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三年D組の勇者パーティの話 ~語り手はモブ村人な僕がお送りします~  作者: 和泉公也
第二章 抑揚の章

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12話 勇者たちは買い物をすることにした

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「しっかし、女王様直々の依頼とはいえ、どうするよ?」


 剣士ルギーが腕を組みながら頭を抱える。


「どうもこうも、直接乗り込むしかないでしょ」


「誰が?」


「そりゃ、勿論……」


 魔法使いリコがパーティの面々を一瞥する。これまで数々のクエストをこなしてきた勇者パーティではあるが、今回の依頼に関して言えば、少々心許ない部分もある。

 その依頼というのは、最近城下町の外れに出来た店について調べてほしい、というものだ。どうも人間とは友好的なサキュバスが経営しているらしいが、いかんせん信用して良いものか、と大臣が訝しがっている。本来、国の密偵にやらせるべき任務ではあるが、人員が足りなくて勇者に頼んだ、という流れだ。


「盗賊とか仲間に加えておくべきだったかな」


「ダメよ、盗賊なんて。簡単に信用できるわけないでしょ」


「そう言って苦労したダンジョン攻略がこれまでにいくつありましたっけぇ?」


僧侶ロッカに言われて、リコは「うぐっ」と言葉を詰まらせる。

 このパーティには盗賊や探偵といった隠密行動を行える者はいない。これまで敢えて加えていなかった。理由は諸々あるが、一番はリコが反対するから、というものであった。

 

「どうしようか? 女王様から頼まれたことだし、何としてでも解決しないと」


「貴方、女王様の言うことなら何でも聞くのね」


「勿論。僕は勇者だからね」


「あぁ、そうですか、はいはい」


 リコは呆れ気味に流した。

 今回の依頼も、女王から頼まれるや否や「はい、任せてください」と勇者ディオが即答してしまった。この前女王に告白してからずっとこの調子だ。


「ひとまずはその店に入ってみるしかないか……」


「どうやって入るの?」


「それは、その……」


 勇者一行が思案を巡らせていると、


「あの……」


 突然、よく知っている声が勇者たちに話しかけてくるのだった。


「って……」


「なんでここに……」


「姫様がいるのですかあああああああああああああッ!?」


 素っ頓狂なメンバーの声が辺り一帯に広がる。

 当の姫はといえば、きょとんとあどけない表情を浮かべたままだ。格好はいつもの煌びやかなドレスではなく、こないだと同じ安っぽい布の服。おそらくこっそり城から抜け出してきたのだろう。


「お母様から話を伺いまして。何やら、町外れのお店に調査に行かれるとか」


「それはそうなんですけど、どうしてここに……」


「なんとなく気になったもので」


 淡々と物申すセーラ姫。

 勇者たちは最早唖然としている。


「……まさかとは思うが、俺たちに付いてくるつもりじゃない、よな?」


「はい。そのつもりですが……」


 あっけらかんと言い放つセーラ姫。

 一同は唖然となってしまいながら、冷や汗を垂らす。


「ま、待ってください! 危険です!」


「分かっているんですか! そのお店っていうのは……」


「知っていますよ。魔物が経営されてると伺っております」


「分かっているなら尚のことです!」


「そうですよぉ! この前みたいなことになるかも知れないですよぉ!」


「承知の上です! わたくしとて、この国の王女。街のことをきちんと知っておく義務があります。これはあくまでも視察、です」


「視察とは言っても……」


「あの、姫様」勇者ディオが姫の手を握り、「どうか無茶なことはなさらないでください。この前みたいなことがあったらどうするおつもりですか? 万が一のことがあったら、私が女王様に顔向けできません。ですので……」


「大丈夫です」


「ですから……」


「大丈夫ったら大丈夫です」


 にこやかに肯定しか言わない姫。

 あぁ、これはもう何を言っても無駄だろう、とパーティの誰もが思った。顔に似合わず強情な一面があるのだろう、と呆れかえるほどだった。


「……分かりました」


「ちょ、ちょっとディオ……」


 流石に折れた勇者ディオは姫の前に跪き、


「ですが、どうしても危険だと判断したらすぐに逃げ出してください。約束ですよ!」


「ええ、かしこまりました」


 ――本当に分かっているのかな?


 少々不安になる一同だったが、ひとまず目的の店へと向かっていくことにした。


 王都サンディーの城下町の外れ、最早裏路地とも呼べる商店街。

 昼間の今は買い物客で賑わっている。新鮮な果物や肉、野菜、お洒落な衣類に、冒険者に向けた武器や防具も並んでいる。


「この辺も久しぶりに来るなぁ」


「しばらくは目立った依頼もなかったですし、武器とかも新調していませんでしたからねぇ」


「そろそろ俺も新しい武器を試したいところだぜ!」


「ちょっと! 今日は買い物に来たんじゃないでしょ!」


「いいじゃねぇか、ちょっとぐらい!」


「ダーメ! 任務が優先! ねぇ、ひめさ……」


 リコがセーラ姫のほうを向こうとする。

 が、その振り向いた先には彼女の姿はなかった。


「あれ? 姫様、どこ……?」


「あそこですよぉ」


 ロッカが指さした先にセーラ姫の姿があった。

 しかも、店先に並べてある調度品の数々に目を輝かせて。


「って、言ってる傍から……」


「早速あの調子……」


 ディオたちは彼女に近付き、静かに背後に立った。


「勇者さまあ! これ見てください!」


 そう言ってセーラ姫が見せてきたのは、抹茶色な身体に垂れた耳の付いた人形。


「……凄く個性的な犬ですね」


「何をおっしゃるのですか! これは兎です!」


 全く分からない。

 他にも良く分からないカラフルな模様の描かれたペナントや、謎の鳥が出てくる置き時計など勇者の目には理解できない代物だらけだ。


「……見てて面白いですか?」


「はい、とっても!」


 ううむ、と一同は首を傾げて様子を眺める。

 王城暮らしが長かったせいなのだろう。物珍しそうに、顔を紅潮させて一品一品を非常に凝視している。


「……どうする?」


「しばらくは動きそうもないわね」


「困ったなぁ、これじゃあ埒が明かないな」


 それを言われて、姫ははっと我に返り、


「あ、す、すみません……つい足手まといに……」


「いいよ。ゆっくり見てくれれば。あまりこういうところ来ないんだろ」


「でも……」


「そうよ。早いところサキュバスの店に行かないと……」


 とリコが言いかけたところで、店の男性が「ん?」と反応してきた。


「お嬢ちゃんたち、もしかしてこないだ出来たばっかのサキュバスの店に行くのかい?」


「え、ええ……」


 バンダナを着けた高齢の男性店員はふっと笑みをこぼして、


「噂を聞きつけたクチかい。ま、行ったところでごく普通の料理屋だから期待外れだがな。エッチなこと期待してもムダだぞ」


「え、えっち……?」


 セーラ姫がそう言いかけたところで、リコは彼女の耳を塞いだ。


「そういう目的で行くのではないので大丈夫です」


「あ、そうかい」店員の男はどこかニヤニヤした顔つきで、「どちらにしろあの店は夜からの営業だからな。まだ開いていないぜ」


「あー……」


 一同はその一言で肩が項垂れた。


「まだ早かったみたいですねぇ」


「……どうする?」


 皆が少しだけ腕を組んで考え込んだ後、


「ま、それだったら少しだけ自由行動でもいいんじゃないかな」


 ディオが優しく笑いながら言い放つ。

その一言で姫は顔をぱっと明るくさせて、


「い、いいんですか!?」


「折角だしね、たまには気分転換もいいんじゃないかな」


「だな! ちょっくら遊びに行くか!」


「いつも遊んでいるような気がするけどね」


「まぁまぁ、リコさん、固いことは言いっこなしですよぉ」


 そんなこんなで――


 勇者一行は、夜になるまで自由行動をすることになるのだった。



譌・蟶ク隴壹↑繧薙□縺九i譌・蟶ク蝗槭′繝。繧、繝ウ縺ァ菴輔′謔ェ縺�▲縺ヲ繧薙□繧�



 ふぅ……

 ひとまずはここまでにしておくか。

 なかなかサキュバスが物語に出てこないけど、仕方ない。僕はメモ帳ファイルに少しだけ続きのプロットを書き足して、この後の流れをじっくりと考えた。


 物語の中ではこの後も勇者たちが姫様と買い物を楽しむ様が描かれている。

 あのセーラ姫がはしゃぐ姿は、聖羅さんの様子そのまま表現している。本人に見られたら怒られるかも知れないけど。


 ――今日は、楽しかったな。


 机の上に、ゲームセンターで取ってきたぬいぐるみが置いてある。

 犬のような、兎のような、謎のキャラクター。正直デザインが良いとは言えないけど、聖羅さんがとっても好きだと言っていた。


 他にもたくさん見て回ったし、たくさんの物を買った。おかげで今月のお小遣いがもう少ない。


 そうだ――


 僕は今日、生まれて初めて、女の子とデートをした。

 それも、うちのクラスの“姫”と――


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