吐いた。

 「ふん、敵ではな……」

 すぱんっ、とその頭を平手が張り倒す。

 「……ってぇ、クリス!いきなり何をする!!」

 頭を押さえて振り返るコールを、眉間に皺を寄せたクリスティーナが睨み付けた。

 「基地及び艦内は火器厳禁!」

 「おいおいおい、連邦の海兵隊を倒すのにイフリート呼んで文句言うなよ」

 「ダメ!剣でかたが付いた筈だ。それに、僕は禁煙させられたんだぞ!!」

 ……詰まる所、その恨みか。

 「悪かった。以後気をつけよう」

 クリスティーナは頷いた。

 「連邦を相手に気持ちは分かる。……でも、指揮官があまり熱くなるな」

 「まったく、俺が後輩に諫められるとはな。団長が見ていたら笑われていたな」

 と、コールの通信端末が呼び出し音を響かせた。

 「コールだ」

 『ディアス、急いでエステールを出せ!!』

 CDCのランディからだ。

 「何事です?」

 クリスティーナの忠言に従い、冷静に問い質す。

 『別動隊がおった!動力炉を占拠された!!』

 「爆破するつもりか!?」

 瞬間的にセリア王女の安否が気に掛かる。

 「王女はどうしてますか!?」

 『それが……』

 不意にランディが言い淀む。

 『医務室におられんのです!』

 ……ライツか!

 「サーチ出来ますか!?」

 『いえ、混乱しとりまして……』

 無理は承知だ。今の状況で個人の判別は難しい。

 と、コールの側で風が巻く。

 ……その手があったか。

 クリスティーナがシルフィードを召喚した。しかし……クリスティーナの表情が不穏に曇る。

 「……有り得ない」

 「有り得ない?」

 「反応がない。僕の大気内で反応がないなんて……」

 クリスティーナのシルフィードは、同じ空気を共有する空間において、全てを認知する。それが、死体であったとしても、だ。にも関わらず、彼女が反応を拾えない、ということは……。

 焦燥を現すクリスティーナに、コールが詰め寄った。

 「有り得るか有り得ないかは後回しだ!つまり、王女はどうしたんだ!?」

 「つまり……この基地内に王女が居ない」

 冷徹で知られるコールの顔が、見る見る青ざめた。

 「ここに居ないだと!?」



   -エステール-

 「王女が居ない~!?」

 先輩もへったくれもない。エステールのブリッジで出港準備を進めていたレイ・ハワードは、コールからの通信に思わず声を張り上げた。

 「ちょっと待って下さいよ、ライツはどうしたんですか!この非常事態にあの馬鹿……」

 『分からん。奴も反応がない』

 「何でまた……」

 レイは奥歯を噛み締めた。

 ……野郎、後でぶん殴る!

 『私とクリスはこれから基地内を探す』

 「あ、俺も行きます」

 『いや待て。お前はそこに居ろ』

 厳然たるコールの態度にレイは言葉を詰める。

 「あ……で、でも……」

 『別動隊が動力炉を占拠した。更に巡洋艦2隻が接近中だ』

 「それは……」

 『或いはこの基地を放棄する。これより順次艦に退避するよう通達した。お前はその指揮を執れ』

 レイの表情が悲痛に歪む。

 「はい、了解しまし……」

 傍らのセンサーが反応し、レイはふと言葉を止めて目をやった。

 …200m付近に空間の歪みだって?

 見たこともない数値だ。

 「ふ、副長、ちょ、ちょっと待って下さい。今……」

 急いでモニターを港へ。すると、何もなかった空間に、突如金色の粒子が出現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ