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教授と院生と結婚式 ~その1~

『教授、教授!』


『どうしたんだい?院生君。そんなに慌てて。』


『もうすぐ山口准教授が結婚するではないですか。』


『うむ。やっとあの男も結婚する気になったようじゃのう。

 めでたいことじゃ。で?それが何か?』


『僕が結婚式の余興を頼まれたんです。』


『ほお。そうか!

 で?』


『実は何をするか困ってるんです。

 今は「ラッスンゴレライ」や「あったかいんだから~」とか流行ってますよね!!

 それでもやろうかと...』



さっとサングラスを取り出す院生君。もう気持ちはバズーカです。



『院生君!それだけはやめた方が良いぞ...』


『えっ?なんでですか?

 ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん♪』


『なんかむかつくのう...』


『ラッスンゴレライ、なんでダメだか説明してね♪』


『イライラするが、まあいい...

 教えるとするか...

 かれこれ十年以上も前になるかのう。

 HGや小力が流行っていた時があったじゃろう。』


『ええ!スパイダーフラッシュ・ローリングサンダー♪』


『わしも結婚式の余興でな、大きなサングラスとピチピチの短パンで「フォー!!」とやったんじゃよ。』


『ふむふむ。教授がそんなことをしたんですね!!

 きっと大ウケしたんでしょうね!!

 それでそれで!?』



グッと教授のほうに乗りだす院生君。

はっはっと犬のように息をはずませて近づいてくる院生君の顔を、グイッと押しのける教授。



『ああ...うっとうしい...臭いし...そんな近寄るんじゃあない...』


『あっすみません...

 つい夢中になってしまいました...

 とにかく続きを教えてください!!』


『結果としてはのう...』



大きくため息をつき、お茶を一飲みし、教授は続けました。



『大失敗じゃったんじゃ...』


『なぜですか!?

 あんな流行ったHGの物まねでしょ?

 ウケないわけないじゃないですか!!』


『...聞きたいか...理由を...』


『はい!ぜひ!』


『...わしは余興としてはラストバッターで、前に3人の若者が出し物をしたんじゃ...

 でな...』



少しの間沈黙が流れました。

遠くを見つめる教授の目には、光るものがあります。

教授の口が開くのを、今か今かと待つ院生君。

院生君の喉がごくりと鳴りました。


やがて教授はゆっくりと話し始めました。



『その3人がすべてHGじゃったんじゃ...

 3人が3人、フォー!!じゃよ!!

 全部ハードゲイじゃ!!

 1人目は大ウケ、2人目は失笑、3人目は白い目で見られていたのう...

 そしてその次がわしじゃ...』


『それはそれは...

 ...さぞかしつらかったでしょうね...』


『つらいなんてもんじゃない!針のムシロじゃよ!

 それでもわしは、サングラスをかけてステージに出たんじゃ!!』


『す、すごい...

 とても僕にはまねできない...』


『そして力いっぱい叫んだのじゃ!

 フォーーッ!!!とな!やけくそじゃ!!

 少しは歓声が起こるものかと期待してな...』


『...それで?...』


『しかしな、歓声どころではなかった。

 皆の口から出てくるのは舌打ちや「またかよ!」「もういいよ!!」の声ばかりじゃった...

 わしはさっさと皆の前から消えて行こうと思い、わずか2秒足らずでステージを下りたんじゃが、司会者のヤツがわしの袖を引っ張り、強引にステージに戻しよった。

 いらんことをするヤツじゃった。

 そしてみんなの前でわしを紹介するんじゃよ...


 みなさん!!この方が理工学部の教授です!

 4人めのHGさんです!

 4人とフォーをかけたんですね!さすが教授!!

 よくこんな空気の中、出場されました!!

 最後に一言宜よろしくお願いいたします!!


 なんて言いながら、わしにマイクを差し出しやがってな...

 わしは渾身の力を込め、フォーーーッ!!と叫んだ。

 その後はなんにも覚えていない。とにかく周りからの視線が怖かった。

 涙で周りの景色もかすんでいた...

 ううう...ううう...』


『ううう...まるで晒し者ですね...ひどすぎる...

 教授、泣かないでください...

 でもそんな体験談、ありがとうございます。

 勉強になります。

 おそらくこの時期の結婚式は「ラッスンゴレライ」と「あったかいんだから~」のオンパレードでしょうね...

 ちょっと考えてみます。

 本当にありがとうございました...』


泣いている教授を1人にしてあげ、院生君は教室を出ました。


結婚式まであと3日。

院生君はどんな余興をするのでしょうね。

続きます。

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