子供のように
「……御屋形様」
気配から俺を諫めようと声を上げるイラカ。俺の身を案じてくれた、彼女には申し訳も無い次第だけど……。
王国側からの派遣された人物と言う事もあって、 訝る気持ちを絶やさずに接しようとしてはきたが――なんだか、酷く馬鹿馬鹿しくなった。
街の各所に配置された『門』へと向かって駆け出した公が、振り向いて急かす。その声に俺は、小走りに駆け出していた。
* * *
公が、我が家にやって来て以来、俺の毎日は――分刻みで消化を強いられる過密スケジュールで追い立てられた。
「辺境伯殿!」「辺境伯殿!?」「辺境伯殿?!」「辺境伯殿ぉ~!!」
……いやもう。ホント勘弁して下さいマジで。貴方が……天から二物も三物も与えられた凄い方なのは分かりました……分かりましたから。
と、思ったところで許しては貰えない。
ガロワ公は、それはもう毎日毎日……夏休みに見つけたクヌギ林に『カブトムシを捕まえに行こう!』と、朝早く誘いに来る子供の様に目を輝かせて、俺を引っ張り出して、あちらこちらへと連れ回した。
「か、か、かぶと虫!? て、て、天然! じゅ、じゅ、じゅーしぃー……」
(……うん。ごめんね。義妹よ。物の例え……物の例えだからね。ぬか喜びさせちゃってホント御免ね……てか、頭の中のイメージに食いつかないで? ジューシーなの? そう……おにーちゃん、その情報 あんまり知りたく無かったよ)




