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世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
第五章 新たなフロンティア

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第56話 進化の先へ

# 第56話 進化の先へ


 火炎龍討伐から数時間後。


 二十階層。


 山のような火炎龍の亡骸が岩場へ横たわっていた。


 つい数時間前まで死闘を繰り広げていた相手。


 二十階層の支配者。


 灼熱の王。


 今はもう動かない。


 巨大な黄金の瞳も閉じられ。


 白炎も消えていた。


 その姿を眺めながら。


 Aegisは簡易テントで休息を取っていた。


 モンスターの気配はない。


 ボス階層。


 支配者が消えた以上、新たな魔物が湧くこともない。


 今だけは安全だった。


「生き返った……」


 Rainが岩盤へ寝転がりながら呟く。


 火山地帯特有の熱気は残っている。


 それでも。


 戦闘中と比べれば天国だった。


「完全に死ぬかと思った」


「毎回言ってるな」


 Cainが笑う。


 大斧を横へ置く。


 まだ腕が少し震えていた。


 白炎を正面から受け止めた反動は大きい。


「お前こそ無茶しすぎだろ」


 Rainが起き上がる。


「普通ブレスに突っ込む?」


「間に合いそうだったからな」


「だからって突っ込む?」


「突っ込んだ」


「馬鹿だろ」


「馬鹿ね」


「馬鹿だな」


 Rain。


 Nova。


 Garm。


 三方向から断定された。


「お前ら酷くね?」


 Cainが苦笑する。


 だが否定はしない。


 自分でも少しそう思っていた。


「でも助かった」


 Rainが言う。


 少しだけ真面目な声だった。


「ありがと」


 Cainは肩をすくめた。


「気にすんな」


「俺も何回も助けられてる」


 それだけだった。


 だが。


 それがAegisだった。


 誰かが危なくなれば助ける。


 それだけの話だった。


 その横では。


 GarmとCrowが進化後のステータスを確認していた。


「どうだ?」


 Arcが声を掛ける。


 Garmが頷いた。


「思った以上だな」


 視線の先。


《聖騎士》


 進化した職業名が表示されている。


「防御系スキルが増えてる」


「PT向けだな」


「俺向きだ」


 Garmは笑った。


 元々受けタンク。


 仲間を守るために前へ立つ職業。


 聖騎士との相性は抜群だった。


 一方。


 Crowは静かにウィンドウを眺めている。


《暗黒騎士》


 その文字を見つめる。


 Rainが横から覗き込んだ。


「どうなん?」


「面白い」


 短く答える。


「面白い?」


「HPが減るほど強くなる」


「怖っ」


 Rainが即答した。


「絶対やりたくない」


「俺もやりたくない」


 Crowも頷く。


「じゃあなんでなったんだよ」


「強いからだ」


 即答だった。


 Novaが吹き出した。


「潔いわね」


 Arcも会話へ加わる。


「暗黒騎士は特殊職だ」


 全員の視線が向く。


 デプクロ時代。


 人気の高かった上位職。


「HPが減るほどSTRとVITが上昇する」


「つまり死にかけるほど強い」


「危険すぎるだろ」


 Novaが呆れる。


 だが。


 Arcは首を横へ振った。


「だから強い」


 受けタンク。


 火力。


 その両方を成立させる数少ない職業だった。


「そんなに変わる?」


 Rainが首を傾げる。


「変わる」


 Arcは即答した。


「最近はゲーム知識通りじゃないことが増えてる」


 Rainが黙る。


 確かにそうだった。


 七階層の特殊レイド。


 二十階層の火炎龍。


 どれもデプクロには存在しなかった。


「避けられる前提の戦術は危険だ」


 ArcはCrowを見る。


「どれだけ上手くても事故は起きる」


「……」


「だから受けタンクが必要になる」


 Garmが頷いた。


 Crowも理解していた。


 回避。


 それは強い。


 だが百回避けられても。


 一回の失敗で死ぬ。


「GarmとCrow」


「受けタンク二枚体制なら前線が崩れにくい」


「安全性が上がるってことか」


 Rainが納得する。


「ああ」


 Arcは頷いた。


「特にこれから先はな」


 二十一階層以降。


 さらに未知が増えるだろう。


 ゲーム知識だけでは通用しなくなる。


 だからこそ。


 安定した前線が必要だった。


 Crowは自分のステータスを見下ろす。


 HPが減るほど強くなる。


 言葉にすれば単純だ。


 だが。


 実際に運用するとなれば話は別だった。


 少しでも判断を誤れば死ぬ。


 ヒーラーへの信頼が必要になる。


 ArcはCrowを見る。


 Crowも視線を返した。


「お前のHP管理は俺に任せろ」


 一瞬。


 沈黙が流れる。


 そして。


 Crowが小さく笑った。


「ああ」


「信じてる」


 Rainが吹き出した。


「なんかカッコいいんだけど」


「うるさい」


 Crowが即答する。


 だが。


 その表情は少しだけ柔らかかった。


 火炎龍戦。


 命を預け合った。


 だからこその言葉だった。


  しばらくして。


 話題は他の進化職へ移っていた。


「そういえばRainは?」


 Novaが聞く。


 Rainは自分のウィンドウを開いた。


《アサシン》


 進化後の職業。


 そして新たに増えたスキル。


《バックスタブ》


 背後攻撃時ダメージ上昇。


「完全に暗殺者じゃん」


 Novaが呆れる。


「今さら?」


 Rainが笑った。


「元々そういう職業だし」


「それはそう」


 誰も否定できなかった。


 Arcも頷く。


「相性はいいな」


「GarmとCrowが前を抑える」


「Rainは背後へ回る」


「《バックスタブ》が乗る」


 シンプルだ。


 だが強い。


 レイドでは特に。


 敵の注意を引く役。


 攻撃する役。


 役割が明確になるほど効率は上がる。


「火炎龍戦でも欲しかったなぁ」


 Rainが肩を落とした。


「核殴る時絶対強かった」


「火炎龍みたいな大型ボスほど強い」


 Arcが言う。


「GarmやCrowが正面を抑える」


「Rainは背後を取る」


「それだけで火力が大きく変わる」


「いいねそれ」


 Rainが笑った。


 二十階層。


 確かに大きな壁だった。


 だが。


 デプクロ基準で言えば。


 まだ序盤に近い。


 Arcは静かに思う。


 本当に危険になるのはここからだと。


 その時だった。


「私はかなり変わったわ」


 Novaが口を開く。


 全員の視線が向く。


 Novaの前には進化後の職業名が表示されていた。


《エレメンタラー》


「かっこいい」


 Rainが素直に言う。


「だろうな」


 Cainも頷く。


 見た目からして強そうだった。


 Novaは少し得意げだった。


「精霊契約が解放されたわ」


 空気が変わる。


「精霊?」


 Siaが反応する。


 Novaが頷いた。


「火精霊サラマンダー」


「水精霊ウンディーネ」


「風精霊シルフ」


「土精霊ノーム」


 聞き覚えのある名前だった。


 ゲーム時代でも。


 エレメンタラーの象徴だった存在。


「全部契約できるのか?」


 Garmが聞く。


 Novaは首を横へ振った。


「まだ無理」


「今は契約条件だけ表示されてる」


 つまり。


 これから探す必要がある。


「精霊探しか」


 Crowが呟く。


「面倒そうだな」


「そうでもないわよ」


 Novaは笑った。


「下位精霊ならたぶん今でも契約できると思う」


「今でも?」


 Rainが首を傾げる。


「ええ」


 Novaはウィンドウを操作する。


 表示されているのは四つの名前。


《火精霊サラマンダー》


《水精霊ウンディーネ》


《風精霊シルフ》


《土精霊ノーム》


「この辺りは下位精霊」


「たぶん今の私でも契約できる」


「たぶんってなんだよ」


「まだ試してないもの」


 Novaが肩をすくめる。


「でも上位精霊は無理ね」


「契約条件が全然足りない」


 Arcも頷いた。


 デプクロ時代もそうだった。


 エレメンタラーは成長職。


 最初は下位精霊。


 そこから中位。


 上位。


 最終的には精霊王へ辿り着く。


 長い育成が必要になる。


 デプクロでも到達者は少なかった。


 育成時間。


 契約条件。


 難易度が桁違いだったからだ。


「つまり」


 Rainが言う。


「お前またヤバい職業引いたな」


「褒め言葉として受け取るわ」


 Novaは満足そうに笑った。


 新しい力。


 未知の成長要素。


 魔法職としては興味しかない。


 Arcも少し安心する。


 Novaは強くなる。


 間違いなく。


 それも今まで以上に。


 四大精霊との契約が進めば。


 Aegisの火力はさらに大きく跳ね上がるはずだった。


 その横では。


 Siaも静かにステータスを確認していた。


《レンジャー》


 進化した職業名。


 そして新スキル。


《ペネトレイトアロー》


《ハンターマーク》


「どうだ?」


 Arcが聞く。


 Siaは少し考えた。


「便利」


 短い。


 だが。


 Siaらしい答えだった。


「説明しろ」


 Rainがツッコむ。


「防御を抜ける」


 ペネトレイトアロー。


「敵を弱くできる」


 ハンターマーク。


「あと射程も伸びてる」


 Siaが付け加えた。


「マジ?」


「少しだけ」


 だが。


 その少しが大きい。


 レンジャーは距離が武器だからだ。


「強いじゃん」


 Rainが即答した。


 実際強い。


 レイド向けだった。


 特にハンターマーク。


 防御低下。


 全員の火力に繋がる。


「いい感じに役割分かれてきたな」


 Garmが呟く。


 前線。


 火力。


 支援。


 索敵。


 少しずつ。


 Aegisは完成形へ近付いていた。


 そして。


 残るのは一人だった。


 全員の視線がArcへ集まる。


「で」


 Rainが笑った。


「Arcは?」


 白魔導士。


 Aegisの要。


 その進化が一番気になっていた。


 Arcは自分のウィンドウを開く。


《白魔導士》


 その文字を見た瞬間。


 少しだけ肩の力が抜けた。


 ここまで長かった。


 デプクロでも。


 現実でも。


 この進化は特別だった。


「おお」


 Rainが声を漏らす。


「それっぽい」


「そのまんまね」


 Novaも頷く。


「そんなに凄い職業なの?」


 Siaが聞く。


 Arcは少し考えた。


「ああ」


「上に行けば行くほど価値が上がる」


「へぇ」


 Rainが感心する。


「つまりArcがさらに厄介になるってこと?」


「厄介とはなんだ」


「敵からしたら最悪だろ」


 Cainが笑った。


 Arcも苦笑する。


 だが。


 完全に間違いでもなかった。


 ステータスを確認する。


 回復量。


 支援効果。


 どちらも大きく伸びている。


 そして。


 新スキル。


「《マナヒール》」


 全員が反応した。


「何それ」


 Novaが聞く。


「MP回復」


 一瞬。


 沈黙。


「は?」


 Novaが固まった。


「ちょっと待って」


「MP回復?」


「ああ」


「それヤバくない?」


 魔法職にとって。


 MPは生命線だった。


 どれだけ強力な魔法を覚えていても。


 魔力が尽きれば終わり。


 だからこそ。


 MP回復は価値が高い。


「長期戦向きだな」


 Crowが呟く。


 Arcも頷いた。


「レイドで特に強い」


「ありがたいわね」


 Novaが素直に言う。


「魔力切れが一番怖いし」


 精霊契約が進めば。


 魔力消費も増える。


 その時。


 《マナヒール》は間違いなく役立つ。


 Rainがニヤニヤしながら言った。


「今までより無茶できる?」


「それは危険発言だろ」


 Novaが即座にツッコむ。


「でも事実だ」


 Arcは苦笑した。


 回復量。


 支援能力。


 魔力効率。


 全てが向上している。


 前線を維持できる時間は確実に伸びる。


 Crowが耐える。


 Garmが守る。


 Rainが斬る。


 Novaが焼く。


 Siaが援護する。


 Cainが突破する。


 そして。


 Arcが全員を支える。


 Aegisは確実に強くなっていた。


 Siaはもう一度、自分のウィンドウを確認した。


「あと」


 小さく呟く。


「索敵範囲も広がってる」


「それ大事じゃね?」


 Rainが反応する。


「森なら特に」


 Arcも頷いた。


 二十一階層からは風属性階層。


 森林地帯が広がる。


 視界が遮られる場所では、Siaの索敵能力がそのまま生存率に繋がる。


「なら任せて」


 Siaは短く言った。


 静かだが。


 頼もしい言葉だった。


 その時だった。


 Rainが立ち上がる。


「よし」


 大きく伸びをした。


「休憩終わったら行こう」


「二十一階層か」


 Garmが呟く。


 火山地帯はここで終わり。


 次からは風属性階層。


 森林地帯が広がるエリアだった。


 Arcも立ち上がる。


 二十一階層。


 ゲーム時代にも知っている階層。


 だが。


 もうゲーム知識だけを信じるつもりはない。


 七階層。


 二十階層。


 既に現実は変わり始めている。


 なら。


 油断はできない。


「準備が終わったら出発だ」


 その言葉に全員が頷く。


 二十階層踏破。


 ジョブ進化。


 大きな成果を得た。


 だが。


 攻略は終わらない。


 誰も気付いていない。


 二十三階層。


 そこに人類初となる出会いが待っていることを。


 Aegisの視線は既に次を見ていた。


 二十一階層。


 そして。


 安全階層シルヴァリアへ続く道を。

第五十六話を読んでいただきありがとうございます!


今回は二十階層踏破後の休息回&ジョブ進化回でした。


ついにAegis全員が上位職へ進化。


ここから各メンバーの個性と役割がさらに強くなっていきます。


そして次回からは二十一階層以降。


火山地帯を抜けた先で、Aegisは新たな発見と出会うことになります。


次回もよろしくお願いします!

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