表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢フローラの選択  作者: ごろごろみかん。
2.宣戦布告と受け取ります

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/27

10.宣戦布告と受け取ります

私がしゃがんで見ると、お父様は血走った目を私に向けた。


そして、呪詛もかくやという声で言った。

その声は完全にホラーだ。ちょっと怖い。


「貴様……何をした……!?」


その声は掠れている。


本当に今際の際のようだ。

私はヒヤヒヤした。


(ここで死なれたら……とっても!

とっても困るわ……!!)


王家をどうにかする前に、私の手が前に回ってしまう。


魔道具の効果はあくまで防衛。

お父様は弾き飛ばされただけだから、死にはしないはずだけど……!


何度も言うけどあれは未検証魔道具!!


確かめようにもできなかったのでぶっつけ本番で使用した。

つまり、安全性が保証されていないのよね……!


え?大丈夫?よね?

死なないわよね?

ちょっと?


心配になったところで、空気が大きく揺れた。

勢いよく執務室の扉が開かれたのだ。


「それはこちらのセリフですよ!父上、彼女に何を!?」


「アシェル……!!」


物音に駆けつけてくれたのだろう。

髪は乱れ、上着も咄嗟に羽織ったようだ。シャツのボタンもかけ違えている。


「アシェル!大変なの。お父様が死にそうだわ!」


「死にそう?そのままくたばればいいんじゃないの?」


「そういうわけにもいかないでしょ!今倒れられるのは困るわ!」


「……確かに。姉さんの言うことも一理ある」


納得したアシェルは、お父様の様子を見に傍までいった。

気を失ってしまったのか、お父様はビクともしない。様子を見ていたアシェルは、唐突にお父様の頬を叩き始めた。


「父上?起きてください、ほら」


往復ビンタである。


(Oh……容赦がない)


しかしなかなか、お父様は目を覚まさない。


お父様の頬が赤く腫れ上がったところで、アシェルが手を止めた。


「息はあるから気絶してるだけじゃない?ほら、頭をここにぶつけたんでしょ」


「頭より、頬の方が大変なことになってる気がするけど……」


「これくらい正当防衛だよ。魔道具が発動したってことは、姉さんに危害を加えようとしたってことだ。それなら、これくらいは許されるよね?姉さんも胸がスッとしない?」


「そうね!この調子でガンガンいきましょう!……なんて、言うはずがないでしょ!!やりすぎよ……!全く」


私が咎めると、アシェルはくちびるをへの字にした。これは納得のいっていない顔だ。


ひとまず、聞きたいことは聞けたし……あとは。


その時、私は気がついた。

いつもならこういう時、いの一番に来る妹の姿がないことに。


「ミリアは?」


「あれ、姉さんメッセージカードを読んだから来たんじゃないの?」


「読んだわ。だから来たのよ」


「ミリアなら、船着場だよ?」


アシェルがあっさりと答える。

それに、私は──


「…………は!?!?」


「やっぱり読んでなかった。ごめん。時間が無くて、メッセージカードをもう一枚用意している余裕がなかったんだ。メッセージカードの裏にも書き込んでたんだ。ミリアについて」


「ちょっ、待っ……。ミリアがどうして船着場に……いえ!!その前に!!」


私は額に当てていた手を離して、ビシ、とアシェルを指で示した。


「あなたはどうしてお父様を縛りあげてるの!?」


──そう。話している間も、アシェルはお父様を後ろ手に縛り上げていた。

ご丁寧に、どこからかロープを取り出して、雁字搦めに。


一切の容赦なく縛り上げられているので、目が覚めたらお父様に待っているのは痛みだろう……。


「ん?」


私の質問に、アシェルが首を傾げる。

中性的な顔立ちのせいか、ミリアによく似ているためか。


その仕草は少し幼く見えた。


アシェルは私の質問を理解すると、にっこり笑った。


「ああ!ほら、このひとは自由にしておくと何をしでかすか分からないじゃん?だからこうやって縛って転がしておくんだよ」


あっさりと、何食わぬ顔で(そして無駄にいい笑顔で)答えるアシェルに、私はクラクラした。


「お父様にはまだ動いてもらわなきゃ困るのよ?」


お父様は、何としてもミリアを守ろうとするだろう。

まだお父様には役に立ってもらわなきゃ困る。

私の言葉に、アシェルはあからさまにくちびるを尖らせた。


「えー?でもほら、少しくらい痛い目見た方がいいよ。ああ、縛ったのは僕だってちゃんとこのひとには言っておくから。姉さんは心配しないで」


「そういう心配をしてるわけではないんだけど……」


「大丈夫だよ。目が覚めたら騒ぎ立てるだろうし、そしたら解きに行くから。まあ、ちょっと忠告もするかもしれないけど」


アシェルの言う【忠告】がどんなものなのか、何となく予想がついた私は、ため息を吐いた。


「…………やりすぎてはだめよ?」


「あはは。その辺の線引きはちゃんと出来てるよ。姉さんは知ってるでしょ?僕らはその手のプロだ」


「…………」


そうだけど!

アシェルとミリアが暗殺者ギルドに育てられ、今も尚その組織に所属しているのは以前聞いていた。


(アシェルもミリアも、私のことを大切に思ってくれるのは嬉しいんだけど……)


だけど、同じくらい心配だった。

ふたりは、私のためであれば手を汚すことも厭わないだろう。

いつか、取り返しのつかない何かが、起きてしまいそうで。


(私がしっかりしなければ)


私は顔を上げてアシェルに尋ねた。


「それで、ミリアはどうして船着場にいるの?メッセージカードの裏は読んでいないのよ」


尋ねると、お父様の両手首を縛り終えたアシェルが、お父様を転がした。足で。

見なかったことにしよう。


「うん?そうそう、ミリアはね──姉さん。旅券を買いに行ったよ」


「…………えっ!?」


「姉さんと僕の三人で国を出るんだって。ごめん、姉さんに相談すべきだとは言ったんだけど、止められなくて。あのじゃじゃ馬……じゃなくて。狂犬を止めることは、僕にはできなかった。噛みつかれそうで」


深刻そうに言うアシェルに、私は言葉に詰まった。


「そ、そうだったの……」


その様子ががありありと想像出来てしまったからだ。

私は頭を抱えた。


「まずはミリアを迎えに行かなければね。高飛びなんてしなくても大丈夫よ。……ミリアは、あの男になんて渡さないわ」


これは、宣戦布告だ。


ネイサンから、私への。


で、あれば──私も、全身全霊。

全力をもって、答えなければね?


そうでないと、申し訳が立たないわ。


(全身全霊、全力で、叩き潰してあげましょう)


その浅ましい欲ごと、ね。


私が微笑むと、アシェルが眉を寄せた。


「姉さん……何を考えてるの?」


「ふふ。とっておきの作戦があるの。だから、早く家に帰らなければね。……でもその前に、ミリアを呼び戻さないと」


私はチラ、と床に転がるお父様に視線を向けた。


(アシェルはミリアを狂犬と言ったけど……)


正直、アシェルもそうだと思う。


さすが双子というべきか。

血の気が多いのは一緒のようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ