幕間:邪神様はご満悦
ふふん、ふふふん♪
今日も今日とて、妾はご機嫌じゃ。
何しろ、ついに長年温めてきた復讐計画が動き始めたのじゃからな!
……いや、長年というほどでもないかのう。
まあ、細かいことはどうでもよい!
重要なのは、あの忌々しいアストレイアに、一泡吹かせる準備が整ったということじゃ!
「ふふふ……。今頃、あやつは何をしておるのかのう」
妾は、ふかふかの大きな椅子に腰掛けながら、足をぷらぷらと揺らした。
ここは、神界にある妾の宮殿。
白と紫を基調とした、実に美しく、実に豪華で、実に妾に相応しい場所じゃ。
……もっとも。
今の妾には、管理する世界がない。
何万年もかけて育ててきた、あの美しい世界は。
あの女によって、消されてしまったのじゃ。
「…………」
……いかんいかん。
また思い出してしまった。
せっかく機嫌がよかったというのに。
「ふんっ! 今に見ておれ、アストレイアめ!」
妾は、ぎゅっと拳を握りしめた。
あやつが妾の世界を消したように、妾もあやつの世界をめちゃくちゃにしてやるのじゃ!
……まあ、さすがに世界そのものを滅ぼすつもりはないがのう。
そんなことをすれば、そこに暮らす者たちが可哀想じゃし。
それに、世界の均衡を本当に崩してしまえば、妾の仕業だと疑われるかもしれぬ。
何より、神界から追放されるのは困る。
じゃから、ほどほどでよいのじゃ。
人間同士で少し争いが起きたり、どこぞの王様が困ったり、あの女の管理する世界がちょっぴり騒がしくなったり。
それくらいで十分じゃ。
ふふん。
妾は、なんと寛大な神なのじゃろう!
「……む?」
そこで、ふと思い出した。
「そういえば、そろそろ人間世界では一日が経つ頃じゃな」
妾が地球から一人の人間を召喚し、アストレイアの世界へ送り込んでから、もうそれくらいの時間が経っておるはずじゃ。
確か、名前は……。
「……アレン、じゃったかのう?」
黒瀬アレン。
長い黒髪で目元を隠した、何とも大人しそうな少年じゃった。
妾が少し偉そうに話しただけで、びくびくしておったしのう。
あれなら、妾の命令にも素直に従うじゃろう。
うむ!
やはり、妾の人選に間違いはなかったのじゃ!
「さてさて。妾の眷属であるあやつが、一日でどこまで進んだのか、見てみるとするかのう!」
妾は、ぱちんと指を鳴らした。
すると、目の前の空間に光が集まり、大きな水鏡が浮かび上がる。
そこに映し出されるのは、アストレイアの管理する世界。
妾が送り込んだ少年の姿を、遠く離れた神界から覗き見るためのものじゃ。
……もちろん、見るだけじゃぞ?
直接干渉しておるわけではない。
じゃから、掟には触れぬ。
たぶん。
「ふふん! さて、どこまで行ったかのう?」
妾は、期待に胸を膨らませながら、水鏡を覗き込んだ。
そして。
「…………む?」
そこに映っていた光景を見て、首を傾げた。
大きな部屋。
豪華な家具。
ふかふかの絨毯。
天蓋の付いた、いかにも高級そうな寝台。
そして、その寝台の上では。
一人の少年が、すやすやと眠っておった。
「…………」
……アレンじゃな。
間違いない。
あの黒髪に、黒い衣装。
妾が与えた、実に格好よい眷属の衣装じゃ。
……じゃが。
「……なんで、そんな豪華な部屋で寝ておるのじゃ?」
妾は、目をぱちぱちと瞬かせた。
確か、あやつを送り込んだのは、何もない草原の真ん中じゃったはず。
そこから街を見つけ、宿を探すだけでも、それなりに時間がかかるじゃろうと思っておったのじゃが……。
どう見ても、普通の宿屋ではない。
というか。
「……むむ?」
よく見ると、アレンの隣には小さな少女が眠っておった。
淡い桜色を帯びた、長い銀白色の髪。
人形のように整った、愛らしい顔立ち。
白と桃色のフリルに包まれた少女は、片腕に小さな熊のぬいぐるみを抱え、もう片方の腕でアレンにしがみついておる。
まるで、お気に入りの抱き枕を離すまいとしておるようじゃ。
「…………」
……なんじゃ、これは。
「……おぬし、もう女の子と仲良くなったのか?」
しかも、随分と懐かれておるようじゃ。
あの大人しそうな少年が、のう。
人は見かけによらぬものじゃな。
「ふむ……。しかし、ここは一体どこなのじゃ?」
妾は、水鏡に映る光景を少し広げた。
すると、屋敷の外観が映し出される。
立派な門。
広い庭園。
何人もの使用人や衛兵。
そして、屋敷の上には、この地方を治める貴族の紋章が掲げられておった。
「……ん?」
妾は、その紋章を見つめた。
「……エルフォード家?」
確か、この地方の領主じゃったか。
ということは。
「……待て待て待て!」
妾は、思わず椅子から立ち上がった。
「ここ、領主の館ではないか!?」
なんでじゃ!?
なんで送り込んで一日も経たぬうちに、領主の館で寝泊まりしておるのじゃ!?
しかも、領主の娘らしき少女に抱きつかれながら!
「……い、一体、何があったのじゃ?」
妾は慌てて、水鏡に残された過去の光景を遡った。
まず映し出されたのは、街を歩くアレンの姿。
うむうむ。
ここまでは普通じゃな。
次に、少女とぶつかる姿。
……む?
その直後、衛兵に取り押さえられる姿。
「……あっ」
……あやつ。
何かやらかしたのか?
そして、領主の館の地下牢へ連れていかれる姿。
「…………」
……おお。
なんということじゃ。
送り込んで早々、牢屋に入れられておるではないか。
「……やはり、あの衣装は少々目立ちすぎたかのう?」
いや、しかし。
邪神の眷属なのじゃから、格好よさは重要じゃし。
うむ。
衣装のせいではないな!
たぶん!
妾は、さらに光景を進めた。
すると、地下牢に領主らしき男が現れた。
その周囲には、数人の護衛。
そして――。
「……む?」
護衛たちが、突然眠り始めた。
続いて、領主も眠る。
「おおっ!」
妾は、思わず声を上げた。
「《睡眠学習》を使ったのじゃな!」
ふふん!
そうじゃ、そうじゃ!
妾が授けた権能ならば、これくらい朝飯前じゃ!
アレンは眠っている領主に何やら話しかけておる。
そして、領主を目覚めさせると。
なんと。
先ほどまであやつを睨みつけておった領主が、突然、嬉しそうにアレンを抱きしめたではないか。
「…………」
……ほう。
それから、アレンは牢屋から出され、屋敷の中へ案内されていく。
最後には、領主の娘と二人きりになり、再び《睡眠学習》を使用。
その結果が、先ほどの光景というわけじゃな。
「…………」
妾は、しばらく黙って水鏡を見つめた。
そして。
「……ふ、ふふっ」
口元が、自然と緩んだ。
「ふふふ……!」
なるほど。
なるほどのう!
「ふははははっ! やるではないか、アレン!」
妾は、思わず高笑いした。
「まさか、たった一日で領主を味方につけてしまうとはのう!」
しかも、領主の娘にまで気に入られておる!
これなら、今後の活動にも困らぬじゃろう。
金もある。
住む場所もある。
領主の後ろ盾まである。
うむ!
実に順調じゃ!
「ふふん! さすがは妾の眷属じゃな!」
妾は、得意げに胸を張った。
……まあ、妾が選んだのじゃから、当然といえば当然か。
ふふふ。
やはり、妾は人を見る目があるのう!
……しかし。
「…………む?」
そこで、ふと。
あることに気づいた。
「……いや、待つのじゃ」
妾は、再び水鏡を見つめた。
領主の館。
領主の娘。
領主本人。
そして、その周囲の衛兵たち。
「…………」
……これ。
「……少々、派手に動きすぎではないか?」
まだ、一日目じゃぞ?
普通、こういうものは、もう少し慎重に進めるものではないのか?
まずは街に慣れて。
知り合いを増やして。
少しずつ協力者を集めて。
それから、徐々に偉い者たちへ近づいていく。
……そういうものではないのか?
それなのに、あやつときたら。
いきなり領主を味方につけてしまいおった。
「…………」
……いや。
待てよ?
「……これだけ派手に動けば、アストレイアに気づかれてしまうのではないか?」
妾の背中に、冷たいものが走った。
もし、あの女が不審に思い、詳しく調べ始めたら?
そして、アレンが神の権能を持っていることに気づいたら?
さらに、その権能を与えたのが妾だと知られてしまったら?
「…………」
……まずい。
非常にまずい。
妾は、ただでさえ神界の掟を破り、邪神という警告の呼称を与えられておるのじゃ。
次に掟を破ったことが発覚すれば、神界から追放されてしまう。
「……い、いやいや! 落ち着くのじゃ、妾!」
まだ、何も決まったわけではない!
そもそも、あの女が気づいておるとは限らぬ!
……そうじゃ。
確認すればよいのじゃ!
「ふふん! そうと決まれば、早速行動じゃ!」
妾は、水鏡を消し、椅子から飛び降りた。
そして、神界の回廊へと向かった。
◇◆◇
神界の回廊は、今日も静かじゃった。
白く輝く床。
どこまでも続く柱。
天井の向こうには、星々のような光が浮かんでおる。
……さて。
あの女は、どこにおるのかのう。
妾は、周囲をきょろきょろと見回した。
すると。
「……おっ」
少し離れたところに、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
長い白金色の髪。
白と金を基調とした衣装。
背筋を伸ばし、静かに歩くその姿。
……間違いない。
アストレイアじゃ。
「…………」
よし。
まずは、自然に声をかけるのじゃ。
あくまで偶然。
偶然会っただけ、ということにするのじゃぞ。
妾は、少しだけ足を速めた。
そして、アストレイアの背後へ近づき――。
「お、おおっ! アストレイアではないか!」
できるだけ自然な声で呼びかけた。
「奇遇じゃのう! こんなところで会うとは!」
アストレイアが、ゆっくりと振り返る。
「……リリスティアですか」
「う、うむ! 妾じゃ!」
「何か御用ですか?」
「む? 用などないぞ! たまたま通りかかっただけじゃ!」
「そうですか」
アストレイアは、静かに頷いた。
……よし。
怪しまれておらぬ。
完璧じゃ。
「……ただ」
「……む?」
「先ほどから、私の後ろをついてきていたようですが」
「…………」
……なっ!?
「き、気のせいじゃ!」
「そうですか」
「そ、そうじゃ!」
「分かりました」
「…………」
……本当に分かっておるのか?
いや、まあよい。
今は、それどころではないのじゃ。
「そ、それよりじゃな!」
「はい」
「最近、調子はどうなのじゃ?」
「特に問題ありません」
「そ、そうか! それは何よりじゃ!」
「ありがとうございます」
「…………」
……会話が終わってしまった。
なんじゃ、この女。
もう少し話を広げるとか、そういうことはできぬのか?
妾は、小さく咳払いした。
「……こほん。そういえば、おぬしの世界は最近どうなのじゃ?」
「私の世界ですか?」
「う、うむ! 何か変わったことなど、起きておらぬか?」
「特にありません」
「…………」
……ほう?
「ほ、本当か?」
「はい」
「何か、その……妙なことが起きたりとか……」
「妙なこと、ですか?」
「そ、そうじゃ! 例えば、突然変わった人間が現れたり、偉い者が急に態度を変えたり……」
「…………」
アストレイアが、こちらを見つめた。
……し、しまった!
具体的すぎたか!?
「……リリスティア」
「な、なんじゃ!?」
「なぜ、そのようなことを気にするのですか?」
「…………」
……まずい!
非常にまずい!
「い、いや! 別に深い意味はないのじゃ!」
「そうですか」
「そ、そうじゃ! ただの世間話じゃ!」
「なるほど」
アストレイアは、特に疑う様子もなく頷いた。
そして、淡々と言葉を続ける。
「私の世界では、各地で多少の争いや政治的な変化は起きていますが、世界全体の均衡に影響するような問題は発生していません」
「……ほう」
「人間同士の権力争いや、地方領主の交代などは珍しいことではありません。世界の管理に支障がない限り、私が介入する必要はありませんから」
「…………」
……なるほど。
つまり。
領主が一人の少年を気に入った程度では、そもそも気に留めぬということか。
「……そ、そうか!」
妾は、ほっと胸を撫で下ろした。
よかった。
どうやら、まだ気づかれておらぬようじゃ。
「ふふん! それなら安心じゃな!」
「……安心?」
「……あっ」
しまった。
「い、いや! おぬしの世界が平和なら、それはよいことじゃと思っただけじゃ!」
「そうですね」
「う、うむ!」
……危ないところじゃった。
まったく。
妾としたことが、少々取り乱してしまったのう。
じゃが、これで一安心じゃ。
あの女が気づいておらぬのなら、アレンには引き続き頑張ってもらえばよい。
ふふふ。
これからが楽しみじゃな!
「では、妾はそろそろ失礼するのじゃ!」
妾は、くるりと踵を返した。
……そのとき。
「ところで、リリスティア」
「……む?」
背後から、アストレイアの声が聞こえた。
妾は、ぴたりと足を止めた。
「……な、なんじゃ?」
「あなたは、いつまでそのように過ごしているつもりなのですか?」
「…………」
……む?
「……どういう意味じゃ?」
「あなたは、すでに自分の世界を失っているのでしょう?」
「…………」
妾の表情が、固まった。
アストレイアは、そんなことなど気にも留めず、淡々と言葉を続ける。
「でしたら、他の神の世界を気にしている場合ではないはずです」
「……なっ」
「新しい世界を創造し、適切に管理することをお勧めします」
「…………」
……は?
「……おぬし、今、何と言った?」
「新しい世界を創造するべきだと申し上げました」
「…………」
……この女。
妾の世界を消しておきながら。
よくも、そんなことを平然と言えるものじゃな!?
「な、なぜ妾が、おぬしにそんなことを言われねばならぬのじゃ!」
「なぜ、と申されましても」
アストレイアは、不思議そうに首を傾げた。
「神が世界を管理するのは、当然の務めですから」
「ぐぬぬ……!」
「それに、あなたは現在、警告処分を受けている身です」
「……分かっておるわ!」
「新しい世界を創造し、今度こそ神界の掟に従って管理すれば、いずれ処分の解除を申請することも可能でしょう」
「…………」
……む?
「……解除、じゃと?」
「はい」
アストレイアは、静かに頷いた。
「例えば、二万年ほど問題なく世界を管理できれば、上位神に警告処分の解除を申請する十分な実績になるかと思います」
「…………」
……二万年?
「……に、二万年じゃと!?」
「はい」
「長すぎるじゃろうが!!」
「そうでしょうか?」
アストレイアは、相変わらず表情を変えぬ。
「神にとって、二万年はそれほど長い期間ではありません」
「長いわっ!!」
妾は、思わず地団駄を踏んだ。
「そもそも、妾は何万年もかけて、あの世界を育ててきたのじゃぞ!?」
「存じています」
「それを、おぬしが勝手に消してしまったのじゃろうが!」
「世界の均衡が崩壊していましたので、リセットは必要な措置でした」
「ぐぬぬぬ……!」
……この女!
まったく反省しておらぬ!
いや、そもそも悪いことをしたとすら思っておらぬのじゃ!
「リリスティア」
「……なんじゃ!」
「お気持ちは理解できます」
「……は?」
「長年管理してきた世界を失ったことは、残念だったでしょう」
「…………」
……おお?
「ですが、だからこそ、次の世界をよりよく管理することが大切なのです」
「…………」
「同じ過ちを繰り返さないよう、今度は均衡の維持を最優先にしてください」
「…………」
……この。
「……このっ!」
「はい?」
「この、分からず屋ぁぁぁっ!!」
妾は、思わず叫んだ。
そして、そのまま踵を返す。
「もうよい! おぬしと話しておっても腹が立つだけじゃ!」
「そうですか」
「ふんっ!」
「では、失礼します」
「…………」
……なんじゃ、その反応は!
もう少し申し訳なさそうにするとか、引き止めるとか、何かあるじゃろうが!
妾は、ぷりぷりと怒りながら、その場を後にした。
◇◆◇
「むきぃぃぃっ!!」
宮殿へ戻るなり、妾は叫んだ。
「何なのじゃ、あの女は!!」
ふかふかの椅子に飛び乗り、手近にあったクッションを抱きしめる。
そして、そのまま思いっきり顔を埋めた。
「むぐぐぐぐ……!」
腹が立つ!
腹が立つのじゃ!
妾の世界を消しておきながら!
新しい世界を作れじゃと!?
しかも、二万年!?
ふざけるでないわ!!
「……ふんっ!」
妾は、クッションをぽいっと放り投げた。
まったく。
あの女は、昔からそうじゃ。
神界の掟だの、世界の均衡だの、正しい管理だの。
そんなことばかり言いおって。
少しは、そこに暮らす者たちの気持ちを考えたらどうなのじゃ!
「…………」
……まあ。
妾の世界が、少々危ない状態になっておったのは認めるがのう。
魔獣が増えすぎて。
瘴気も広がって。
人間たちが暮らせる場所も、随分と少なくなっておった。
……じゃが。
それでも、妾にとっては大切な世界じゃったのじゃ。
そこに生きる者たちも。
長い年月をかけて育ってきた森も。
山も、海も、空も。
何もかも。
妾にとっては、かけがえのないものじゃった。
「…………」
……それなのに。
あの女は、あっさりと消してしまいおった。
まるで、不要になったものを片づけるかのように。
「……絶対に、許さぬのじゃ」
妾は、小さく呟いた。
そして。
「……そうじゃ!」
ぱっと顔を上げる。
妾には、まだ切り札があるではないか!
「アレンじゃ!」
妾は、再び指を鳴らした。
目の前に、水鏡が浮かび上がる。
そこには、先ほどと変わらず、豪華な寝台で眠っているアレンの姿が映っておった。
その隣では、領主の娘が幸せそうな寝顔を浮かべながら、アレンにしがみついておる。
「…………」
……うむ。
何とも平和な光景じゃな。
……いや、違う!
妾が見たいのは、こんな平和な光景ではないのじゃ!
「アレンよ!」
妾は、水鏡に向かって指を突きつけた。
「もっとじゃ!」
もちろん、こちらの声が届くわけではない。
じゃが、そんなことはどうでもよい!
「もっともっと、あの女の世界をめちゃくちゃにしてやるのじゃ!」
領主一人を味方につけた程度では、まだまだ足りぬ!
もっと大きな騒動を起こすのじゃ!
あの女が困るくらい!
あの女が、少しは妾の気持ちを理解するくらい!
「ふふふ……!」
妾は、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「ふははははっ!」
そうじゃ!
これからが本番なのじゃ!
あの女が平然としていられるのも、今のうちじゃぞ!
「ふはははははっ! 思い知るがよい、アストレイア!!」
妾の高笑いが、宮殿中に響き渡った。
……ああ。
実に愉快じゃ!
実に楽しみじゃ!
妾の眷属が、これからどんな騒動を起こしてくれるのか。
想像するだけで、胸が躍るというものじゃ!
……もっとも。
妾は、このとき、まだ知らなかった。
あの大人しそうな少年が、妾の想像など遥かに超える欲望を抱いておることを。
面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。




