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【書籍化企画進行中】公爵令嬢フローラの選択  作者: ごろごろみかん。
4.公爵令嬢フローラの選択

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6.進むも戻るも死あるのみ、なら

アシェルの合図とともに爆発したのは、どこに配置した爆弾かしら。


ネイサンが被弾していないことを願うしかない。


(…………まあ、ネイサンは寝室に運んでおいたし。そこから移動していなければ、直撃はしてないはず。きっとね)


彼の無事を願っておこう。

威嚇の意味もあるのだろう。それから数発、アシェルは爆弾を爆発させた。

その度に轟音が響き、地響きがあちこちから起こる。

天井からパラパラと石壁の破片が落ちてくる。


いつ崩落してもおかしくない。


(だから、これは賭け)


私たちが逃げるのが先か。

あるいは──陛下たちと共に、私たちもまた、ここで瓦礫に埋もれるか。


私はちらりと、床に転がったままのメルンシアに視線を向けた。


十人を超えるオッドアイの少女たちはみな、その身は崩れ、魔力化した。既に魂は滅び、その肉体も朽ちていたのだろう。だけど、魔石化されたことで、この地下室に固定されていた。

魔石化が解けたことで、彼女たちは砂のように消えてしまったのだ。


だけど、メルンシアは──私の考えが正しければ、魔石化してからそう時間が経過していない。だから、肉体を保っている。


(これも、時間の問題だとは思うけど……)


何せ、メルンシアは自他ともに認めるほどに魔力量が少ない。彼女に残された時間はどれほどだろうか。

まだ意識はもどらない。そもそも、意識が回復するものなのかすらも分からない、けれど。


私は首を傾げて陛下をみた。


「彼女はよろしいのですか?彼女は不用意に魔道具に触れて、魔石化してしまった。メディリアン公爵は、ご息女を溺愛なさっていると聞きますし……せめて、彼女の肉体は、ご実家にお渡しするべきでは?早くしないと、消えますわよ。先程の彼女たちのように」


「そ──な──ッうわ!?」


陛下は、怒りのあまり口を開いたものの、言葉になっていなかった。しかも、そのタイミングでまた、爆発が起きた。パラパラと瓦礫の破片が落ちてくる。本当に、一刻の猶予もない。

爆発で、地面が揺れて、陛下がたたらを踏んだ。


「それに、この爆弾。実は、ネイサンの部屋にも仕掛けてるのです。どういうことか、ご聡明な陛下ならお分かりでは?」


「──」


私の言葉に、陛下の顔が青ざめた。

ネイサンは、唯一の子供。…………と、陛下は思っている。

だからこそ、唯一直系の血を引く王子が失われる自体は裂けたい、と思ったのだろう。


ダメ押しのように、私は言った。


「さらに、ネイサンはお休み中です。ぐっすりと♡」


アシェルが眠らせたもの。薬でね。


私が何か仕掛けたことで、王子がお休み中。そらにその部屋に爆弾が仕掛けられた──となると、近衛たちも平静ではいられなかったようで、陛下に指示を仰ぐように視線を向ける。

それに、陛下はギリギリと歯ぎしりをしていた、が。

ふたたび爆発が起きたことで、陛下は素早くその身を翻す。


「撤退だ!!!!ネイサンを保護せよ!!急げ!!天井が崩れるぞ!!」


「ハッ!!」


陛下がマントを翻して、その場を後にする。

近衛たちが続き、彼らはメルンシアを回収し、撤退した。


あっという間に、地下室は私たちだけとなった、けど。


ミシ、ミシミシ……。

パラパラパラパラ……。


大変、不穏な音がするのである。頭上から。


ミリアが、真剣な面持ちで私に言った。


「姉様。私たちも早く脱出しなきゃ!生き埋めになってしまうわ……!」


近衛たち戦力とぶつかることは避けられたけど、このままだと私たちも生き埋め待ったナシだ。


「…………急ぎましょう!」


入口あたりは、見張りを立てられているだろうけど、少人数なら、手持ちの魔道具と、ミリアとアシェルのふたりで事足りる。

私とアシェル、ミリアはそれぞれ顔を見合せ、階段を上っていった、のだけど。


私たちは、地上に繋がる扉の前で立ち尽くしていた。

既に地下の崩落は始まり、背後を振り返ると、先程通ってきた道に天井が落ちている。

あと一歩遅ければ、完全に巻き込まれていた。


「まあ、これくらいはするわよね」


地上への扉が、完全に封鎖されている。


「ていっ!やぁっ!!……うーん。だめ。なにかが引っかかっているわ。鍵に細工をされたかも」


ミリアが、大剣を振り回してガンガンと扉を攻撃するけど、鉄の扉はビクともしない。


押しても引いてもだめ。

このままだと、生き埋めに──と、思ったところで。


ハッと、なにかに気がついたようにアシェルが顔を上げた。


「…………フローラ!お前も!!扉から離れろ!!」


アシェルが珍しく声を荒らげた、と思ったら──鉄の扉を囲うように、火の手が上がっていた。


「チッ……火をつけていったのか……!」


アシェルが舌打ちをして、扉を見る。

よく見れば、鉄の扉の足元から火の手が上がっている。私たちが上がってくることを見越して、火をつけていったのだろう。

近衛のマントと、それが濃く色を変えている。その上を、舐めるように炎が走っていた。


「ゲホッ……どうする……!?姉様、このままだと私たち……!」


戻れば、生き埋め一択。

進めば焼け死ぬ一択。


そしてこのまま立ち往生すれば──一酸化炭素中毒での死、あるのみ。


既に空気は薄くなっていて、私は思わず咳き込んだ。


それから、アシェルを見る。


「…………アシェル!」


「ミリア、離れて。フローラ、結界の魔道具はまだある!?」


「っええ……!あとひとつだけ!」


手持ちで残っている魔道具は、あと三つ。


そのひとつが、結界。

もうひとつが、視覚撹乱。

もうひとつが、神経作用。


だけど、どれも先程の戦闘で使ったものなので、あとどれほどの耐久値が残っているかは不明だ。結界魔道具は……一回だけなら、保つとは思う。二回目は分からない。


そう答えると、アシェルは「十分!」と言い、困惑しているミリアに説明した。


「地下室の出入口近辺に、視覚撹乱効果のある爆発魔道具を隠しておいた。ほら、お前が作ったやつ」


ミリアのアイスキルは、能力付与。

だから、私が持っている魔道具のほとんどは、彼女が作ったものだ。

アシェルの説明に、ミリアは頷いた。


「でも、あれって……」


「今は話してる時間が惜しい!良い?フローラ、三つ数えたら、魔道具を!」


「分かったわ……!!」


既に火の手は私たちの膝あたりまで伸びていて、酸素は薄い。呼吸をするだけで、咳き込んでしまう。手で口を覆いながら、私とミリアは頷いた。


アシェルは、空気が薄いために、荒い呼吸を繰り返しながら、カウントダウンを始める。


「いち」

「に」


「…………さん!!」


その瞬間、私は結界の魔道具──親指にはまる指輪に触れて、ありったけの魔力を込める。眩い光がこぼれると共に、扉の向こうで、轟音。

地響きが起きた。





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