第53話 白炎核
#第53話 白炎核
Rainは白炎の中心へ飛び込んだ。
熱風が全身へ叩き付けられる。
頬が焼ける。
腕が痛む。
息を吸う度に肺の奥が悲鳴を上げた。
だが。
止まらない。
視線の先には白炎核があった。
火炎龍の胸部。
砕けた鱗の奥。
心臓のように脈打つ白い炎。
ドクン。
ドクン。
不気味な鼓動が聞こえてくるようだった。
あれを壊せば終わる。
あれを壊さなければ終わらない。
だから。
前へ出る。
熱い。
怖い。
正直に言えば逃げたい。
目の前にいるのは神話の怪物だ。
人間が挑むべき存在じゃない。
だが。
背中には仲間がいる。
Arcが勝ち筋を見つけた。
Novaが隙を作った。
Siaが弱点を暴いた。
Crowが道を切り開いた。
Cainが命懸けでブレスを逸らした。
Garmが前を支え続けている。
だから。
届かせる。
全員が繋いだこの一撃を。
白炎核へ。
Rainは白炎核だけを見据えた。
◇
火炎龍が天を裂くように咆哮した。
轟――――ッ!!
世界が揺れた。
音ではない。
衝撃だった。
空気そのものが圧力へ変わり、戦場全体へ叩き付けられる。
白炎の羽根が嵐のように舞う。
溶岩が跳ね上がる。
砕けた岩盤が吹き飛ぶ。
熱風が暴風となって吹き荒れる。
誰もが反射的に身を低くした。
それほどの威圧だった。
だが。
火炎龍の黄金の瞳だけは動かない。
一直線。
Rainだけを見ていた。
白炎核へ最も近付いた存在。
最も危険な存在として。
火炎龍はRainを殺すと決めていた。
◇
火炎龍の筋肉が膨らむ。
次の瞬間だった。
巨大な前脚が消えた。
「っ!?」
Rainが目を見開く。
視界から消えるほどの速度。
轟音だけが遅れて響く。
熱風が頬を叩く。
その時には既に。
巨大な鉤爪が頭上へ迫っていた。
山が落ちてくる。
そんな錯覚を覚える。
巨大な影が視界を埋め尽くした。
避けられない。
そう思った瞬間。
「相手は俺だ!」
Garmが前へ出た。
腕は痺れている。
肩も痛い。
正直。
今すぐ倒れ込みたい。
だが。
前に立つのは自分の役目だ。
Rainが前へ出る。
Cainが斬る。
Crowが駆ける。
Novaが支える。
Siaが道を開く。
なら。
自分も立つ。
それだけだった。
《Guard Stance》
重心を落とす。
盾を前へ。
全身へ力を込める。
腕の筋肉が膨らむ。
歯を食いしばる。
そして。
激突した。
轟音。
衝撃。
盾越しに凄まじい力が流れ込む。
腕が軋む。
肩が悲鳴を上げる。
踏み締めた岩盤が砕ける。
足首まで地面へ沈む。
まるで山そのものが押し潰そうとしてくるようだった。
「ぐぅぅぅっ!!」
全身が悲鳴を上げる。
骨が軋む。
肺から空気が押し出される。
それでも。
Garmは退かなかった。
後ろには仲間がいる。
だから退けない。
《ヒール》
暖かな光が降り注ぐ。
Arcだった。
傷が塞がる。
軋んでいた筋肉が癒える。
《リジェネ》
緑色の光が身体を包む。
少しずつ。
だが確実に体力が戻っていく。
「まだ立てるな?」
Arcが言う。
Garmは笑った。
「誰に言ってる」
盾を握り直す。
腕は震えている。
それでも離さない。
若い連中が前で戦っている。
なら。
自分も立ち続けるだけだった。
《Taunt》
重盾を地面へ叩き付ける。
轟音。
砕けた岩が宙へ跳ね上がる。
衝撃波が戦場へ広がった。
「こっちを見ろぉぉぉ!!」
怒号が響く。
黄金の瞳が揺れる。
Rainから。
Garmへ。
敵意が移る。
挑発が通った。
「助かった!」
Rainが叫ぶ。
「貸し一つだ!」
「後で返せ!」
Garmが笑う。
その笑顔を見て。
Rainも笑った。
だが。
火炎龍も馬鹿じゃない。
前脚を止められた瞬間。
白炎の翼を大きく広げた。
嫌な予感が走る。
次の瞬間。
轟ッ!!
爆風。
熱風。
白炎が嵐のように吹き荒れた。
岩盤が吹き飛ぶ。
溶岩が巻き上がる。
視界が真っ白に染まる。
ただの羽ばたきじゃない。
災害だった。
◇
Rainの身体が浮いた。
「くっ!」
足が地面から離れる。
景色が回る。
核が遠ざかる。
せっかく縮めた距離が離れていく。
まずい。
このままでは。
《Shadow Shift》
影が揺れた。
次の瞬間。
Crowが隣にいた。
腕を掴む。
強引に引き寄せる。
Rainの身体が空中で立て直される。
地面へ着地する。
滑る。
踏み止まる。
ようやく体勢が戻った。
危険なのは分かっている。
近付き過ぎている。
白炎の熱だけで皮膚が焼けそうだ。
だが。
仲間が命を懸けている。
なら。
自分だけ安全な場所にいる訳にはいかなかった。
「Crow!」
「落ちるなよ」
短い言葉。
それだけだった。
だが。
その一言でRainの意識は戦場へ戻った。
「助かった!」
「まだ礼を言うのは早い」
Crowの視線は火炎龍から離れない。
◇
少し後方。
Siaは静かに弓を構えていた。
余計な言葉は要らない。
Rainが核へ向かう。
なら。
自分の仕事は一つ。
邪魔をさせない事だった。
矢を番える。
狙うのは火炎龍の瞳。
もしRainへ視線を向けるなら。
その瞬間に撃ち抜く。
Siaは無言のまま照準を合わせ続けた。
その時だった。
火炎龍の口元へ白炎が集まり始める。
再びブレス。
しかも近い。
近過ぎる。
白炎が渦を巻く。
空気が震える。
周囲の岩盤が赤く染まり始めた。
溶岩が泡立つ。
熱量だけで景色が変わる。
まだ放たれていない。
それなのに。
戦場全体が悲鳴を上げていた。
「まずい!」
Novaが叫ぶ。
「こんなの避けられる訳ないでしょ!」
文句を言いながらも杖を構える。
魔力を練る。
手は止めない。
Rainも理解した。
この距離で撃たれたら終わる。
避けられない。
防げない。
だが。
その前へ出る影があった。
Cainだった。
大斧を握る。
腕が重い。
全身が痛い。
さっきの《重閃》の反動も残っている。
それでも。
口元には笑みがあった。
目の前には火炎龍。
二十階層の支配者。
普通なら逃げ出している。
だが。
今は違う。
振り返れば仲間がいる。
Arcが道を見つけた。
Novaが隙を作った。
Siaが弱点を暴いた。
Crowが道を切り開いた。
Garmが受け止めた。
なら。
自分は前へ出るだけだった。
「一回できたんだ」
大斧を担ぐ。
火炎龍を見上げる。
「二回目もできるだろ」
《疾駆》
地面が爆ぜた。
砕けた岩が宙へ舞う。
景色が流れる。
火炎龍との距離が一瞬で消える。
熱風が頬を叩く。
白炎が視界を埋める。
それでも。
Cainは笑っていた。
怖くない訳じゃない。
だが。
仲間が繋いだ道がある。
なら。
前へ出るだけだった。
火炎龍の白炎が膨れ上がる。
ブレスが放たれる直前。
Cainは大斧を握り直した。
「Rain!」
Cainが叫ぶ。
「今度こそ決めろ!!」
Rainは白炎核を見る。
近い。
本当に近い。
あと少し。
あと少しで届く。
熱風が吹き荒れる。
白炎が舞う。
恐怖は消えない。
だが。
それ以上に。
勝ちたいと思った。
仲間が繋いだ道がある。
Arcが見つけた勝ち筋がある。
だから。
届かせる。
全員が託したこの一撃を。
白炎核へ。
Rainは双剣を握り直した。
そして。
地面を蹴る。
決着へ向かって。
Rainは地面を蹴った。
《飛燕》
身体が前へ飛び出す。
砕けた岩盤が弾ける。
熱風が後ろへ流れる。
白炎が視界を埋め尽くす。
近い。
白炎核が目の前に迫っていた。
だが。
火炎龍も理解していた。
危険なのはRainだ。
核へ届く存在。
自分を殺せる存在。
だから。
止める。
巨大な顎が開く。
白炎が渦を巻く。
空気が震える。
周囲の岩盤が赤く染まる。
溶岩が泡立つ。
熱量だけで景色が変わっていく。
ブレス。
しかも至近距離。
直撃すれば終わる。
Rainも理解した。
避けられない。
防げない。
だから。
前へ出るしかなかった。
「撃たせるか!」
Novaが叫ぶ。
《Fire Ball》
炎弾が飛ぶ。
一発。
二発。
三発。
連続。
火炎龍の顔面へ殺到する。
当然。
効かない。
その程度で倒せる相手じゃない。
だが。
目的は違う。
視線。
意識。
ほんの一瞬でいい。
Rainから逸らせればいい。
「こっち見なさいよ!」
《Flame Lance》
炎の槍が放たれる。
一直線。
黄金の瞳を狙う。
火炎龍が顔を動かした。
その瞬間。
《Break Shot》
弦が鳴る。
Siaの矢が熱風を切り裂いた。
一直線。
迷いなく。
黄金の瞳のすぐ横。
瞼を裂く。
次の瞬間。
火炎龍が絶叫した。
轟――――ッ!!
空気が爆ぜる。
衝撃波が戦場へ広がる。
砕けた岩盤が吹き飛ぶ。
溶岩が跳ね上がる。
白炎の羽根が嵐のように舞い上がった。
巨大な頭部が揺れる。
ほんの一瞬。
Rainへの意識が途切れる。
「今だ!」
Arcが叫んだ。
Rainはさらに前へ出た。
近い。
本当に近い。
白炎核が視界を埋める。
熱い。
いや。
そんな言葉では足りない。
皮膚が焼ける。
髪が焦げる。
防具が赤熱する。
息を吸うだけで肺が焼けそうだった。
それでも。
Rainは止まらない。
一歩。
また一歩。
灼熱の海を泳ぐように前へ進む。
ドクン。
白炎核が脈打つ。
その瞬間だった。
周囲の白炎が動いた。
生き物のように。
蛇のように。
何本もの白炎がRainへ襲い掛かる。
腕へ。
脚へ。
首へ。
獲物を捕らえるように伸びてくる。
「っ!」
Rainは双剣を振るう。
白炎が弾ける。
だが。
一つ斬れば二つ来る。
二つ斬れば三つ来る。
終わらない。
熱風が唸る。
空気が焼ける。
白炎が身体へ絡み付く。
防具が焦げる。
皮膚が焼ける。
激痛が走る。
《ヒール》
暖かな光が降り注ぐ。
Arcだった。
《リジェネ》
緑色の光が重なる。
焼かれる。
治る。
焼かれる。
治る。
無茶苦茶だった。
「後で絶対文句言うからね!」
Novaが叫ぶ。
Rainは笑った。
近い。
本当に近い。
白炎核が目の前にあった。
近くで見ると異常だった。
炎なのに形がある。
炎なのに脈打つ。
炎なのに。
心臓そのものだった。
ドクン。
脈打つ。
その度に白炎が火炎龍の全身へ流れていく。
翼へ。
筋肉へ。
傷口へ。
全身へ。
再生。
強化。
生命力。
全ての源。
間違いない。
ここだ。
ここを壊せば終わる。
Rainは双剣を握る。
腕が震える。
熱で力が入らない。
それでも。
関係ない。
ここまで来た。
全員が繋いだ。
だから。
届かせる。
《飛燕》
砕けた岩盤が弾け飛ぶ。
身体が前へ飛び出す。
景色が流れる。
熱風が後ろへ吹き飛ぶ。
白炎核が目の前へ迫る。
ドクン。
脈打つ。
ドクン。
さらに脈打つ。
まるで拒絶するように。
逃げろと叫ぶように。
だが。
もう遅い。
「届けぇぇぇぇぇ!!」
双剣が閃く。
白銀の軌跡が走る。
一撃。
火花が散る。
二撃。
白炎が弾ける。
三撃。
刃が核へ食い込む。
そして。
双剣が白炎核へ叩き込まれた。
一瞬。
世界が止まった。
そう錯覚した。
次の瞬間。
ピシッ。
小さな音が響く。
だが。
その音は戦場全員へ届いた。
白炎核。
火炎龍の心臓。
その表面へ。
一本の亀裂が走っていた。
次の瞬間。
火炎龍が絶叫する。
轟――――――――ッ!!!
今までとは違う。
怒りでもない。
威嚇でもない。
苦痛だった。
世界が震える。
岩盤が砕ける。
溶岩が噴き上がる。
白炎が天へ向かって暴走する。
空が白く染まった。
火炎龍は初めて痛みを感じていた。
初めて致命傷を受けていた。
だが。
亀裂の入った白炎核はさらに脈打つ。
ドクン――――ッ!!
嫌な予感が走る。
Arcの表情が変わった。
「……まずい」
その一言で全員が理解した。
何かが起きる。
しかも。
良い事じゃない。
ドクン――――ッ!!
白炎核が脈打つ。
亀裂が震える。
白炎が漏れ出す。
だが。
今までとは違う。
量が異常だった。
一筋。
二筋。
三筋。
そんなものじゃない。
まるで決壊したダムのように白炎が噴き出している。
火炎龍自身も制御できていない。
そんな暴走だった。
次の瞬間。
轟――――――ッ!!
白炎核が爆発した。
世界が白く染まる。
空が消える。
地面が消える。
視界の全てを白炎が埋め尽くした。
熱風が吹き荒れる。
岩盤が砕ける。
溶岩が吹き飛ぶ。
戦場そのものが悲鳴を上げた。
火山の噴火。
いや。
それ以上だった。
圧縮されていた莫大な熱量が一気に解放される。
白炎の柱が天へ向かって噴き上がった。
その中心にいたRainの身体が吹き飛ぶ。
衝撃。
轟音。
景色が回る。
空と地面が何度も入れ替わる。
肺から空気が抜ける。
息が出来ない。
全身が焼ける。
それでも。
双剣だけは離さなかった。
《ヒール》
《ハイヒール》
《リジェネ》
Arcの回復が飛ぶ。
暖かな光がRainを包む。
焼けた皮膚が再生する。
裂けた肉が繋がる。
だが。
追い付かない。
回復より先に焼かれる。
再生より先に削られる。
今まで経験した事のない消耗だった。
それでも。
Rainは白炎核から目を離さなかった。
亀裂はある。
確実に傷付いている。
だが。
まだ終わっていない。
まだ脈打っている。
なら。
立つしかない。
火炎龍が咆哮した。
轟――――――――ッ!!!
世界が震える。
空気が揺れる。
熱風が爆発する。
怒り。
苦痛。
憎悪。
全てが混ざった絶叫。
だが。
Arcは違和感に気付いていた。
怒りだけじゃない。
黄金の瞳が揺れている。
焦りだった。
白炎核へ亀裂が入った。
初めて。
この怪物は死を理解した。
今まで絶対強者だった存在が。
初めて追い詰められていた。
だから暴れる。
だから殺そうとする。
だから必死だった。
火炎龍の巨体がRainへ向く。
黄金の瞳が細められる。
狙いは一つ。
Rain。
核を傷付けた存在。
最優先排除対象。
巨大な鉤爪が持ち上がる。
白炎が口内へ集まる。
翼が大きく広がる。
全て。
Rainを殺すためだった。
「させるかよ」
Crowが笑った。
《Shadow Shift》
影が揺れる。
次の瞬間。
Crowは火炎龍の頭部へ現れていた。
近い。
熱い。
皮膚が焼ける。
呼吸すら苦しい。
それでも。
止まらない。
短剣を振るう。
一撃。
火花が散る。
二撃。
鱗が削れる。
三撃。
傷が広がる。
決定打じゃない。
致命傷でもない。
だが。
今必要なのは時間だった。
Rainが立ち上がるまで。
もう一度核へ届くまで。
その数秒を稼げれば十分だった。
「こっちだ化物!」
短剣を突き立てる。
黄金の瞳が動く。
Rainではない。
Crowを見る。
ほんの一瞬。
たったそれだけ。
だが。
その一瞬が命を繋ぐ。
その時だった。
巨大な鉤爪が振り下ろされる。
空が落ちてくる。
そんな錯覚。
巨大な影が戦場を覆った。
だが。
その前へ出る男がいた。
Garmだった。
腕は痺れている。
肩も痛い。
全身が悲鳴を上げている。
それでも。
前へ出る。
それが役目だからだ。
《Fortress》
重盾が白く輝く。
魔力が全身へ流れる。
筋肉が強化される。
骨が軋む。
それでも構わない。
Rainが前へ出ている。
若い連中が命を懸けている。
なら。
自分も立つ。
それだけだった。
「俺がいる限り!」
盾を前へ出す。
「好きにはさせねぇ!!」
激突。
轟音。
衝撃。
大地が陥没した。
踏み締めた岩盤が砕ける。
足首まで地面へ沈む。
腕が軋む。
骨が悲鳴を上げる。
肺から空気が押し出される。
重い。
今まで受けたどんな攻撃より重い。
まるで山そのものが押し潰そうとしてくるようだった。
「ぐぅぅぅっ!!」
それでも。
Garmは退かなかった。
後ろには仲間がいる。
だから退けない。
Novaも止まらない。
汗が流れる。
呼吸が荒い。
魔力も残り少ない。
それでも杖を下ろさない。
「だからボスは嫌いなのよ!!」
《Fire Ball》
《Flame Lance》
炎弾が飛ぶ。
炎槍が走る。
連続。
連続。
連続。
爆発が戦場を埋め尽くす。
Siaも弓を引く。
余計な言葉は要らない。
必要なのは矢だけだった。
《Break Shot》
弦が鳴る。
矢が飛ぶ。
傷口へ突き刺さる。
白炎核周辺の鱗が砕ける。
少しずつ。
本当に少しずつ。
だが。
確実に道が広がっていく。
全員が戦っている。
全員が繋いでいる。
全員がRainへ託している。
Arcはそれを見ていた。
疲労。
消耗。
痛み。
全部見えている。
だが。
誰も折れていない。
だから。
勝てる。
Arcは白炎核を見つめる。
一秒。
二秒。
三秒。
白炎の流れを追う。
再生速度を見る。
傷の閉じ方を見る。
そして。
見つけた。
右側だけ違う。
再生が遅い。
白炎供給が追い付いていない。
核そのものが悲鳴を上げている。
そこだ。
勝ち筋。
「Rain!!」
Arcの声が響く。
「右だ!!」
「亀裂の右側!」
「そこが一番薄い!」
Rainの視線が動く。
見える。
確かに。
亀裂の右側だけ白炎が薄い。
再生が追い付いていない。
そこだ。
仲間が繋いだ道。
Arcが見つけた勝ち筋。
後は。
届かせるだけだった。
Rainは双剣を握り直す。
熱い。
痛い。
怖い。
それでも。
前へ出る。
振り返れば仲間がいる。
だから。
負ける気はしなかった。
白炎が荒れ狂う。
火炎龍が咆哮する。
世界が揺れる。
それでも。
Rainは前を向いた。
「終わらせる」
小さく呟く。
《飛燕》
砕けた岩盤が弾け飛ぶ。
身体が前へ飛び出す。
白炎を切り裂く。
決着の一撃へ向かって。
第五十三話を読んでいただきありがとうございます!
ついに白炎核へ亀裂が入りました。
ですが、追い詰められた火炎龍は暴走状態へ。
そしてAegisも全員限界です。
次回、二十階層ボス戦決着。
最後の一撃が届くのか。
ぜひお楽しみに!
次回 第五十四話「討竜」




