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【書籍化企画進行中】公爵令嬢フローラの選択  作者: ごろごろみかん。
4.公爵令嬢フローラの選択

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2.賛美歌

(しかも、一体や二体じゃないわ……)


一、二、三、四……。

ざっと十体ほど。

それはガラスでできているようで──


「…………!!」


その時。

どこからか、何か、音、が──


「姉様、下がって!!」


すぐにミリアとアシェルが反応して、身構える。


アシェルはダガーを、ミリアも短剣を手に持っている。

先程近衛騎士から奪取したものかしら……。


そんな考えが頭の片隅を過ぎったけれど、すぐに思考は違うこと。レッドカーペットの奥。

説教台の向こう……パイプオルガンへと視線は向いた。そこから、音楽が流れ始めたのだ。

もちろん、演者はいない。それでも、勝手に音楽は流れていく。まるで、誰かが弾いているかのように。


これってこれって、これって!!


「ホラー現象……」


ってやつじゃない!?


(えええ!?ここにきてホラー現象とか勘弁して欲しいのだけど!?!?)


確かに、儀式(笑)とか不穏にも程があるけど、でも、まさか、ホラー展開が待ってるとか思わないじゃないの!!!!


えええ。どうしましょう。


ここに、なんか、こう、アレなものが封印とかされてて!!

それに生贄を捧げてて!!

ここに足を踏み入れたが最後!お前も蝋人形にしてやるー!みたいな、そういう、ホラーゲームみたいな展開だったら!!


(私、ホラー耐性ないのよ!?!?)


グロ耐性もないけど!!


だって、ホラーゲームの敵役?お化け?って、物理攻撃が効かないじゃない!!

オマケになんか、だいたい地の利は向こうにあるし!!


私、原作(物語)では、階段あたりで救出されてるから、ここでどんな儀式が行われているのか知らないのよ!!


ここで化け物に食わせる系のやつだったらどうしましょう!?


や、やっぱりネイサンを生贄に捧げるしか……。


と考えていたところで。


ミリアが注意深く前方を警戒しながら私に尋ねた。


「?何か言った?姉様?」


「ななな、なんでもないわ。それより、この曲……」


そう。今も流れてるのよ。例の曲。


「チャペルの賛美歌だね。よく流れてるやつだ」


「…………」


怖。

誰もいない地下の教会を模した地下室で、賛美歌が流れるとか、何のホラー映画?ゲーム?

ごめんなさい。帰りたいです。

とは、絶対に言えないので、私は


(ここにいるのはお化けではない、はず。お化けがいたとしても、こう、なんか、撃退術があると願いたい。そう、祭壇。あれを壊せばオールオーケーのはず。そうであってちょうだい……!)


と願いながら、深呼吸をして平静を試みた。

若干、不安の残る結果とはなったけど、多少、落ち着いた。


しばらく待ってみても変化はない。

ミリアが武器を下ろすが、アシェルは変わらず武器を携えたまま、周囲に視線をくばっていた。


「あ、ら……?」


その時。ふと、左目のアイスキル──魔力探知が反応するのがわかった。

左目が……疼く!とか、厨二病真っ只中みたいなことを考えている余裕もなく、私はその理由を探す。そして、答えにいきあたった。


まさか。


「──」


動揺と衝撃のあまり、思わず目を見開いて、周囲に視線を配る私にアシェルが気がついた。


「どうしたの?フロー……」


しかし、アシェルが私を呼ぶより先に、ミリアが鋭い声を上げた。


「姉様、あれ……!」


「……!」


ハッとしてそちらを見ると、パイプオルガンの手前。


説教台の下。

まるで、台に被さるようにしてひとりの女性が倒れていた。

薄い茶色の髪。ふわふわの髪は幻想的で、フリルをふんだんに使った白のドレスを着ているのは──


「メルンシア……!?」


どうしてここに、という疑問と、彼女の様子がおかしいことに動揺が走る。


気絶……してる?

でも、いつから?


だって、メルンシアが行方不明になってから、一日以上が経過する。

彼女はその間、ずっとこのままだったの?


すぐにミリアが近づいて、彼女の手を取ろうとしたけど、それは失敗に終わった。


なぜならミリアの手から、それは(・・)はつるりと滑り落ちたからだ。


まるで、陶器のように。


かつん、と彼女の手が、説教台にあたり、音を立てる。その音はもはや、生身の人間のものではない。


「──!姉様」


「ええ。……この蝋人形。もとはみな、人間だったみたい、ね」


私の返事に、ミリアが動揺した気配を感じた。アシェルは変わらず周囲に視線を走らせている。


私は、レッドカーペットを挟むように、間隔を開けて並べられている蝋人形をそれぞれ見ていった。

そして、共通点に気がつく。


彼女たちはみな──


色違いの瞳(オッドアイ)を持っている。






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