幕間 報告申し上げます。
先遣隊として送り出した、一団のうちの一人が、息を切らせて戻ってきた。
彼から伝えられた先遣隊の状況は、決して楽観視できない内容であった。
「……以上が現在の状況ですが、殿として残った彼も、もう。」
「そうでしょうね。報告ご苦労様です。」
報告に来た男性が言葉を最後まで言い終わる前に、今回の指揮を担当した男性は言葉を挟む。
殿として残った帽子の男性の話だ。バルドルを除けば、この陣営の中でも屈指の実力者で構成された部隊のはずだった。しかし、現実はたった二名の受験生に撃破されたという結果になった。
「オメェの策も上手くはまらなかったなぁ。」
「敵戦力を見誤ったことは認めましょう。想定以上の手練れだった。」
報告を受けた男性は、全身を軽装備で固めており、積極的に交戦するタイプではない装い。この陣営の実質的な指揮官を勤めており、軍師として動いていた。
陣営内の戦力を分配し、勝利するために最大限の知恵を働かせた。しかし、敵陣の情報だけはどうしても入手できない状況。最適な分配であっても最大限の戦果を上げるには至らなかったのはここが原因だ。
「状況は変化しました。敵戦力の想定を更にあげ、自陣の防衛を最大化させましょう。」
「なぜだ? 敵の主力がこっちに来てんなら、攻め時だろ。」
「ええ。主力だけが動いているのであれば、そうです。が、完全な奇襲を受けたことを考えると、自陣を先に発見される可能性が高い。そして、その索敵役が主戦場から離れる彼を追うのも必然です。」
「尾けらてたってことか?」
報告に来た男性へ全員の視線が注目する。
しかし、必死にこの場所を目指してた彼に後方を確認していない以上、追われていないことを証明する手立てはない。
それもあって、必死な表情で首を横に振るが、否定の言葉は出てこない。
「私にも確証はありません。しかし、尾けられていないと決めつけて本陣の守りを疎かにするより、敵戦力をここで削ぐことも重要でしょう。なので、続けてで申し訳ないのですが、貴方には、別働部隊に状況を伝えて来てもらってもよろしいですか?」
「あ、はい。分かりました。」
元より、作戦は全員に伝えられていた。
こういった事態も想定し、進行ルートも限定している。試験という特別な戦場でなければ絶対に取らない策だが、今回のような不測の事態には役に立つ。
元の作戦と変更し人員をこの拠点に集合させる。敵に拠点の場所を知られていない事を考え、光信号で招集することができないためだれかを向かわせる必要がある。その為、ここまで現状を報告してくれた人物に別働隊への伝令をまかせる。
尾行されている可能性を疑われ、この場にいずらい男性は早々に承諾し別働隊の予定進路へと向かう。
「おおむね10分といったところでしょうか。もし尾行されていれば、援軍は間に合いませんね。」
そう呟く軍師の言葉は最も近くにいるバルドルにも届くことはない。




