鬼にでは無く……龍に身を喰わせて
デシレアが公の思考を読み取り、そしてペイントを施す、二人羽折と言うか……彼女がマニュピレータの役割を受け持ち、公のイメージを具体化させる必要がある。
それを彼に どう当たり障りも無く、説明すれば良いものか……。
「これを……この我儘を容れて戴けるのであれば、このエヴドキア・ガロワ! なにを代償に支払うも厭わない覚悟ザンス!」
降って湧いたインスピレーションに従って、考えるより先に突っ走ってしまうのは、芸術家の性と言うものなのだろうか――正直、全く理解し難い感性と言わざるを得ない。
この どうにも憎みようが無い御仁は、世紀の大仕事を成さん! ……と、いわんばかりの御様子で――陰キャの道を日々邁進し続ける俺からすれば、暑苦しいばかりに 燃えに燃え上がっておられた。
「辺境伯殿!」
* * *
そして俺は公の暑苦しさから逃れるように、さして考える事もせずに――ネルを始めとした彼女たち姉妹が、本物の龍であることを包み隠す事無く、告げて。
彼女たちに思考を覗かれることを厭わなければ、それは可能であると伝えた訳だけど……?
「な、なるほど……それで先程のデシレア総裁殿との『間』だったのザンスね」
意外過ぎる程、公は大して驚く様子も見せずに「では! 私の方は全く……問題無しザンス! 宜しくお願いしますザンスよ!」
それを受け容れてみせ(……あれっ?)
その日の内から デシレアの巣である ミスリルとアダマンタイトで築き上げられた お城の――彼女の遊び部屋に舞台を移して
ゲシュパキアド、魔王、黒無面の3騎をキャンバスに――公は寝食も忘れ、鬼気迫られる恐ろしい勢いで、壁画の作画作業にのめり込んで行った。
そして、いつのまにか そこにオーサも出入りするようになり――毎日の様に、喧々囂々と喧嘩を繰り返し続け(……恐ろしい)
数ヶ月が過ぎて 気候も和らいだ頃。
デシレアとオーサを絵筆代わりに用いた公の傑作は、神像の装甲の上に極短期間の内に絢爛に描き上げられていた。




