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世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
第四章 白炎竜討伐戦

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第49話 火炎龍

#第49話 火炎龍


 翌朝。


 Aegisは静かに準備を進めていた。


 簡易テントは既に片付けられている。


 装備確認。


 武器確認。


 消耗品確認。


 誰も無駄話はしない。


 空気が違った。


 今日の相手は火炎龍。


 二十階層の支配者。


 今までの敵とは格が違う。


「寝れたか?」


 Cainが聞く。


 Rainは欠伸をした。


「微妙」


「お前いつもそうだろ」


「今日は特に」


 Rainが苦笑する。


 火炎龍。


 その名前だけで緊張する。


 攻略会議で聞いた情報は理解している。


 だが。


 理解している事と実際に戦う事は別だった。


「私はちゃんと寝たわ」


 Novaが杖を確認しながら言う。


「嘘つけ」


 Crowが即座に突っ込む。


「夜中まで魔法の確認してただろ」


「……少しだけ」


「三時間くらいな」


「少しよ」


 全員が苦笑した。


 緊張しているのはNovaも同じだった。


「Sia」


 Arcが呼ぶ。


「周辺反応は?」


《Arrow Vision》


 数秒。


 Siaは目を閉じた。


 そして。


「敵無し」


「火炎龍は?」


「見えない」


 全員が頷く。


 予想通りだった。


 ボス部屋の内部。


 入るまで分からない。


 Arcは黒い門を見る。


 二十階層へのゲート。


 ゲーム時代。


 何百回も通った場所。


 だが。


 今は違う。


 白炎。


 白炎核。


 Captainの異常な知性。


 ゲーム知識だけでは説明できない要素が増えている。


 だから。


 油断はしない。


「行くぞ」


 Arcが言った。


 全員が立ち上がる。


 誰も迷わない。


 ここまで来た。


 なら進むだけだった。


 その頃。


 探索者協会。


 監視室。


 大型モニターにはAegisの映像が映し出されていた。


「十九階層到達を確認」


「二十階層ゲート前です」


 職員の報告。


 室内が静まり返る。


「本当に行くのか」


 誰かが呟いた。


 答えは無い。


 モニターの中。


 Aegisは既に門の前へ立っていた。


 探索者酒場《Black Hammer》。


 昼だというのに満席だった。


 全員が大型モニターを見ている。


「おいおい」


「マジで二十階層か」


「国内初だぞ」


 ベテラン探索者達ですら落ち着かない。


 十五階層。


 その時点で別格だった。


 だが。


 二十階層はさらに先。


 誰も踏み込んだ事のない領域だった。


「勝てると思うか?」


 若い探索者が聞く。


 向かいの男が酒を飲む。


「分からん」


「でも」


 視線はモニターのまま。


「Aegis以外なら無理だ」


 別の酒場。


 別の街。


 そこでも同じ映像が流れていた。


「Rainだ」


「また前出る気だろあいつ」


「絶対そうだな」


「Arcが止めても行くだろ」


 笑いが起きる。


 既にAegisは有名だった。


『始まるぞ』


『二十階層』


『火炎龍』


『Rain頑張れ』


『Arcなら何とかする』


『いや今回はマジでヤバそう』


『日本最前線だな』


 配信コメントが流れ続ける。


 日本中の探索者達が見ていた。


 酒場。


 休憩所。


 協会。


 スマホの配信画面。


 誰もが知っている。


 今から始まるのは。


 日本で初めての。


 二十階層攻略戦だった。


 巨大な門の前へ並ぶ。


 先頭にGarm。


 その隣にCain。


 Rain。


 Crow。


 Nova。


 Sia。


 そして最後尾にArc。


 Aegis七人の攻略組が門を見上げた。


 門へ近付く。


 その瞬間。


 低い振動が伝わった。


 ゴォン……


 地面が震える。


 重い音が響く。


 巨大な門が動き始めた。


「自動か」


 Cainが笑う。


 誰も触れていない。


 それなのに。


 門はゆっくり開いていく。


 隙間が生まれる。


 そこから。


 熱風が吹き出した。


 全員が顔をしかめる。


 今までの階層の熱気とは明らかに違った。


 十五階層のHeatですら比較にならない。


 息を吸うだけで肺が焼けるような錯覚。


 皮膚を刺す熱。


 空気そのものが炎へ変わったようだった。


「熱っ……」


 Rainが思わず呟く。


 Arcも僅かに眉をひそめた。


 十五階層。


 十九階層。


 その全てを越えている。


 火炎龍。


 階層ボスの格を熱だけで理解させられた。


 門が完全に開く。


 その先には。


 巨大な空間が広がっていた。


 天井は見えない。


 壁も遠い。


 灼熱の岩盤。


 溶岩の川。


 燃え続ける巨大な柱。


 まるで火山の内部だった。


「広いな」


 Crowが呟く。


 Arcも頷いた。


 ゲーム時代と同じ。


 いや。


 それ以上だった。


 現実になった事で。


 スケールが段違いになっている。


 Aegisは慎重に内部へ入る。


 一歩。


 また一歩。


 周囲を警戒する。


 だが。


 見えない。


 火炎龍の姿が無い。


「居ない?」


 Rainが呟く。


 その瞬間だった。


 ゴォォォォォォォォォッ!!


 咆哮。


 爆音。


 空間全体が震える。


 全員が反射的に空を見上げた。


 そこに居た。


 巨大だった。


 圧倒的だった。


 赤い鱗。


 黄金の瞳。


 山のような巨体。


 そして。


 口元から漏れ出す灼熱の炎。


「……っ」


 Rainが言葉を失う。


 誰も喋れなかった。


 攻略会議で聞いていた。


 想像もしていた。


 だが。


 実際に見ると違う。


 大きい。


 そんな言葉では足りなかった。


 火炎龍が翼を広げる。


 轟音。


 熱風。


 空気が揺れる。


 翼だけで数十メートルある。


 黄金の瞳が。


 Aegisを見下ろしていた。


「来るぞ」


 Arcが呟く。


 次の瞬間。


 火炎龍が飛んだ。


 爆風。


 衝撃。


 巨体とは思えない速度。


「速っ!?」


 Rainが叫ぶ。


 火炎龍は一瞬で上空へ到達していた。


 巨大な影が戦場を覆う。


 地上からでは届かない。


 完全な制空権。


 攻略会議通りだった。


「想定通りだ」


 Arcが言う。


「Rain!」


「あいよ!」


《ヘイスト》


 光がRainを包む。


 身体が軽くなる。


 反応速度が上がる。


「行ける!」


《Fly》


 Rainの身体が浮かび上がる。


 熱風を切り裂きながら上空へ飛び出した。


「Garm」


「おう!」


《プロテクション》


 光が重盾を包む。


 さらに。


《バリア》


 透明な膜が展開される。


 火炎龍の攻撃を受ける準備は整っていた。


 Novaも魔力を練る。


「いつでも行けるわ」


《フレア》


 炎弾が上空へ放たれる。


 続いて。


《マグマボルト》


 灼熱の槍が飛ぶ。


 だが。


 火炎龍の翼が動く。


 僅かな動作。


 それだけで風圧が生まれる。


 炎弾が流される。


 槍の軌道も逸れる。


「避けた!?」


「違う」


 Arcが即答する。


「あいつは風圧で逸らした」


 Novaの顔が歪む。


 想定以上だった。


 その時。


「右!」


 Siaが叫ぶ。


 全員が反応する。


 直後。


 火炎龍が大きく旋回した。


「来る!」


 火炎龍が急降下する。


 轟音。


 巨大な爪。


 Garmの盾ほどもある鉤爪が迫った。


「Garm!」


「任せろ!」


《Guard Stance》


 重心を落とす。


 盾を前へ出す。


 巨大な城壁のような構え。


 激突。


 衝撃。


 大地が砕けた。


 Garmの身体が数メートル押し込まれる。


 だが。


 止めた。


「ははっ!」


 Garmが笑う。


「重いな!」


 火炎龍の爪が盾を押し込む。


 だが。


 止まった。


 その一瞬。


 巨体が地上近くまで降りる。


「今だ!」


 Arcが叫ぶ。


 Cainが飛び出した。


《疾駆》


 地面を蹴る。


 一瞬でGarmの横へ到達する。


《重閃》


 全身の体重を乗せる。


 大斧が唸る。


 轟音と共に火炎龍の爪へ激突した。


 衝撃で爪の軌道が逸れる。


 Garmへ掛かっていた圧力が消えた。


「助かる!」


 Garmが叫ぶ。


「気にすんな!」


 反対側。


 Crowも動く。


《Shadow Shift》


 影が揺れる。


 次の瞬間。


 Crowの姿が火炎龍の視界から消えた。


 現れたのは翼の裏側。


 短剣が翼の付け根を斬り裂く。


 浅い。


 だが。


 確かに手応えはあった。


「通るな」


 そして。


 Rainが飛ぶ。


 ヘイストによる加速。


 火炎龍の死角へ回り込む。


「届く!」


《飛燕》


 一歩。


 いや。


 二歩。


 Rainの姿が掻き消える。


 加速した身体が翼の横を駆け抜けた。


 双剣が閃く。


 赤い鱗が砕け散る。


 翼の表面に長い傷が刻まれた。


 初めて。


 火炎龍の翼へ有効打が入る。


 探索者酒場。


 大型モニター前。


「入った!」


「Rainだ!」


「いやCainも通してる!」


「Crowもだ!」


 歓声が上がる。


『うおおおお!』


『当たった!』


『Rain速すぎる!』


『翼狙ってるぞ!』


『Aegisやれる!』


 コメントが流れる。


 だが。


 火炎龍は止まらない。


 黄金の瞳がRainを捉える。


 次の瞬間。


 赤い炎が漏れ出した。


「Rain!」


 Arcが叫ぶ。


 危険信号。


 経験が告げていた。


 ブレス。


 来る。


 火炎龍が口を開く。


 灼熱の炎が集まる。


 空間が歪む。


 熱量が跳ね上がる。


 誰もが理解した。


 ブレスだ。


「全員散開!」


 Arcが叫ぶ。


 Rainも即座に離脱する。


 その直後。


 火炎龍が咆哮した。


 灼熱のブレスが解き放たれる。


 轟音。


 爆発。


 赤い炎が戦場を飲み込んだ。


 Rainは空中で身体を捻る。


 翼のように魔力を噴かせる。


 身体を強引に横へ流す。


 さらに。


《ヘイスト》


 加速した身体が熱風を切り裂いた。


 紙一重。


 ブレスが横を通り過ぎる。


「熱っ!」


 掠っただけだった。


 それでも腕の防具が赤く焼ける。


 皮膚が裂ける。


 焼けるような痛み。


 直撃したら終わり。


 一瞬で理解した。


「Rain」


 Arcの声が飛ぶ。


《ヒール》


 暖かな光がRainを包む。


 焼けた皮膚が塞がっていく。


 痛みが消える。


「助かる!」


「次は掠るな」


「善処します」


 地上。


 Garmも動く。


「伏せろ!」


《フォートレス》


 巨大な盾を地面へ突き立てる。


 重盾が壁になる。


 直後。


 炎の奔流が通過した。


 爆風。


 熱風。


 衝撃。


 大地が焼ける。


 だが。


 Aegisは無事だった。


 ブレスが消える。


 そこには。


 巨大な焼け跡が残っていた。


「冗談だろ……」


 Crowが呟く。


 地面が溶けている。


 岩盤が赤く光っていた。


「直撃は絶対に避けろ」


 Arcが言う。


「今見ただろ」


 誰も反論しない。


 あんなものを受ければ終わる。



 火炎龍が再び上昇する。


 高度を取る。


 そして。


 旋回。


 黄金の瞳がRainを捉える。


「来る!」


 Siaが叫ぶ。


 火炎龍が突撃する。


 速い。


 巨大な身体とは思えない。


 Rainも飛ぶ。


 空中。


 高速機動。


 人間と龍。


 二つの影が交差する。


 爪が振り抜かれる。


 Rainは身を沈める。


 回避。


 尾が迫る。


 身体を捻る。


 回避。


 炎が噴き出す。


 急上昇。


 回避。


 避け続ける。


「Rainから離せ!」


 Arcが叫ぶ。



 Garmが前へ出る。


 重盾を地面へ叩きつけた。


《Taunt》


 重盾と地面が激突する。


 轟音。


 衝撃。


 挑発の魔力が周囲へ広がった。


「こっちだぁぁぁぁ!!」


 怒号が響く。


 黄金の瞳が動く。


 Rainから。


 Garmへ。


「よし」


 Arcが呟く。


 火炎龍が咆哮する。


 次の瞬間。


 巨体が急降下した。


 狙いはGarmだった。



「来い!」


 Garmが笑う。


《Guard Stance》


 重心を落とす。


 盾を前へ出す。


 巨大な城壁のような構え。


 激突。


 衝撃。


 地面が割れる。


 だが。


 受け止める。


「Cain!」


「おう!」


《疾駆》


 地面を蹴る。


 一瞬で間合いを詰める。


《重閃》


 全身の体重を乗せる。


 大斧が唸る。


 轟音と共に火炎龍の爪へ激突した。


 衝撃で軌道が逸れる。


「Crow!」


「了解」


《Shadow Shift》


 影が揺れる。


 次の瞬間。


 Crowの姿が火炎龍の視界から消えた。


 現れたのは翼の裏側。


 短剣が翼の付け根を斬り裂く。



「今だ!」


 Arcの声。


 Rainが反応する。


《ヘイスト》


 光が身体を押し出す。


 加速。


 火炎龍の死角へ潜り込む。


《飛燕》


 一歩。


 いや。


 二歩。


 Rainの姿が掻き消える。


 加速した身体が翼の横を駆け抜けた。


 双剣が閃く。


 赤い鱗が砕け散る。


 翼を斬る。


 さらに。


 もう一撃。


 深く。


 鋭く。


 今までで最も深い傷が刻まれた。



 火炎龍が咆哮する。


 怒り。


 苦痛。


 その両方だった。



 探索者酒場。


 大型モニター前。


「入った!」


「また翼だ!」


「削れてる!」


「行けるぞ!」


 歓声が上がる。


『うおおおお!』


『Rainやべぇ!』


『翼壊せるぞ!』


『Aegisいけぇ!』


 コメントが流れる。



 だが。


 Arcは笑わない。


 まだ足りない。


 翼は健在。


 火炎龍も健在。


 勝負はこれからだった。



 その時。


 火炎龍が大きく翼を広げる。


 空気が震える。


 熱量が上昇する。


「……?」


 Arcが眉をひそめた。


 何かが違う。


 次の瞬間。


 火炎龍が空高く舞い上がった。


 今までより。


 さらに高く。


「Arc!」


 Siaが叫ぶ。


「上!」


 全員が見上げる。


 火炎龍の口元。


 そこへ。


 膨大な炎が集まり始めていた。


「全員警戒!」


 Arcが叫ぶ。


 嫌な予感がした。


 火炎龍が咆哮する。


 戦場全体へ響き渡るほどの咆哮を。


 そして。


 巨大な炎球が生み出された。


 火炎龍の頭部を超える大きさ。


「……嘘だろ」


 Cainが呟く。


 誰も笑わない。


 あれが落ちれば。


 戦場そのものが消える。


 火炎龍が翼を広げた。


 巨大な炎球がゆっくりと動き始める。

第四十九話を読んでいただきありがとうございます!


ついに二十階層ボス・火炎龍との戦いが始まりました。


空を支配する強敵に対し、Aegisも総力戦で挑みます。


そして最後に現れた巨大炎球。


次回はいよいよ火炎龍の大技への対応と、翼破壊へ向けた本格的な攻防です。


面白かったらブックマークや評価、感想をいただけると励みになります!


それでは次回もよろしくお願いします!

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