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公爵令嬢フローラの選択  作者: ごろごろみかん。
2.宣戦布告と受け取ります

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11/25

1.最初の一歩はふたりと共に

その時、遠くの方からひとの話し声が聞こえてきた。


「ほんと~~~~にアシェルはなんっにも分かってないわ!もう!姉様と私の時間を邪魔しないで!」


「夜のひとり歩きは危険だろ。こんな山の中なんだから」


「あなたは姉様と一緒にいたいだけでしょ!」


「お前は本当に姉さんが好きだよな。姉さんが結婚したらどうすんだよ?」


「ふん。そうなったら私も姉様についていくまでよ!」


「はぁ!?…………え、本気で言ってんのか?」


戸惑うアシェルの声が聞こえてくる。

狼狽える彼に、ミリアは胸を張ったように答えた。


「フフ、当たり前でしょ。もし姉様が結婚するなら、姉様の旦那様のご兄弟か、その親族に嫁ぐに決まってるじゃない!私にかかれば落とせない紳士はいなくてよ!」


「すげー自信。そういうところは本当、尊敬するよ」


「むっ……尊敬してるって顔じゃない!いいからもう、ついてこないでちょうだい!」


「ついてくるなって言っても同じ方向なんだから仕方ないだろ」


ふたりの会話はどんどん近付いてくる。

双子の和やかな(?)会話を聞いていると、先程の空気が霧散していくようで、思わず笑みがこぼれてしまった。


「ふふ、ふふ」


あの子たちったら。

ふたりの会話はテンポが良く、小気味いい。


双子ってみんなこんな感じなのかしら。


私は、声のする方向に視線を向けた。


「魔石採取をしてる時の姉様は本当に綺麗なのよ。神秘的って言うか。だから私だけで十分なの!」


「あーはいはい。足元見て歩けよ、暗いから」


「分かって──きゃあ!?」


「ほら、よく見て歩かないから。こんなとこで転んだら泥だらけになるぞ」


「うう~~~~……あっ!姉様!!」


唸るような声が聞こえてきたと思った同時、木々の合間からふたりが姿を見せる。

ミリアの腕をアシェルが掴んでおり、間一髪、間に合ったようだ。

私はふたりを見て、笑いかけた。


「ごめんなさい、探させてしまった」


飛び出してくるのは、ミリアだ。

素早い動きで私の前までかけてきた。

また転びそうで、見ている私はハラハラした。


「姉様!ねえ、大丈夫だった?何もされてない?言われてない?あのふたりはどこに行ったの?」


ミリアに立て板に水のごとく尋ねられて私は苦笑した。

どうどう、と彼女の肩に触れて宥める。


「ネイサンなら、メルンシアを追っていったわ。彼女、気が動転したみたいで走り去ってしまったの」


「ああ、やっぱりさっきのあれは──」


アシェルが何か言いかけたのを、ミリアが遮って声を出した。


「やっぱりアレ、王太子殿下と女狐だったのね!?どうかしらと思ったのだけど、確信が持てなくて割り込めなかったのよ!!」


「もういいのよ、話は済んだし」


「私は納得いかないわ!この十年、姉様はずっと、ずぅぅぅぅっと、ふたりに振り回されてきたじゃない!王太子殿下もあの女も揃ってクズだわ!!私ああいう女本当嫌い!!

【私不幸なんですー】

【私可哀想なんですー】って顔して、図太さだけは人一倍なんだから!王太子殿下は論外よ!」


「こらこらこら」


私はそっとミリアの口に手をかぶせた。

森の奥深くとはいえ、誰が聞いているのか分からないのである。


「待たせてしまってごめんなさい。ほら、お詫びに、いいところに連れて行ってあげるから」


そう言うと、アシェルが柔らかな笑みを浮かべる。


「姉さんもお疲れ。疲れたんじゃない?」


「それがね、あんまり疲れてないの」


それどころか、達成感のようなものでいっぱいだ。


ようやく、私は一歩を踏み出せたのだから。


「じゃあ、行きましょうか!目的地はこの先よ」


ふたりを促すと、アシェルが私に手を差し出す。


「さ、姉さん。足元に気をつけて。暗いから」


「もう、そんなに気を使わなくても大丈夫よ?」


「さっき、ミリアが転んだばっかだよ。姉さん」


そういえばそうだった。

アシェルに助けられて間一髪間に合ったようだけど。

それなら、ミリアをエスコートしてあげた方がいいんじゃないかしら?


私の疑問に、アシェルは首を横に振って答える。


「ミリアには断られたんだ。ひとりで歩けるって、ズンズン歩いていくんだぜ?だから転ぶんだ」


アシェルの言葉に、ミリアがふんと得意げに胸を張る。


「私はいいわ。姉様と手を繋ぐもの」


「おい、それじゃ姉さんの両手が塞がるだろ」


「姉様、良いでしょ?」


アシェルに構わず、ミリアが甘えるように私の腕に抱きついてきた。

甘えてくる妹の頭を撫でて、私はアシェルに提案する。


「そうね。三人で手を繋ぐなんて、何年ぶりかしら。アシェル、どう?」


「はあ……姉さんがいいならいいけど」


「やった!」


提案するとアシェルはため息を吐き、ミリアが飛び跳ねて喜んだ。

そして、私はミリアとアシェルを手を繋ぎ、一歩を踏み出したのだった。

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