集団戦闘試験
障害物等は試験が終了し、ある程度の人数ごとに分けられた受験生たちは、控え室となる広場に案内される。
そこに居る面々はある程度の身体能力を評価されたものたちだけなのか、筆記試験までで見たその場にそぐわない体格の人物は減っていた。
リリシアは、別に特定の誰かを探していたわけではない。しかし、やることがなくなると自然と周辺に視線を飛ばし、知人がいないか探してしまうのか、彼女の癖のようなものだ。
幸い、この部屋の中に集められた人数は十人にも満たず、すぐに見覚えのある特徴的な蒼い髪が目に入る。
「ユリア! みっけ!」
リリシアのよく通る声に部屋の視線が集まる。
リリシアはその視線たちに気付く素振りも見せることなく、一直線にユリアの元へと駆け寄っていく。
名前を呼ばれたユリア自身も知り合いがいたことに対する安堵する。一方で、自分たちに注目が集まることに、多少なりとも恥ずかしさが表情に出る。
「シア。アタシも嬉しいけど、ちょっと声大きいかも……。」
「そう? ごめんね。でも、ほんとうによかったぁ。」
周囲の反応を気にするユリアに対してリリシアは軽く頭を下げる。
「次は何するんだろうね? 受験用紙の色ごとに振り分けられたってことは、さっきの試験は関係ないもんね。」
「そうだね。でも戦闘能力を試す試験だとは思うよ。学園側としては見ておきたいと思うし。」
「なるほど。ユリアはしっかり考えてるんだね! すごいじゃん。」
リリシアの裏表のない称賛は彼女の表情から伝わってくる。そのまっすぐな視線にユリアは再び気恥ずかしさを覚える。
「そうなるとここにいるメンバーで戦うって事? ならユリアとも戦ってみたいけど、落とし合うなら嫌だなぁ。」
「うーん。ここまで残った人を簡単に落とすかなぁ……。」
筆記試験と身体能力試験を経て、受付にいた人数からだいぶ減っているのは明らかだ。
同じような控室が何部屋あるのか正確な数は不明だが、仮に10部屋あったとしても半分以下になっている計算になる。そんな状態で、ここまで残った人員をさらに削るようなことを行うか、ユリアには疑問が尽きなかった。
そんな会話をしているうちに、部屋の中に見覚えのある試験官が入ってくる。
「では、これより集団戦闘試験を開始致します。この部屋にいるメンバーは同じチームとなります。敵陣営のフラッグを回収する、もしくは敵陣営の全滅を持って試験終了と致します。ただし、このアミュレットの破壊を持って戦闘継続不可能とみなしますので、確実首から下げてください。」
そう言うと試験官は全員に黄金色のアミュレットを配布する。
「シア。これダンジョン遺物のアミュレットだよ。すごいね!」
「あ、ああ。うん。そうだね。」
急にテンションが高くなったユリアについていくことが出来ず、珍しくリリシアが乾いた笑みを浮かべる。
それに対して、ユリアは輝くような笑顔でアミュレットを見つめており、全く気が付かない。
正直、ダンジョンの遺物に対して興味のないリリシアは、ダンジョン産のものに興味はない。あくまで自身の目的の通過点にダンジョンの攻略があるだけで、おそらく、この熱量には差が生まれてしまう。
「かすり傷程度では、破損しませんが行動不能に至る一撃を受ける際、自動で展開いたします。また、その発動妨げる様な明らかな行為は、監視官が即刻介入いたしますので悪しからず。なお、相手受験生を絶命させた場合、」
端的な説明だけを行い、試験官は質問を受け付けはじめる。
「質問がないようであれば、会場へ移動致しますが、何かありますか?」
「こ、この集団戦闘試験は、個々の力量はどれだけ評価されますか?」
淡々とした試験管の説明に一人の受験生が、恐れつつも声を出す。
「試験である以上、合否に関わる質問はお答えできません。ただ、敗北=不合格ではないので、そこは最後まで取り組んでください。」
その言葉に、周囲から安堵の息の漏れる音が聞こえてくる。
「はい。はーい。先生!」
勢いよくリリシアが手を伸ばす。
「はい。先生ではないですが、どうぞ。」
「あっ。すみません。えっと、回復魔法の使用はありですか?」
「想定しておりませんが、一撃の威力がアミュレットの発動条件なので、回復魔法での傷の治癒は可能です。」
「ありがとうございます。」
求めていた回答が得られたリリシアは満足げな表情で手を下ろす。
「シア。回復魔法使えるの?」
「うん。結構珍しいんだよね?」
「そうだよ。それだけで、国から丁重に扱われるくらいだもん。」
驚きと苦虫を潰したような表情を浮かべるユリアに対し、リリシアは素直に褒められたことに対して、喜びを見せる。
「でも、さっきの話なら、ここに居るのは一緒のチームってことだよね! 頑張ろうねユリア!」
「そうだね。シア! 一緒にがんばろ!」
そのほかには質問がなかったようで、試験官を戦闘に青色に区分けされたチームが控室を後にする。




