17話 勇者たちは再び探りに行った
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「なぁ、まだこの依頼続けるのか?」
「当然だろう? 女王様に頼まれたのだから、僕たちが責任持って報告する義務がある」
「もういいんじゃないですかぁ? 昨日も結局見失っちゃいましたしぃ」
「このままだとダンジョン探索とか他の依頼も進まなくなるわよ」
「分かっているよ。だからこそ、早いところ解決しよう」
そんなこんなで、女王の依頼を続行することを決意した勇者一行だったが……
昨日の裏路地に、勇者一行がじっと息を潜めている姿が目撃された。
通行人たちがじっと彼らの姿を見つめている。怪しいと思われても仕方がない。まだ昼間なのに、目立つ格好をした四人がいるからだ。
全員、いつもの冒険者服ではない。
あからさまに薄汚れた、ボロボロのねずみ色のマントに、ダブついたズボン。顔もわざとらしく泥汚れを施しており、どこかに捨ててあったかのようなボロだらけの革靴を履いている。
どこからどう見ても、浮浪者かならず者の風貌である。
「それにしても、こんな格好する必要あった?」
「こういう場所への潜入ですからぁ。ふさわしい格好になるのがいいかとぉ」
「へっ、俺は好きだぜこういうの。なんだか楽しくなってきたな」
「僕までやる必要あったのかな……」
裏路地とはいえ、さすがにここまであからさまな格好をした人は他にいない。
そのせいで、通行人たちからは露骨に距離を取られている。
この装備一式は全て盗賊ギルドで調達してきたが、捨てる寸前だったものをタダ同然で貰ったようなものだ。
その上……
「姫様も、こんなことに付き合う必要はありませんよ」
リコが傍らにいるセーラ姫に向けて、やれやれと首を振る。
「いえ、これもこの国の姫として、やらねばならないことですから」
セーラ姫もまた同様に、小汚い格好に変装していたのだった。
「アンタも物好きだな」
「ていうかぁ、ただ楽しんでるだけですよねぇ、お姫様」
「えへへ、バレちゃいました?」
舌を出して、照れくさそうに返事をするセーラ姫。
「ままぁ、あの人たち何してるの?」
「しっ、見ちゃいけません!」
そんな声がどこからか聞こえてきたような気がする。
が、勇者たちはそんなことを全く気にしないようにした。
まだ日は高い。ほぼ夜行性のサキュバスの姿は全く見えない。
「昨日はこの辺で消えてしまっていたよね」
「確かそうだったはず」
勇者ディオは周囲を見渡しながら、昨日の記憶をしっかりと辿っていく。
確かに昨日、サキュバスは裏路地から忽然と消えてしまった。
あるのは、粗末なあばら屋が数軒と下水道への入り口ぐらいしか見当たらない。
「うーん、サキュバスが行くようなところではなさそうだな」
サキュバスは淫乱な魔族とはいえ、かなりの綺麗好きだ。身体が汚れてしまうような場所を好むとは到底思えない。
「あのあばら屋じゃないのか?」
「まさか。サキュバスのお店よ。もっと派手に、その、ピンク色というか、なんかそういった感じの看板を出して、入り口にサキュバスたちが大勢……」
「リコさぁん、何が言いたいのかは分かりますがぁ、今はお昼ですよぉ」
うぐっ、と言葉を詰まらせるリコ。
「そういや、ちょっと気になる情報を小耳に挟んだんだが」戦士ルギーが考え込みながら、「どうも、最近この辺りで夜に子どもの姿をよく見かけるらしい」
「……子ども?」
「あぁ。こんなあぶねぇ場所に子どもがいるってのは妙だと思わないか?」
ルギーに合わせて、皆が考え込んだ。
「もしかしたら……」
と、セーラ姫が何やら思いついた瞬間――
どこからか香ばしい匂いが漂ってきた。
「この匂いは……パン、かな?」
「あぁ、そこの家で焼いてるみたいですねぇ」
傍らのあばら屋からその匂いが漂ってきているのは明白だった。
そして、今度は肉を焼くような匂いも漂ってきた。勇者たちは思わずぐぅ、っとお腹の音が鳴ってしまいそうになる。
「結構良いもん食ってるんだな。あんなボロい家なのに」
「ルギー! そういうこと言うもんじゃないの! ホント、デリカシーがないんだから」
「まぁ、別にいいじゃないか。それよりも、サキュバスのことを……」
「やっぱあの下水道が怪しいな」
ルギーが下水道の入り口に目を向けた。
「あそこですかぁ?」
「サキュバスがあんなところに出入りするはずがないでしょ」
「いいや、俺の直感がそう言ってる! 間違いない!」
流石に他の面々は首を捻った。
「あなたの直感って、当たったことないでしょ」
「ナメんなよ! いいか、つまり俺の推理ではこうだ。サキュバスは店を出しているなんて言っているが、実際はあの下水道に身を隠している」
「……なんのために?」
「男……いや、違うな。多分、子どもたちを誘惑して攫っているんだろう」
「……だから、なんのために?」
「そりゃ、その……アレだ、アレ。子どもって、いつかは大人になるわけだろ。そうなったら……」
「はいはい、そこまでにしておきなさい!」
顔を赤らめるリコ。続きを何ていうのか理解したようだ。
ディオは首を傾げて、何が言いたいのか理解できていない様子だった。ロッカはうふふ、と笑っている。そして、セーラもまた、顔を赤くして彼から顔を背けていた。
そうこうしていると、裏路地にゆっくりとした動きで誰かがやってくる姿が見えた。
「隠れよう」
物陰にやり過ごした一同は、更にその様子を窺った。
「もしかして、サキュバス?」
「……いや、あれは」
――子ども、だ。
十歳にも満たないであろう男の子がふら、ふらと歩いてやってきた。
親らしき大人の姿はない。
「こんな場所に子ども一人で?」
「俺の予想が当たったようだな」
「しっ、様子を見ましょう」
男の子は痩せ細り、ボロボロの服を着ている。髪もボサボサで、顔も肌も怪我や泥で汚れている。明らかに様子がおかしい。
「やはり、下水道に……」
と、ルギーが確信したかのような目で見ていた。
だが、男の子は下水道の入り口をスルーしていった。
「……違ったみたいね」
「いや、場所が違っただけだ。つまり、そういうことか!」
「……どういうこと?」
もうルギーの言葉は信用しないことにした。
一同は更に様子を眺めていた。
男の子は、突然あばら屋の前で立ち止まった。先ほど良い匂いが漂ってきた、あの家だ。
「……あの子の家、か?」
男の子は家の扉をノックした。
「こんばんは。来ました……今日もよろしくお願いします」
――いや、違う。
自分の家に帰るような態度ではない。
誰もが不信感を抱きながら、ごくり、と固唾を呑んで様子を窺っていると、
「いらっしゃい。ふふ、今日もお腹いっぱい、満たしてあげる♡」
――きた。
中から出てきたのは、長い金髪に黒いレオタード姿の魔物。
間違いなく、昨日見かけたサキュバスだった。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「ちょ、ルギー!」
ルギーが勢いよく、サキュバスたちの前に飛び出していった。
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「……何してんの、アンタたち? こんなところで」
――バレてしまった。
僕たちは意を決して、もう一度咲場さんの動向を探るために彼女を尾行することにした。
しかも、繁華街にいるような不良っぽい格好に変装して。
僕たち男子は黒いスカジャンに、サングラス。姫川さんたち女子は黒の地雷系に厚底ブーツ。完全にイメージだけで、古着屋にあったもので変装してしまっていた。
それからの流れは、ほとんど僕の小説に書いたのと一緒だ。昨日僕らが咲場さんを見失ったあたりを見張っていた。
そして……
この通り、僕たちは見事に咲場さんに尾行がバレてしまった。




