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世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
第五章 新たなフロンティア

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第66話 総力戦

# 第66話 総力戦


 Aegis全員が武器を構える。


 風狼王が低く唸った。


 黄金の瞳が一人ずつを見渡す。


 増援が現れても怯む様子はない。


 むしろ。


 どの獲物から狩るべきか見極めているようだった。


 Arcは風狼王を見据えたまま口を開く。


「Crowは下がれ」


 即座の指示。


 だが。


「問題ない」


 返事も即座だった。


 Crowは盾を構えたまま答える。


 腕は震えている。


 口元には血が残っている。


 それでも立っていた。


「まだ受けられる」


 荒い呼吸が漏れる。


 肩は大きく上下し、誰が見ても限界に近い状態だった。


 それでもCrowは盾を構えたまま、一歩も退かない。


 ArcはそんなCrowを数秒見つめる。


 そして。


 小さく笑った。


「オーケー」


 Crowも口元を歪める。


 話が早い。


 Arcはすぐに視線を移した。


「Garm」


「おう」


「Crowのサポートだ」


 Garmが頷く。


 巨大盾を前へ出した。


 そして剣を天へ掲げる。


《Holy Aura》


 金色の光がGarmを中心に広がった。


 温かな輝きは森の中を照らしながら波紋のように広がり、Aegisのメンバー全員を包み込む。


 さらに装備の表面には薄い光の膜が形成され、防御力の向上を感じさせた。


「防御上昇確認」


 Novaが短く告げる。


「いい感じ」


 Rainも頷いた。


 Arcは次々と指示を飛ばす。


「GarmとSiaはcrowの援護」


「Rainは撹乱」


「Cainは隙ができるまで待て」


「Novaはタイミングを合わせろ」


 全員が頷く。


「行くぞ」


 その瞬間だった。


 風狼王が地面を蹴る。


 轟音とともに巨体が弾けるように前へ飛び出し、次の瞬間には姿が消えたように見えた。


「来るぞ!」


 Arcの鋭い声が響く。


 風狼王が狙ったのはCrowだった。


 一直線に突っ込んでくる。


 風狼王は圧倒的な速度でCrowへ襲いかかった。


 しかし、今度のCrowは一人ではない。


 盾を構えるCrowの隣には、Garmが並び立っていた。


 二枚の盾を掲げる二人のタンクが、風狼王の突撃を迎え撃つ。


 次の瞬間、風狼王の鋭い爪が振り下ろされた。


 轟ッ!!


 衝撃が森を揺らした。


 風狼王の爪をCrowが正面から受け止める。


 盾が悲鳴を上げる。


 腕に激痛が走る。


 それでもCrowは踏み込んだ。


 後ろへは下がらない。


「今だ!」


 Crowの叫びと同時に。


 右からGarm。


 左からRain。


 二人が同時に飛び出した。


 Garmの剣が風狼王の脇腹を斬り裂く。


 Rainの双剣が反対側から鋭く走る。


 挟撃。


 風狼王が低く唸った。


 巨体がわずかによろめく。


 その一瞬。


 Crowの瞳が鋭く光った。


《ブラッドドライブ》


 赤黒い光がCrowの身体を包み込んだ。


 攻撃力上昇の効果が発動する。


 Crowは盾で風狼王を押さえ込みながら、剣を大きく引き絞った。


「返すぞ!」


 叫びと同時に剣が振り抜かれる。


 渾身の切り返しが風狼王へ叩き込まれた。


 その一撃を放つと、Crowはすぐに距離を取る。


 そして再び接近し、風狼王の意識を揺さぶるように動き続けた。


 Rainの素早い動きとCainの猛攻によって、風狼王の意識は大きく揺さぶられていた。


 そして。


 風狼王は警戒するように大きく後退する。


 黄金の瞳が鋭く細まり、Aegisの面々を睨みつけた。


 次の瞬間。


「グルルルルル……!」


 低く重い唸り声が森全体へ響き渡る。


 その声に呼応するように空気が震え、周囲の木々がざわめいた。


 そして。


「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 咆哮。


 凄まじい咆哮だった。


 衝撃波のような音圧が周囲へ広がる。


 Aegis全員が思わず身構えた。


 風が吹き荒れる。


 風狼王の身体を緑色の魔力が包み込んだ。


「なんだ……?」


 Cainが眉をひそめる。


 風狼王の筋肉が膨れ上がる。


 爪がさらに鋭く伸びる。


 全身から放たれる圧力が明らかに増していた。


「強化か!」


 Novaが叫ぶ。


 その直後。


 風狼王が地面を蹴った。


 爆発音。


 先ほどまでとは比較にならない速度。


 巨体が一直線にAegisへ迫る。


「来るぞ!」


 Arcが叫んだ直後だった。


 風狼王の全身から暴風が噴き上がる。


 空気が震える。


 木々が軋む。


 先ほどまでとは明らかに違う。


 風狼王はさらに速度を上げていた。


 残像すら見えない。


 次の瞬間。


 Crowの正面へ現れる。


 鋭い爪が振り下ろされた。


「Crow!」


 Garmが叫ぶ。


 だがCrowは動かなかった。


 盾を構えたまま前へ出る。


「まだだ」


 低く呟く。


《Last Stand》


 赤い光がCrowの身体を包み込む。


 それは防御力を大きく引き上げ、受けるダメージを軽減する防御スキルだった。

 追い詰められた状況でこそ真価を発揮する切り札である。


 Crowは盾を強く握り締めた。


「来い!」


 次の瞬間――。


 轟ッ!!


 風狼王の鋭い爪が盾へ激突する。


 凄まじい衝撃が走り、足元の地面が砕け散った。


 Crowの足が土へ沈む。


 それでも倒れない。


 風狼王がさらに追撃する。


 二撃。


 三撃。


 四撃。


 暴風のような連続攻撃。


 だがCrowは全て受け止めた。


 盾が軋む。


 腕が悲鳴を上げる。


 それでも一歩も退かない。


「まだ受けられる!」


 Crowが吠える。


 風狼王の猛攻を真正面から止め続ける。


 その姿にAegis全員の士気が上がった。


 Arcは風狼王を見据えていた。


 黄金に輝く瞳。周囲を荒れ狂う風。そして強化された身体能力。そのどれもが脅威だった。


 しかし、Arcにはもう見えていた。


 風狼王の動きが。


「あと少しだ」


 低く呟く。


 風狼王は強敵だった。


 ゲームにも存在しなかった未知の魔物。その力は圧倒的で、一歩間違えれば全滅もあり得る相手だ。


 しかし、決して倒せない敵ではない。


 Arcはそう確信していた。


「Garm!」


「隙を作れ!」


「おう!」


 指示が飛ぶ。


 返事と同時に、Garmは力強く地面を蹴った。


 巨大な盾を構え、そのまま風狼王へ向かって一直線に突撃する。


 その瞬間。


 風狼王もCrowへ向けて前脚を振り上げた。


 今までで最も重い一撃。


 Crowを押し潰すための攻撃だった。


 だが。


 Garmは待っていた。


 その瞬間を。


《Shield Bash》


 轟ッ!!


 巨大盾が風狼王の前脚へ叩き付けられる。


 衝撃。


 風狼王の身体が揺れる。


 完全には止まらない。


 だが。


 その巨体が大きく揺らいだ。


 踏み込んでいた前脚が乱れる。


 巨体の重心が崩れた。


 風狼王が初めて大きく体勢を崩す。


 Arcの瞳が鋭く光った。


「今だぁぁぁ!!」


 森へ響く号令。


 全員が動く。


「おおおおおおっ!!」


 Cainが咆哮した。


《狂暴化》


 赤黒い光がCainの身体を包み込む。


 《狂暴化》によって筋肉は大きく膨れ上がり、防御力と引き換えに圧倒的な攻撃力を得る。


 Cainは二本の大斧を強く握り締めた。


 そして。


 地面を砕きながら加速した。


 風狼王の懐へ飛び込む。


 振り下ろす。


 一撃。


 さらにもう一撃。


 十字に走った斬撃が風狼王の身体を深く切り裂いた。


 鮮血が舞う。


「まだぁぁぁ!」


 続いてRain。


《Cross Edge》


 双剣が交差する。


 高速で駆け抜ける。


 風狼王の横を通り過ぎた瞬間。


 遅れて血飛沫が上がった。


 胴体へ深い傷が刻まれる。


「Nova!」


 Arcが叫ぶ。


「任せて!」


 Novaが杖を掲げる。


 肩のサラマンダーが高く鳴いた。


 火属性の魔力がNovaの杖へと集まり、瞬く間に巨大な火球を形作る。


 その火球はさらに圧縮され、凝縮された灼熱の力へと変わっていった。


《フレア》


 次の瞬間、轟音とともに放たれた炎が炸裂する。


 凄まじい爆炎が風狼王を包み込み、吹き荒れる熱風が森全体を大きく揺らした。


「Sia!」


 最後の指示を受けたSiaは、樹上で静かに弓を構えていた。


 呼吸を整えながら、限界まで弦を引き絞る。


 狙うのはただ一つ。


 風狼王の黄金の瞳だった。


「――穿て」


 小さく呟き、指を離す。


 放たれた矢は一直線に空を裂き、その姿を消すような速度で風狼王へと向かった。


 次の瞬間。


 風狼王の右目へ突き刺さった。


 ギャアアアアアアアアアアアッ!!


 風狼王の絶叫が森に響き渡った。


 それは、この戦いが始まってから初めて聞く悲鳴だった。


 圧倒的な力で冒険者たちを追い詰めていた風狼王が、全身から血を流しながら大きくよろめく。


 そしてついに、その巨体が膝をついた。


 地面が揺れ、森が静まり返る。


 誰もが息を呑んだ。


 倒した――。


 その場にいた全員がそう思った。


 だが次の瞬間。


 風狼王は低く唸り声を上げると、震える脚に力を込める。


 ゆっくりと。


 それでも確実に。


 巨体が再び立ち上がった。


 その姿に冒険者たちの表情が凍り付く。


 まだ終わっていないのだと。

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