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三年目のキス  作者: 百香里
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アナタを忘れる為のキスを

久しぶりに更新してみました。

ポエム風ですが、コレは小説のつもりです。

 人は弱いのね。

 弱いからこそ人なのかしら。

 強かったら道具には頼らないわよね。


 アナタから逃げるようにして逃げ出した日から二ヶ月。

 お腹が少しだけ膨らみ始めてきたわ。

 住む家はアナタの弟さんが手配してくれた。

 私さえよければお腹の子の父親になってくれるとまで言ってくれた。


 おかしいわよね。

 変よね。

 アナタさえあのヒトと帰って来なかったら、私はアナタの弟と結婚していたのだから。

 これであるべき姿に戻ったと喜ぶべきなのよね?

 なのに中々新たな一歩が踏み出せないのよ。


 あぁ、そう言えばアナタには言い忘れてたけれど、私とアナタが離婚しても、アナタが当主のままでいられるように頼んでおいたわ。

 説得するのにはだいぶ時間が掛ったけれど、世間体の為と慰謝料代わりだと言えば、渋々納得してくれたわ。

 そんな時だけ、素直に泣けない自分が役に立って、複雑な気持ちになったのは何故かしらね?


 新聞を見たわ。

 遂に正式な当主になれたのね。

 結婚もしたそうね。

 奥さんはやっぱりあの幼馴染さんを選んだのね。

 なのにどうして写真のアナタは幸せそうに笑ってないのかしら。

 そう言えば、あのヒトが言っていたわね。

 アナタは写真が嫌いだと。


 私と夫婦だった時も撮らなかったものね。

 撮っても私だけだったわね。

 それがどんなに虚しい事だったか、アナタには理解出来るかしら。


 お腹に手を添えればドクリ、ドクリと、たまに胎動するすくすく成長している新しい命。

 この子が生まれたら一緒に映ってくれるかしら。

 私を母親として見てくれるかしら。

 私を少しでも必要としてくれるかしら。


 私は完璧を求められ、それに答えるのが私の生まれてきた意味だと思っていたの。

 その中に、アナタとの結婚が条件に入っていると、厳しいけれど優しい両親から告げられた時は、嬉しかったわ。

 だって、アナタは私に逢う度、優しく頭を撫でてくれたもの。

 私に大人に甘えても良いと教えてくれたのも、アナタだったわ。


 それなのに私は、素直に甘えられなかったわね。

 どこまで私は強情で可愛くないのかしら。

 きっと、私には最初からそんなモノが与えられなかったのね。

 神様も私には無関心ですものね。


 私が何度神様に願っても、アナタは私を見てくれなかった。

 私が何度も神様に縋っても、アナタの瞳と心にはあのヒトが消える事はなかった。

 そうしたら、神様すら憎くなってしまって、憎んだ時もあったわ。

 でもね、今は怨んでなんかないし、憎んでも無いの。


 パラリ。と、机の上に広げた薄い紙にある空欄に、名前と必要なことを書けば、子供が生まれる頃には新しい旦那様が出来る。


 迷ってる暇なんてないのに、何処かで私は期待していたのね。

 アナタが私意外と結婚する筈がないって。

 けど、実際にはアナタはあの幼馴染の子と結婚して。


 期待するだけ無駄だと、何度も学んだのに。


 そろそろ本当に諦めなきゃいけないのかしらね。

 その手段として一番有効なのが新しい人との生活。

 生憎、彼と私の仲は元鞘に戻るだけだけれど、それでも変わるみたい。


 ねぇ、知ってた?

 私は知らなかったわ。

 実はアナタの弟は料理人だったのよ。

 

 彼は毎日私と私の中に確かに息づいている子の為に、料理を作ってくれるの。

 その彼に頼って、甘えても良いと赦してくれるのなら。



 アナタを今度こそ忘れる為に、キスを。

 私を幸せにしてくれると約束してくれたヒトに、キスを。

 そして近い未来、生まれてくる子に父親を作ってあげる為に、心からの親愛のキスを。


 私とアナタの幸せの為に、アナタを忘れるくらいの熱いキスを。 

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