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世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
第五章 新たなフロンティア

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第73話 シルヴァリアの街並み

# 第73話 シルヴァリアの街並み


 レオニスとの話し合いを終えたAegisの一行は、館の外へと出ていた。


 重厚な扉が静かに閉まり、先ほどまでの落ち着いた空気とは打って変わって、外には街の活気が広がっている。


 白い石畳の道を人々が行き交い、遠くからは商人たちの呼び声や、

 工房で金属を打つ音が微かに聞こえてきた。


 Arcは周囲を見渡す。


 ここは迷宮二十三階層に存在する都市。


 百年前から人々が暮らし続けてきた、風の都シルヴァリアだ。


 これまで攻略してきた階層とは違い、ここには確かな生活の営みが存在している。


 探索の途中で立ち寄った場所ではなく、一つの文明圏そのものだった。


 すると、レオニスが穏やかな笑みを浮かべながら口を開いた。


「皆様に、風の都シルヴァリアをご案内しましょう」


「せっかく来ていただいたのです。この都のことを知っていただければと思います」


 突然の提案に、一同は少し驚いた表情を見せる。


 その言葉に、Rainが少し嬉しそうな表情を浮かべた。


「いいの?」


「もちろんです」


 レオニスは優しく頷く。


「皆様には、この都の現状を知っていただきたいのです」


「そして、これから、お世話になるかもしれませんからね」


 その言葉には、単なる社交辞令ではない期待が込められていた。


 Aegisがこの街と協力関係を築くこと。


 それが、シルヴァリアにとっても大きな意味を持つのだろう。


 すると、Cainが呆れたように笑った。


「もう拠点にする気満々だろ」


 すると、Rainは悪びれる様子もなく肩をすくめる。


「だって便利そうじゃん」


「二十三階層まで毎回往復するの大変だし」


 現在、Aegisは攻略のたびに地上と迷宮を往復している。


 階層が深くなるほど、その移動時間は大きな負担になっていた。


 Rainの言葉に、何人かが小さく頷く。


 すると、Crowも腕を組みながら口を開いた。


「補給地点が増えるのは助かるな」


「地上まで戻る時間が減るだけでもデカい」


「食料や消耗品の管理もしやすくなる」


「探索に使える時間が増えるのは大きいな」


 攻略が進むほど、一回の探索に必要な物資は増えていく。


 回復薬や保存食、予備の装備など、準備するものは少なくない。


 その負担を減らせる拠点の存在は、攻略速度そのものに直結する。


 すると、Garmも周囲を見渡した。


 高い城壁。


 見通しの良い街並み。


 限られた出入口。


 戦士としての視点から、この都の構造を確認していく。


「防衛拠点としても優秀だな」


「城壁も高いし、入口も限られている」


「万が一、魔物が侵入してきても守りやすい」


 その言葉に、レオニスが嬉しそうに頷いた。


「ありがとうございます」


「この都は百年以上、多くの人々を守り続けてきましたから」


 その表情には、誇らしさが滲んでいた。


 長い年月をかけて築き上げられた街並み。


 そこに暮らす人々の生活。


 そして、この場所を守り続けてきた歴史。


 レオニスにとって、この都は単なる居住地ではなく、大切な故郷なのだろう。


 Arcも周囲を見渡しながら静かに口を開いた。


「攻略速度も上がる」


「地上へ戻る時間を探索に回せるからな」


 これまでは、補給や休息のたびに長い距離を移動しなければならなかった。


 だが、この場所を前線基地として利用できれば、その負担は大きく減る。


 探索に使える時間が増えれば、それだけ攻略の速度も上がる。


 人類にとっても、大きな前進になるだろう。


 レオニスは穏やかな笑みを浮かべた。


「そう言っていただけると嬉しいですね」


「皆様のお役に立てるのであれば、これほど嬉しいことはありません」


 そうして一行は、街の中心部へ向けて歩き始めた。


 白い石畳の道がどこまでも続いている。


 歩くたびに靴音が心地よく響き、爽やかな風が頬を撫でていく。


 周囲では、人々が忙しそうに行き交っていた。


 荷物を運ぶ者、店先で客を呼び込む者、談笑しながら歩く者。


 それぞれが日常を過ごしており、この都が今も活気に満ちていることが伝わってきた。


 露店では食材や日用品が所狭しと並べられていた。


 色鮮やかな果物や野菜、香ばしい匂いを漂わせる焼き菓子、保存食や生活用品まで揃っている。


 行き交う人々も多く、買い物をする住民たちの姿があちこちで見られた。


「新鮮な果物はいかがですかー!」


「焼きたてですよー!」


「今日入ったばかりの香辛料ですよー!」


 店主たちの活気ある呼び込みの声が街中に響き渡る。


 その賑やかな光景に、Rainの視線が自然と露店へ向かった。


「わぁ……すごい」


 そして、漂ってくる香ばしい匂いに鼻をひくつかせる。


「お腹空いてきた……」


「さっき食べただろ」


 すぐ隣でCainが呆れたように言った。


「別腹だよ」


「便利な言葉だな」


「だって美味しそうなんだもん」


 Rainが少し頬を膨らませながら答える。


 その様子を見て、周囲の仲間たちも小さく笑った。


 レオニスもまた、穏やかな表情を浮かべる。


「皆様が楽しんでくださっているようで何よりです」


「この市場は、シルヴァリアの人々の生活を支える大切な場所なんですよ」


 彼の言葉を聞きながら、一行は賑わう市場の中をゆっくりと歩いていった。


 しばらく歩くと、街の中心部から少し離れた場所に、

 大きな建物がいくつも並んでいるのが見えてきた。


 どの建物も白い石造りで統一されており、整然と配置されている。


 しばらく歩いていると、通り沿いに並ぶ建物の中でも、一際大きな建物が目に入った。


 白い石造りの建物は三階建てほどの高さがあり、入口付近では人々が出入りを繰り返している。


 その様子を見ながら、レオニスが足を止めた。


 そして、その建物を指差しながら説明を始める。


「こちらは宿泊施設です」


「遠方から来られた方々が利用しております」


 Aegisの面々も興味を引かれたようで、建物の中へ視線を向けた。


 中では、人々が荷物を整理したり、椅子に腰掛けて休憩したりしている。


 広々とした空間には、清潔な寝具が整然と並べられており、

 どこも丁寧に管理されていることが一目で分かった。


 Rainが興味津々といった様子で中を覗き込む。


「うわっ、ちゃんとベッドがある」


「しかも広い……」


 地上の簡易宿泊所とは違い、長期間滞在することを前提に作られているのだろう。


 寝具だけではなく、生活に必要な設備も一通り揃っている。


 探索の合間に身体を休めたり、装備の手入れをしたり、作戦会議を開いたりすることもできそうだ。


 Rainが感心したように呟く。


「ここなら疲れもちゃんと取れそう」


 その言葉に、Cainも周囲を見渡しながら頷いた。


「毎回地上まで戻らなくて済むなら、かなり楽になるな」


 これまでは、探索を終えるたびに地上へ戻り、補給や休息を行う必要があった。


 その移動だけでも大きな負担になっていた。


 だが、この場所が前線基地として機能すれば、その時間をすべて探索や攻略に充てることができる。


 前線でこれだけの設備が整っていることの価値を、一同は改めて実感していた。


 するとレオニスが、街並みへ視線を向けながら説明を続ける。


「この宿泊施設だけでも十棟以上あります」


「探索者だけでなく、職人や商人、研究者など、多くの人々が生活しておりますので」


「十棟もあるのか……」


 Rainが思わず声を漏らした。


「思ってたより、ずっと大きな街なんだね」


「はい」


「皆が安心して暮らせるよう、長い年月をかけて整備されてきました」


 その言葉に、一同は改めて周囲を見渡した。


 今まで歩いてきた範囲だけでも、この街のほんの一部に過ぎない。


 白い建物が遠くまで立ち並び、その間を多くの人々が行き交っている。


 荷物を運ぶ者、店を開く者、談笑しながら歩く者。


 露店の前では客と店主が楽しそうに会話を交わし、子どもたちが元気よく走り回っている。


 道の脇では職人たちが道具の手入れを行い、遠くからは金属を打つ音も聞こえてきた。


 そこには確かな生活の営みが存在していた。


 見渡す限り建物が立ち並び、人々の暮らしが自然と街の形を作り上げている。


 まるで一つの国が、そのまま地下世界に築かれているかのようだった。


「思ったより、ずっと大きいな……」


 Cainが思わず呟く。


 その言葉には、純粋な驚きが滲んでいた。


 Arcも静かに周囲を見渡した。


 ここは単なる避難所ではない。


 一時的に身を寄せるための場所などではなく、

 人々が長い年月をかけて築き上げてきた生活の場そのものだ。


 一つの巨大な都市そのものだった。


 その隣には、さらに大きな建物がいくつも並んでいた。


 入口付近では、人々が荷車を使って木箱を運び込んでいる。


 中には食料と思われる袋や、生活用品らしき荷物も見える。


 どうやら日々の暮らしを支えるための物資が、絶えず運び込まれているようだった。


 レオニスがそちらへ視線を向けた。


「こちらは物資保管庫になります」


「食料や生活用品などを保管しています」


 そう言って案内された建物は、想像していた以上に大きかった。


 重厚な扉の先には、広々とした空間が広がっている。


 中には食料品や薬品、衣類、日用品などが種類ごとに整理され、棚や木箱に丁寧に収納されていた。


 それぞれに札も付けられており、必要な物をすぐに取り出せるよう管理されているようだ。


 さらに、保管されている量もかなり多い。


 数日分どころか、長期間生活できそうなほどの備蓄が用意されていた。


 Rainが周囲を見渡しながら感心したように声を漏らす。


「すごい……」


「これだけあれば、しばらく地上に戻らなくても生活できそう」


「ええ、その通りです」


 レオニスが穏やかに頷いた。


「探索者の皆様が安心して活動できるよう、常に一定量の備蓄を維持しております」


 そして、その保管庫も一つだけではなかった。


 建物の外へ出ると、同じ規模の施設が周囲にいくつも並んでいる。


 用途ごとに分けられているのだろう。


 食料、生活用品、医薬品など、それぞれ役割が異なるようだった。


 Crowが感心したように口を開く。


「これは助かるな」


「毎回大量の荷物を地上から運ぶ必要がなくなる」


 Garmも周囲を見渡しながら頷いた。


「補給線が安定するのは大きいな」


「長期攻略を考えるなら、こういう設備は重要だ」


 Arcも静かにその光景を見つめていた。


 探索を続ける上で、戦闘力だけでは限界がある。


 食料や装備、生活環境が整っていてこそ、長期間の攻略が可能になる。


 そういう意味では、この都はすでに一つの完成された前線基地だった。


 さらに歩くと、大きな工房が見えてきた。


 鉄を叩く音が辺りに響き渡り、赤く熱せられた金属から火花が飛び散っている。


 職人たちが忙しそうに作業を続けていた。


「こちらは武具工房です」


 Novaが興味深そうに工房の中を見つめる。


 職人たちは慣れた手つきで鉄を打ち、炉の火加減を調整しながら武器や防具を作り上げていた。


 壁際には完成した剣や槍が整然と並べられ、

 作業台の上には細かな部品や設計図のようなものまで置かれている。


「すごい……」


「研究しがいがありそう」


 Novaの瞳がわずかに輝いた。


 彼女にとって未知の技術や設備は、それだけで興味の対象なのだろう。


 すると、Siaも周囲を見渡しながら短く口を開いた。


「見通しも良い」


「防衛しやすい」


 確かに、建物の配置には無駄が少ない。


 広い通路が確保されており、どこから敵が侵入してきてもすぐに対応できそうだった。


 Arcは静かに周囲を見渡していた。


 宿泊施設。


 物資保管庫。


 市場。


 武具工房。


 生活基盤。


 そして、それらが一つ二つではなく、巨大な都市として機能する規模で存在している。


 人々が生活し、働き、支え合いながら暮らしている。


 単なる避難場所ではない。


 ここには、ひとつの文明が確かに息づいていた。


(十分だな……)


(いや、十分どころじゃない)


(ここを前線基地にできれば、攻略の効率は飛躍的に上がる)


 食料の補給。


 装備の整備。


 休息。


 次の探索への準備。


 ここには、それらすべてが揃っている。


 これまでの攻略では、一度深層へ潜るたびに地上へ戻り、

 再び長い時間をかけて降りてくる必要があった。


 その往復だけでも、かなりの時間と労力を消費していたのだ。


 だが、この都があれば話は変わる。


 探索に使える時間が増える。


 補給の負担も減る。


 万が一の際の避難場所としても機能するだろう。


 それどころか、人類の前線基地として十分すぎるほど整っていた。


 Arcは静かに周囲を見渡した。


(将来的には、他の探索者たちもここを利用できるかもしれない)


 そんなことを考えていると、先頭を歩いていたレオニスが足を止めた。


「次はこちらをご案内しましょう」


 そう言って視線を向けた先には、一際高くそびえ立つ巨大な塔があった。


 周囲の建物よりも頭一つどころか、何倍も高く伸びている。


 白い石で造られたその塔の表面には、無数の紋様が刻まれていた。


 幾何学的な模様が幾重にも重なり合い、

 まるで巨大な魔法陣そのものが塔になったかのような造りをしている。


 だが、その姿にはどこか寂しさも感じられた。


 人の気配がない。


 動いている様子もない。


 長い年月、誰にも使われずに眠り続けている――そんな静けさが漂っていた。


「これは……?」


 Novaが思わず呟く。


 すると、レオニスが静かに答えた。


「魔法通信塔です」


 一同の視線が塔へ集まる。


「百年前、この塔は各都市を繋ぐ重要な設備でした」


「離れた場所にいる者同士でも、瞬時に情報を共有できたのです」


 Rainが目を丸くする。


「そんな便利なものがあったの?」


「はい」


「ですが、百年前のモンスターパレードの混乱の中で機能を失い、それ以来、一度も動いておりません」


 百年前、各都市を繋いでいた設備。


 そして、百年間止まり続けている施設。


 Arcは、その巨大な塔を静かに見上げた。


 もし、これを動かすことができれば――。


 この世界の攻略は、大きく前進するかもしれない。


 そんな予感が、Arcの胸の中に静かに広がっていた。


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