表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢フローラの選択  作者: ごろごろみかん。
2.宣戦布告と受け取ります

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/24

7.メルンシア・メルディアンという娘 【前】

「メルンシア!ようやく戻ったのか。顔色が悪いようだな?」


私が自邸に帰ると、お父様が慌てた様子で玄関ホールに飛び出してきた。

お母様は、ずいぶん昔に亡くなってしまった。私は母の顔を知らない。


「お前は本当に……日に日に、アンジェリカに似ていくなぁ」


お父様は、私を見て懐かしそうに目を細める。


私の母は、父の愛人だった。


恋は愛人とするもの。

それが、このネロワロー国の常識とはいえ、明確なルールがあった。

それは、愛人は本妻よりも先に子供を持ってはいけない。


恋は愛人とするもの。

だけど、血は繋がなければならない。


貴族の血は青く、尊い。

だから不純物(平民)の血は、できるだけいれてはならないのだ。


だけど、お父様はそのルールを破ってしまった。

公爵夫人より先に、お母様は子を身ごもってしまったのだ。

公爵夫人はそれに怒り、実家に帰ってしまった。そして、自分もまた恋人と戯れる道を選んだのだとか。


そういうわけで、この邸には今、私とお父様のふたりしかいない。


公爵夫人が今、どうしているのかわからない。

世間体のため、ふたりは離縁していない。

そもそも、貴族の離縁は並大抵の理由がなければ認められない。それこそ、死別くらいしか別れることは出来ないのだ。


お父様は表向き、私を公爵夫人の子供だと公表しているらしい。


そしてそれを、公爵夫人も否定していない。

自分の子ではないと知られて、自分の名誉が傷つくことを恐れたのだと思う。


お父様は私を猫可愛がりしている。

この茶色い髪は、お母様にそっくりなのだそうだ。


(私が……公爵夫人に全く似ていないと、誰もが気付いているのに)


だから、フローラが羨ましかった。


あの子はローレンシア公爵とその夫人の子供だから。


私のような劣等感なんて、ないんでしょうね。


生まれた時に、その瞳の稀有さが理由で……王太子(ネイサン)の婚約者になった。

特別な子。


『紹介するよ、彼女はフローラ。僕の婚約者だ』


そう言われた時の絶望なんて、きっと、彼女には分からないのでしょうね──。


『フローラ様の目、見たことあります?』


『色違いの瞳でしょう!?初めて見ました。色違いの瞳といえば、やっぱりあの伝承を思い出しますわね』


メイドたちの話を、偶然立ち聞きした。

彼女らは気が付かない。


私が部屋を抜け出すことなんて滅多にないから、油断しているのだ。


『色違いの瞳の乙女と、王家の方は惹かれ合うようにできているのかもしれませんね。まさに……運命ですわ』


【運命】。

ドクン、と心臓が音を立てる。


『フローラ様と王太子殿下は幼馴染だとか。幼馴染で運命だなんて?ロマンティックですわ』


『あら、でもお嬢様もそうでしょ?三人とも、幼い頃からの付き合いよね?』


『あー……メルンシアお嬢様?彼女……本当に奥様の子供なのかしら?いえそもそも、閣下の子供なの?だって彼女、アイスキルがないのでしょう?』


「──」


息を、呑む。

胸元を、抑える。


心臓が、痛い。


今すぐ、この場を離れたかった。


『しっ!!誰が聞いてるのかわからないのよ?……口を慎みなさい』


そう咎める彼女も、否定はしなかった。


その時、知った。


私はこの邸の人間に、嫌われている──。


もともと、ここの使用人の半分は、公爵夫人に仕えていたらしい。

彼女が実家に戻ったことで、彼らも戻ろうと思ったそうだけど、公爵夫人の命令で留まることにしたのだとか。


(きらわれて、いる)


彼らは知っているのだ。

私のこの、血の汚さを──。


貴族は大半、アイスキルを持つものだ。

その血が濃ければ濃いほど、アイスキルは強力なものになるという。


貴族間の政略結婚は、このアイスキルを継承するためのものでもあった。


(もし……私がお父様の子供じゃなかったら……)


ただの平民なら。


私とネイサンが結ばれることは、ない。


王族の妃に、平民の血が選ばれることは無い。

それはたとえ、平民の娘を養女にしたとて同じだ。求められるのはその血なのだから。


私には、アイスキルがない。

アイスキルの所有者は、瞳に特徴的な光が宿っている。


その光は、フローラも、ネイサンも、お父様も持っている。


だけど私にはそれがない。


それは、この体に貴族の血が流れていない証左に思えて仕方なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ