10話 勇者は愛を囁いた
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勇者たちは叩きのめした暴君どもを縄で縛り、しっかりとその場で伏せさせた。
「姫様に手を出そうとするなんざ百年早えんだよ!」
「アンタ……こんなことをしたらタダで済むと……」
「ほう? もしかして、父上が黙っていないとでも言うつもりか?」
女王マリアが見下すように言うと、アーヤが何度も舌打ちを聞かせてくる。
「さっきも言ったけどね、記録魔法でしっかり今回の様子は記録させてもらったから」
「証拠はバッチリですぅ。もうお父様の権力も関係ありませんよぉ」
「そんな、まさか……」
絶句している間に、王国の警備兵たちの足音が聞こえてきた。
「申し訳ございません。遅くなりました、女王様」
「構わん。コイツらを連れて行け」
「はっ!」
警備兵たちに連れて行かれて、ようやく勇者たちは肩の力が抜けていく。
「姫、大丈夫でしたか!?」
「はい、私は大丈夫です……」
勇者に介抱されて、姫はゆっくりと立ち上がる。
「ご無事で、何よりです……」
「いえいえ、それよりも皆様、ありがとうございました」
ぺこり、と頭を下げる姫に、戦士ルギーは
「なぁに、俺らにかかりゃあんな連中大したことないですよ! はっはっは!」
「ま、姫様を一人にしてしまったのはこちらの不手際だったけどね」
魔法遣いリコの悪態に、ルギーは「なんだと!」とムキになった。
「それよりもぉ、やっぱり今回の一番頑張ってくれたのはぁ……」
「そうだな、お前だよな!」
傍らにいたボロボロの服の男に、一同が視線を向ける。
それは、姫の危機を知らせてくれた男だった。
「い、いえ……私は何も……寧ろ……」
「いや、勇敢だったよ、お前は。そこまでボロボロになるまで戦ってくれたとはな」
「あの相手人数ならしゃーねぇよ。俺らに知らせてくれただけでも立派だ」
「ですよねぇ、姫様ぁ」
ロッカが姫に顔を向けると、姫は顔を赤らめて、
「え、えぇ……」姫は頭を下げて、「本当に、ありがとうございました。貴方のおかげで助かりました」
「そ、そんな……勿体ないお言葉です」
男はしどろもどろになりながら、一歩引いた状態で姫に頭を下げ返した。
「おほん……」女王様は咳払いを挟み、「改めて其方たちには姫を救い出した褒美を取らせることにしよう。ふむ、勇者どのにはこれまで幾度となく助けられたからな。今回はお主が望む物を授けることにしよう」
「と、申しますと……」
「欲しいものがあるなら何なりと申すが良い」
その言葉を聞くなり、勇者ディオは少し考え込んで、
「では……僭越ながら、この場を借りて、私はとある御方に愛の言葉をお伝えしたいと思います。そのお気持ちにお応えいただければ幸いですが……」
「愛の言葉って、まさか……」
「はい。実は、かねてよりお慕い申し上げておりました」
勇者の大胆な言動に、一同が絶句した。
「だ、大胆だな……」
「面白くなってきましたねぇ」
相手は誰だ?
と言わんばかりに、この場にいる一同は唾を飲み込む。
一同の視線は、一斉に姫へと向けられていた。その目は誰もが膨らませすぎた期待を込めていた。
「私と、お付き合いください」
勇者は跪き、そっと手を差し伸べてきた。
唖然となったその光景に、誰もが言葉を失ってしまう。
だが、そこで向けた勇者の目は真剣そのものだった。
「もう一度申し上げます。以前から、お慕い申し上げていました。私とお付き合いください……マリア女王様」
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……
まさか、こんなことになるなんて。
今更ですが念のために敢えて申し上げておきます。
このお話は、フィクションです。
ただし、現実にあった出来事を元にキャラクターやストーリーを構成しております。つまり、書かれている内容はほとんど起きた出来事だということ。
――そう。
あのとき、夕島くんは告白していたのだ。
まさかの、真理亜先生に……
「誰がそんな展開を予測できるよ……」
僕はおろか、前守くんも須磨さんも宗田さんも、全員が驚きを隠せなかった。
ストーリーの中では直接告白しているけど、実際はカラオケの会計をしていたときに人気のない場所へ連れて行って告白していたらしい。だから会計がやたらと遅かったのか。
そういえば……
玲条のことを先生から聞いていたとき、やたらと真剣な態度を見せていたっけ。姫川さんが心配だったのは間違いないんだろうけど、それ以上に先生の頼みだったから良い格好をしたかったっんじゃ……
――うん。
それは流石に考えすぎだ、ということにしておこう。
人間だもの。多少の打算はある、よね。
「つ、疲れた……」
遂に執筆に日付を跨いでしまった。
流石にもう眠い。
明日に備えて、今日はしっかりと寝ることにしよう。
慌ただしい事件から一夜明けた。
教室には何事もなかったかのように生徒たちが登校してくる。僕たちが昨日、どれだけ大変な事件に巻き込まれたか、他の皆は知る由もないんだろうな。
そんなため息を吐きながら、僕はいつも通り着席した。
「おはよう、村野くん」
明るくはきはきとした声で、女の子が声を掛けてきた。
――って、
えええええええええええ?
「ひ、姫川さん!?」
「そんなに驚かなくても……」
「いや、なんか雰囲気が……」
今まで敬語で喋っていたのに、今日になってタメ口になっているのにびっくりしてしまう。
いや、それ以前に僕に挨拶をしてくるなんて。
「昨日は転校初日だったからね。でもいつまでも堅苦しい敬語じゃ、みんな困っちゃうでしょ」
「ま、まぁ……そっちのほうがいい、かな」
ドクン――
思わず、僕の胸が高鳴ってしまう。
「おはようですぅ、姫川さん」
「お、もう来ていたのか!」
「おはよう、宗田さん、前守くん!」
タメ口になっている姫川さんの様子に、二人はあまり驚く素振りは見せずに、
「もう大丈夫ですかぁ?」
「うん、警察の人たちもしっかり話を聞いてくれたから。でも、疲れちゃった」
てへっ、と舌を出す姫川さん。
なんだか最初の頃とはイメージが違う。こっちのほうが本来の彼女なのだろう。
「おはよう、姫川さん」
「あ、須磨さん。おはよう!」
今度は須磨さんが教室に入ってきた。
「まだ学校で分からないことはあると思うから、何かあったら私に言ってね」
「ありがとう! そういえば、夕島くんは……」
教室内を見渡して、夕島くんを探す姫川さん。
「さぁね。多分、先生のところなんじゃない?」
「そっか、上手くいっているんだね、あの二人……」
――そういえば。
夕島くんは先生に告白したみたいだけど、先生は何て返事をしたのだろう。
教師という立場上、簡単に首を縦に振ることはできないはずだ。このご時世、そういうのはかなり厳しくなっているはず。
「なんだ? 夕島のことが気になっているのか?」
「そりゃそうだよ」
姫川さんはなんだか物憂げな顔つきになっている。
もしかして、姫川さんって、
本当は夕島くんのことが……
「だって、真理亜姉さんって、私が転校する前から、いっつも夕島くんのことばかり話していたから! ウチのクラスに優秀な生徒がいて、とっても頼りになるって。何かあったら彼を頼れ、でも恋人にはオススメしない、なんて言ってたんだよね。あれはもしかしたら、って思って気になっていたんだよね」
――あぁ。
そういうことだったのか。
「……先生もそんな感じだったのね」
「ある意味お似合いのカップルかもな」
「上手くいくといいですねぇ、あのお二人」
――だな。
思った方向とかなり違うけど、これはこれでハッピーエンドかも知れない。
『勇者日常譚』も、あの予想外の展開でちょっとだけアクセス数が伸びたような気がする。あの話だけいいねがいつもより多く付いたし、これはこれで楽しくはなりそうだ。
「ま、もうひとつ収穫もあったしな」
――ん?
「しゅう、かく?」
僕はふと会話に入ってしまった。
姫川さんの顔がなんだか赤い気がする。僕のほうを一瞬見ると、すぐに視線を逸らした。
「姫川さん、どうしたの?」
「あ、なんでも……」
様子がおかしい姫川さんを余所に、三人はため息を吐いた。
「うーん、これは気付いていないようね」
「しばらくは黙っておきますかぁ」
――何だろう?
気にならないと言ってしまえば嘘になるが、深入りすべきではない気がする。
「そういうわけだ、村野」
「わっ! びっくりした!」
突然前守くんの顔がドアップで僕の前に来たから驚いた。
「そろそろ、お前も冒険、しようぜ」




