表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
第五章 新たなフロンティア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/111

第65話 再集結

# 第65話 再集結


 轟音が森に響き渡る。


 風の牙が地面を抉り、土砂を巻き上げる。


 その余波だけで巨木が真っ二つに裂けた。


 Crowは盾を構えたまま後方へ押し込まれる。


 足が地面を削り、腕には痺れが走る。


 呼吸も荒かった。


 口元から流れた血が顎を伝った。


「っ……」


 重い。


 今まで受けてきたどの攻撃よりも重い。


 盾で受け流している。


 角度も合わせている。


 それでも削られる。


 完全には流し切れない。


 風狼王の黄金の瞳が細まった。


 獲物が弱っている。


 そう判断したようだった。


 風狼王は低く身を沈める。


 筋肉が収縮し、四肢に力が溜まっていくのが見えた。


 嫌な予感が走る。


 Crowが盾を構え直すより早く、風狼王は地面を蹴った。


 踏み込んだ場所が砕ける。


 爆発するような加速。


 巨体とは思えない速度で一直線に突進してくる。


 視界から消えたと思った瞬間には、もう目の前だった。


「Crow!」


 Rainが叫ぶ。


 咄嗟に双剣を構え、割って入ろうと駆け出す。


 だが。


 Rainが踏み込んだ瞬間には、風狼王の方が速かった。


 巨体とは思えない速度で前脚が振り上げられる。


 空気が裂ける音が耳を打った。


 間に合わない。


 風狼王の前脚が高く振り上がる。


 巨大な爪が陽光を反射しながら弧を描いた。


 次の瞬間、その爪が一直線にCrowへ叩き付けられる。


 轟ッ!!


 Crowは咄嗟に盾を差し込んだ。


 金属と爪が激突し、火花が散る。


 衝撃で盾が大きく軋む。


 Crowは身体を捻りながら盾の角度を変え、爪を滑らせるように受け流そうとした。


 これまで何度も繰り返してきた防御だ。


 爪の勢いを殺し、横へ逃がす。


 そうすれば直撃は避けられる。


 だが。


 今回は違った。


 爪に乗った圧倒的な力が盾越しに押し寄せる。


 腕が悲鳴を上げる。


 踏ん張った足が地面を削る。


 それでも勢いを殺し切れない。


 今度は押し切られた。


「ぐぁっ!!」


 爪と盾がぶつかった瞬間、Crowの足元の地面が砕けた。


 踏ん張ろうと力を込める。


 だが、風狼王の膂力はそれを上回った。


 盾越しに伝わる衝撃が腕を貫き、身体ごと押し込まれる。


 次の瞬間、均衡が崩れた。


 Crowの身体が宙へ浮く。


 そのまま数メートル吹き飛ばされ、地面へ叩き付けられた。


 受け身を取る暇もなく転がる。


 土と枯葉を巻き上げながら何度も地面を跳ね、最後に背中から巨木へ激突した。


 鈍い衝撃が全身を走る。


 肺の空気が強制的に押し出され、息が詰まった。


 視界が大きく揺れる。


「Crow!」


 Rainが駆ける。


 だが。


 風狼王の視線は既にCrowへ向いていた。


 止めを刺す気だ。


「ちっ……!」


 Rainが地面を蹴る。


 枯葉が舞う。


 風狼王の視線は完全にCrowへ向いていた。


 止めを刺すつもりだ。


 このままでは間に合わない。


 Rainは木の根を蹴り、一気に加速した。


 低く。


 地面を滑るように。


 風狼王の死角へ潜り込む。


《Twin Edge》


 二本の短剣が閃く。


 右手の刃が風狼王の視界を遮るように走る。


 反射的に風狼王の瞳がそちらを追った。


 その一瞬。


 Rainは身体を捻る。


 左手の短剣を振り抜いた。


 鋭い刃が頬を掠める。


 肉を裂く感触。


 赤い血が飛び散った。


 初めてだった。


 これまでCrowやRainの攻撃は毛皮に阻まれていた。


 だが今回は違う。


 確かに届いた。


 浅い。


 致命傷には程遠い。


 それでも風狼王へ傷を付けた。


 黄金の瞳がRainへ向く。


「こっち見なさい!」


 Rainが叫ぶ。


 挑発する。


 だが。


 風狼王は騙されない。


 Rainの短剣が頬を裂いた瞬間、確かにその視線はこちらへ向いた。


 だが、それもほんの一瞬だった。


 黄金の瞳がRainを捉える。


 次の瞬間には、その視線がゆっくりと外れていく。


 まるで値踏みするように。


 目の前で攻撃してきたRainよりも、今倒すべき相手が誰なのかを理解しているかのようだった。


 そして再びCrowを見る。


「うそでしょ……」


 Rainの顔が引き攣る。


 普通の魔物なら挑発に乗る。


 自分を傷付けた相手へ怒りを向ける。


 だが、この魔物は違った。


 感情で動いていない。


 戦況を見ている。


 誰が最も危険で、誰を先に排除すべきか判断している。


 知能が高過ぎる。


 風狼王はゆっくりと身体を沈めた。


 四肢に力が込められる。


 肩が盛り上がり、全身の筋肉が膨れ上がっていく。


 地面を掴む爪が土を砕いた。


 次の一撃に全てを乗せるつもりだ。


 狙いはCrow。


 木にもたれながら立ち上がろうとしているCrowを、黄金の瞳が逃さない。


 弱った獲物。


 今ここで仕留めるべき敵。


 完全に止めを刺しに来ていた。


 Rainが歯を食いしばる。


 このままでは間に合わない。


 それでも身体は勝手に動いていた。


 地面を蹴る。


 Crowと風狼王の間へ飛び込む。


 だが間に合わない。


 風狼王の脚が爆発するように伸びた。


 巨体が前へ躍り出る。


 振り上げられた前脚が空気を裂き、巨大な爪が振り下ろされる。


「やべぇ――!」


 その瞬間。


 森の奥から声が響いた。


「カバー!!」


 聞き慣れた声が森に響く。


 Garmだった。


 《Cover》。


 仲間への攻撃を強制的に引き受ける防御スキル。


 次の瞬間、巨大な盾を構えたGarmがCrowと風狼王の間へ割り込む。


 同時にArcのバリアが展開された。


 光の障壁がCrowの前へ現れる。


 次の瞬間。


 風狼王の追撃が叩き付けられた。


 轟音。


 障壁は大きく軋む。


 砕けない。


 だが大幅に威力を軽減させた。


 そしてCrowその一撃を受け止めた。


「待たせたな!」


 続いて響く声。


 Arcだった。


 さらに。


 Garm


 Nova


 Sia


 Cain


 Aegisの面々が森を抜けて飛び出してくる。


 Crowが笑った。


「遅ぇよ」


 血を吐きながらも、それでも笑う。


 Arcは真っ直ぐCrowの元へ駆け寄った。


「Crow!」


 盾を見る。


 視線の先で、Garmの巨大盾がわずかに揺れていた。


 表面には深く刻まれた爪痕が走っている。


 風狼王の一撃を受け止めた跡だ。


 縁の一部は砕け、金属片が地面へ落ちていた。


 その盾を支える腕も無事ではない。


 Garmの腕は小さく震えていた。


 力を込めて押さえ込んでいるはずなのに、その震えは止まらない。


 肩は上下し、荒い呼吸が漏れる。


 額には汗が滲み、頬を伝って落ちていく。


 Rainは思わず息を呑んだ。


 想像以上だった。


 ここまで消耗していたとは思わなかった。


 Arcは杖を掲げる。


《Heal》


 柔らかな光がCrowを包んだ。


 傷が塞がり、荒れていた呼吸が少しずつ落ち着いていく。


「悪いな」


 Crowが苦笑する。


 Arcは首を振った。


「いや……よく耐えてくれた」


 その一言に、Crowは肩を竦める。


「盾役だからな」


 だが、その顔には疲労が滲んでいた。


 ここまで一人で食い止めていたのだ。


 Arcは風狼王へ視線を向ける。


 巨大な身体。


 黄金の瞳。


 圧倒的な存在感。


 ゲームにも存在しなかった未知の魔物。


 だが。


 今は一人じゃない。


 全員揃った。


 Aegis全員が。


「ここからだ」


 Arcが言う。


 風狼王が低く唸った。


 その咆哮に呼応するように森全体が震える。


 Aegis全員が武器を構える。


 だが。


 風狼王は怯まない。


 黄金の瞳が一人ずつを見渡す。


 まるで。


 増援が来ることすら想定していたかのように。


 そして――


 低く唸った。


 総力戦が始まる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ