道草を食う もしゃもしゃと
鋳型らしきものと、バケツ一杯の石鹸水、練ったセメントで忙しそうに、なにかを作っていた。
「なに……してんの?」
新しい商品でも、作っているのだろうかと尋ねてみると、陶片の娘にオススメされた――投石紐用のコンクリート製の弾。ケルト時代にはタスラムとか呼ばれたものを、作っているところらしい。
均一な形の弾を量産できる事から、拾い集めた単なる石の弾より、命中精度が大幅に向上するのだとか。話を聞いて義兄も顎を撫で、感心したような声。
「…………」
俺と彼が話し込んでいると、静かに鋳型を食い入るように見つめる義兄。
凄く物欲しそう――可愛い。
トキノに、この鋳型について尋ねてみると義兄に、かすかな……かすかな表情の変化。
「タスラム用の鋳型? それなら ぱぱの大学のデプロイ研究会の人たちが『影プロ』って、商品名で売り出してるよ? 自衛用のヒット商品みたい。鋳型を作る時に使った、ゴルフボール由来のディンプルが飛距離を伸ばすから、こっちの人には物凄く驚かれたんだろうね。でもお値段、お値打ち価格! 雌雄一対で銅貨5枚だって♬」
トキノに その鋳型とセメントを、悪魔に言って買いに行かせるように頼むと――義兄は、ひとつ不機嫌そうに鼻を鳴らして、
「貴様は、余計な気をまわし過ぎる。臆病風に吹かれたオークになどに成るつもりは無い」
ツンデレ全開で、口籠ってみせていた。
(……お義兄ちゃん? それで前にワ―グに、やられかけたでしょ?)
かつての対戦相手に挨拶ひとつ、立ち去ろうとしたところ――
「魔神チンコよ! 呪術師ウウォ・ムサ・ワンケが、お前を見掛けたら来るように伝えておけと……言われていた事を思い出した。顔を見せて来い」
あの ごうつくな老人が、一体なんの用事かは知れなかったが――足を運ばねばならない場所が増えたらしい。




