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世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
第六章 失われた文明

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第79話 新たな拠点

# 第79話 新たな拠点


 風の都シルヴァリアに夜が訪れていた。


 昼間まで吹き抜けていた爽やかな風は少し穏やかになり、街のあちこちに灯された明かりが静かに揺れている。


 宿泊施設の一室。


 Aegisの面々は大きなテーブルを囲みながら、それぞれ椅子に腰掛けていた。


 今日は朝から様々な出来事が起きた。


 通信塔の起動。


 百年前の文明の痕跡。


 そして、未知の通信反応。


 あまりにも多くの出来事が重なり、全員の頭の中はまだ整理しきれていなかった。


「はぁー……疲れたぁ……」


 Rainが大きく息を吐きながら、椅子の背もたれへ身体を預ける。


「今日は情報量が多すぎたよ……」


「通信塔が動いて、未知の反応まで見つかったし……」


「頭が追いつかないよ……」


 すると、向かい側に座っていたNovaも苦笑した。


「私も……」


「百年前の文明って、想像してたよりずっと凄かった」


「ただの遺跡だと思ってたけど、ちゃんと機能してる設備も残ってるなんて……」


 Novaは少し考え込むように続ける。


「しかも、あの通信塔だって百年前のものなんだよね」


「それが今でも動いてるってことは、当時の技術って私たちが思ってる以上に発展してたんだと思う」


「もしかしたら、今の人類より進んでいた部分もあるのかもしれない」


 その言葉に、Crowが肩をすくめた。


「まぁ、ここ数日で世界の常識が何回変わったか分からねぇな」


「ダンジョンの奥に都市があって、その都市が百年前の文明の遺産だったなんて、誰も想像しねぇだろ」


「しかも、その文明が完全に滅んだわけじゃなくて、設備だけは今も動いてる」


「考えれば考えるほど不思議な話だ」


 Cainも腕を組みながら頷いた。


「だが、悪くない成果だった」


「むしろ大きな前進だ」


「今までは、ただ階層を攻略して先へ進むだけだった」


「だが、今日は違う」


「ダンジョンそのものの正体に近づく手掛かりを得た」


「今後の攻略にも大きく関わってくるだろう」


 すると、Arcが静かに口を開いた。


「その話も含めて、今後の方針を決める」


 その一言で、少し緩んでいた空気が引き締まる。


 全員が自然とArcへ視線を向けた。


「まず、一度地上へ戻る」


「そして、Mist、Luna、Dwalfたちを連れてくる」


 Rainが目を丸くした。


「え?」


「連れてくるって……シルヴァリアに?」


「ああ」


 Arcは小さく頷く。


「ここを正式な拠点にする」


 その言葉に、一同の表情が少し変わった。


「おぉー!」


 Rainが目を輝かせる。


「とうとう前線基地ができるんだ!」


 だが、Arcは首を横に振った。


「ただの前線基地じゃない」


「今後の攻略の中心になる場所だ」


「理由はいくつかある」


 そう言って、一つずつ説明を始めた。


「まず、移動効率だ」


「今までは地上を拠点にしていた」


「だが、探索を始めるたびに二十三階層まで移動しなければならない」


「階層が増えるほど、その負担は大きくなる」


「移動だけで半日以上使うこともある」


「それでは探索時間が削られる」


 Crowも納得したように頷いた。


「確かにな」


「今はまだいいが、さらに深層へ進めば往復だけで一日が終わる可能性もある」


「毎回それを繰り返すのは効率が悪すぎる」


「体力の消耗も馬鹿にならねぇしな」


 Arcは続ける。


「次に、設備だ」


「シルヴァリアには宿泊施設がある」


「工房もある」


「倉庫もある」


「さらに、生産設備も揃っている」


「ここを活用しない理由はない」


 そして、少し間を置いて言葉を続けた。


「今後は装備の整備や消耗品の補充も重要になる」


「探索範囲が広がれば必要な物資も増える」


「そのたびに地上へ戻るのは非効率だ」


「だからこそ、生産担当のMistたちの力が必要になる」


「ここで直接作業できる環境を整えた方がいい」


 すると、Novaも少し嬉しそうに笑った。


「Lunaも喜びそう」


「研究できることがいっぱいありそうだし」


「百年前の設備なんて、絶対に興味津々になると思う」


「もしかしたら、今まで分からなかったことも解明できるかもしれない」


「Mistもポーション作りが捗るね」


「素材もいっぱいありそうだし」


「現地で作れるようになれば補充も楽になると思う」


 Rainも大きく頷いた。


「絶対喜ぶ!」


「Dwalfさんも工房を見たらテンション上がりそう!」


「設備を改良したり、新しい道具を作ったりしそう!」


 その光景を想像したのか、皆の表情が少し和らいだ。


 すると、Arcが再び話を戻す。


「それと、イグニシアの調査もある」


 一同が静かに耳を傾けた。


 灼熱廃都イグニシア。


 百年前に存在していたもう一つの都市。


 まだ十分な調査はできていない場所だ。


「だが、調査だけのために向かう必要はない」


「地上へ戻る途中で立ち寄る」


「その時に調べる」


 Crowが頷いた。


「なるほどな」


「わざわざ寄り道する必要はないってことか」


「ああ」


 Arcは短く答える。


「だが、調査する理由はある」


「シルヴァリアで百年前の重要施設が見つかった以上、イグニシアにも何か残されている可能性がある」


「通信塔だけが特別な施設だったとは考えにくい」


「未知の通信反応へ繋がる手掛かりがあるかもしれない」


「調べる価値は十分にある」


 Cainも考え込むように頷いた。


「確かにそうだな」


「百年前の都市が複数存在しているなら、それぞれ役割が違う可能性もある」


「シルヴァリアには通信塔があった」


「なら、イグニシアには別の施設があるかもしれない」


「そう考えると、調査の重要性も分かるな」


 すると、Rainが少し興奮した様子で笑った。


「なんかワクワクしてきた!」


「今までは強いモンスターを倒して先に進むだけだったけど、世界の秘密を探してる感じがする!」


 その言葉に、誰も否定しなかった。


 今までは階層を攻略することだけが目的だった。


 だが、今は違う。


 百年前の文明。


 未知の通信反応。


 そして、まだ見ぬ世界。


 ダンジョンは単なる巨大な迷宮ではない。


 そこには、人類がまだ知らない歴史が眠っている。


 少しずつ、このダンジョンの全貌が姿を現し始めていた。


 Arcは窓の外へ視線を向ける。


 風が吹き抜ける夜のシルヴァリア。


 街の灯りが静かに揺れている。


 昼間は誰もいないと思っていたこの場所も、今では不思議と温かみを感じていた。


(ここが、Aegisの新たな前線拠点になる)


(いずれ、人類全体の前線になる可能性もある)


 そう思うと、少しだけ胸が高鳴った。


 まだ誰も知らない未来へ繋がる場所。


 その第一歩を、自分たちが踏み出している。


「明日の朝、出発する」


「今日は休め」


「了解!」


 一同が頷いた。


 こうして、今後の方針は決まった。


 一度地上へ帰還する。


 Mist、Luna、Dwalfたちを連れてくる。


 そして、風の都シルヴァリアを新たな拠点として運用する。


 その途中で、再び灼熱廃都イグニシアを調査する。


 百年前に隠された真実を探すために――。


 そして翌日。


 朝日がシルヴァリアの街並みを照らす中、Aegisは出発の準備を整える。


 新たな仲間を迎え、新たな拠点を築くために。


 彼らは再び地上へ向けて歩き始めるのだった。


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