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世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
第四章 白炎竜討伐戦

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第45話 未知への一歩

# 第45話 未知への一歩


 翌朝。


 探索者協会。


 第一会議室。


 Aegisの面々は長机を囲んでいた。


 十六階層攻略開始日。


 全員の装備は整っている。


 補給も完了。


 準備不足は無い。


 あとは行くだけだった。



「最終確認を行う」


 Arcが資料を開いた。


 全員の視線が集まる。


「十階層ボスについては問題ない」


 Lunaがタブレットを操作する。


 討伐記録が表示された。


「三日前」


「ギルド《Vanguard》が討伐済み」


 Rainが頷く。


「じゃあ十階層は素通り?」


「ああ」


 Arcが答えた。


「何も無ければそのまま通過出来る」


 十階層ボス。


 討伐後は一定期間再出現しない。


 だから。


 今なら最短で進める。


「なら楽勝じゃん」


 Rainが笑った。


「楽観はするな」


 Arcが即答する。


 Rainが首を傾げる。


「ボスいないんだろ?」


「ああ」


 Arcは頷く。


「だが」


 資料へ視線を落とす。


「十五階層は攻略済みだ」


「それでも」


「未だに十四階層を突破出来ていないギルドが大半だ」


 空気が変わった。


 Heat。


 灼熱環境。


 焼ける空気。


 呼吸するだけで体力を奪われる熱気。


 敵より先に環境が牙を剥く。


「敵が強いだけじゃない」


 Arcが言う。


「環境そのものが探索者を削る」


「だから突破出来ない」


 Novaも頷いた。


 実際。


 灼熱巨人と戦う前に撤退したギルドも少なくない。


「俺達が突破出来たのは」


 Crowが言う。


「ゲーム知識があったからだな」


「ああ」


 Arcは頷く。


 Heat耐性。


 装備。


 補給。


 対策。


 知らなければ辿り着けなかった。


「だから油断しない」


 Arcは資料を閉じた。



「問題は十五階層だ」


 再び空気が引き締まる。


 全員が理解していた。


 十六階層より前に。


 もう一つ問題がある。


「十五階層中ボス」


 Lunaが言った。


「再出現まで残り六日」


 沈黙。


「思ったより短いな」


 Novaが呟く。


 Arcが頷いた。


「ああ」


「だから急ぐ」


 机へ地図を広げる。


「目標は二つ」


 全員が前を見る。


「十六階層突破」


「そして二十三階層到達」


 Rainが口を開く。


「安全階層か」


「ああ」


 二十三階層。


 現時点で確認されている最初の安全階層。


 そこへ到達出来れば。


 一つの大きな区切りになる。



「二十階層ボスは?」


 Cainが聞く。


「倒す」


 Arcは即答した。


 Cainが笑う。


「だよな」


「だが」


 Arcは続ける。


「勝てる状況で倒す」


 Rainが首を傾げた。


「当たり前じゃん」


「探索者はそれが出来ない」


 Arcが言う。


 少し静かになる。


「勝てるかどうかじゃない」


「今なら勝てると思って挑む」


「それで死ぬ」


 誰も反論しなかった。


 実際。


 そういう探索者は多い。


「二十階層到達時点で消耗が大きい場合」


「十五階層中ボス再出現が近い場合」


「その時は撤退する」


 Novaが頷く。


「無理に挑まないって事か」


「ああ」


 Arcは答えた。


「目的は二十階層ボス討伐じゃない」


「二十三階層到達だ」


 Garmも腕を組む。


「安全階層確保が最優先か」


「そういう事だ」


 Crowも頷いた。


 未知領域。


 情報不足。


 何が起きるか分からない。


 なら。


 撤退も攻略の一部だった。



「じゃあ逆に聞く」


 Cainが言った。


「間に合わなかったら?」


 全員がArcを見る。


 答えは決まっていた。


「撤退する」


 即答だった。


「十五階層へ戻る」


「再出現した中ボスだけ討伐」


「その後帰還」


「次のクールタイムまでに再挑戦する」


 Novaが頷く。


「二十階層ボス挑戦も延期か」


「ああ」


 Arcが答えた。


 Garmも頷く。


「連戦は厳しいな」


「体力が持たん」


「私も嫌」


 Rainが即答する。


 Mistも頷いた。


「絶対無理」


 少しだけ笑いが起きた。


 だが。


 全員本気だった。


 十五階層中ボス。


 二十階層ボス。


 短期間で両方を相手にするのは危険過ぎる。


「だから六日だ」


 Arcが言う。


「六日以内に二十三階層へ到達する」


 短い沈黙。


 そして。


 Cainが笑った。


「出来るだろ」


「出来るな」


 Rainも笑う。


 Crowが溜息を吐いた。


「お前ら本当に前向きだな」


「悪いか?」


「別に」


 少しだけ笑いが起きる。


 緊張が和らいだ。



 その時。


 会議室の扉が開いた。


 黒崎だった。


 横浜支部長。


 全員の視線が集まる。


 黒崎はAegisを見回した。


「準備は終わったか?」


 Arcが立ち上がる。


「ああ」


 短く答えた。


 黒崎は小さく頷く。


「なら行け」


 静かな声だった。


「日本最前線」


「お前らの仕事だ」


 会議室の空気が変わる。


 十六階層。


 未知領域。


 誰も踏み込んだことのない世界。


 その入口が。


 すぐそこまで来ていた。


 十分後。


 ダンジョン入口。


 巨大なゲートが静かに存在している。


 初めて見た時は圧倒された。


 だが。


 今は違う。


 恐怖よりも。


 攻略対象として見ている。


「行くか」


 Cainが言う。


「ああ」


 Arcが頷いた。


 全員がゲートへ向かう。


 そして。


 光の中へ踏み込んだ。



 一階層。


 二階層。


 三階層。


 攻略済み階層。


 移動は速い。


 無駄な戦闘は避ける。


 必要最低限だけ倒す。


 最優先は到達だ。


 十五階層中ボスの再出現まで残り六日。


 時間は有限だった。


 既に攻略ルートは確立されている。


 足を止める理由は無い。


 Aegisは最短距離で進み続けた。


 十階層。


 ボス部屋前。


 扉は開いたままだった。


 討伐済みの証拠。


 中は空。


 巨大な戦闘跡だけが残っている。


「本当に倒されてるな」


 Rainが中を覗く。


「報告通りだ」


 Lunaの情報に間違いは無かった。


「助かるな」


 Novaが言う。


 もし再出現していたら。


 ここで大きく時間を使う事になる。


「進むぞ」


 Arcが言った。


 全員が頷く。


 十一階層。


 十二階層。


 十三階層。


 そして。


 十四階層。


 Heatが少しずつ強くなる。


 空気が重い。


 息苦しい。


 だが。


 以前とは違う。


「楽だな」


 Rainが言う。


「対策済みだからな」


 Crowが答える。


 Heat耐性装備。


 冷却ポーション。


 補給体制。


 全て揃っている。


 以前のAegisとは違う。


 十五階層を突破した事で。


 さらに対応力は上がっていた。


 周囲を見渡す。


 他の探索者の姿は無い。


 ここまで来る者は少ない。


 Heat環境だけで撤退するギルドも多い。


 Arcは改めて実感する。


 十五階層は。


 ボスに辿り着く事すら難しい階層だった。


 そして。


 十五階層。


 灼熱地帯。


 赤い大地。


 溶岩。


 歪む空気。


 以前なら。


 見ただけで嫌になった景色。


 だが。


 今は違う。


「懐かしいな」


 Rainが言う。


「そんなに前じゃないだろ」


 Novaが呆れた。


「体感だよ」


 Rainは笑う。


 Aegisは進む。


 Heatは強い。


 だが耐えられる。


 環境への恐怖は消えていた。


 十五階層を突破した経験。


 Heatへの対策。


 それが大きかった。


 その時。


 Arcが足を止めた。


 全員が止まる。


「どうした?」


 Cainが聞く。


 Arcは地面を見る。


 黒い爪痕。


 Heat Wolfではない。


 灼熱巨人でもない。


 見たことが無い。


「初めて見るな」


 Crowが呟く。


 Arcはしゃがみ込む。


 大きい。


 かなり大きい。


 少なくとも人間サイズではない。


 そして。


 新しい。


「最近付いた跡だ」


 Siaも近付く。


「何のモンスター?」


「分からない」


 Arcが答えた。


 その瞬間。


 空気が変わる。


 全員が理解した。


 Arcが。


 分からないと言った。


 沈黙。


 Heatだけが周囲を包む。


 Arcは爪痕を見つめる。


 ゲーム知識に無い。


 少なくとも。


 記憶しているモンスターではない。


 十五階層。


 攻略済みのはずの場所。


 なのに。


 知らない痕跡がある。


 嫌な予感がした。


 十六階層だけではない。


 既に変化は始まっているのかもしれない。


「どうする?」


 Garmが聞く。


 Arcは立ち上がった。


「警戒レベルを上げる」


 短く答える。


「十六階層へ行く」


「だが」


 一度だけ間を置く。


「予定通りにはいかないかもしれない」


 誰も反論しなかった。


 前方。


 十五階層最奥。


 十六階層へ続く通路が見えてくる。


 その先は。


 誰も知らない世界。


 未知領域。


 世界初到達。


 Aegisは足を止めない。


 だが。


 全員が感じていた。


 十六階層へ入る前から。


 何かが変わり始めている。


 十五階層最奥。


 灼熱地帯の終点。


 Aegisは足を止めていた。


 目の前には巨大な石門。


 十六階層へ続く入口。


 世界初到達。


 未知領域。


 自然と空気が張り詰める。


「来たな」


 Cainが笑った。


「来たね」


 Rainも笑う。


 だが。


 声は少しだけ硬い。


 緊張しているのだ。


 全員同じだった。


 Arcは石門を見る。


 ゲームでは知っている。


 だが。


 現実は違う。


 十五階層がそれを証明した。


 だから。


 思い込みは捨てる。


 知識は使う。


 だが。


 知識に頼らない。


「行くぞ」


 短く言った。


 全員が頷く。


 そして。


 石門を越えた。


 十六階層。


 到達。


 その瞬間だった。


 Heatは消えなかった。


 むしろ。


 少し強くなった。


「暑っ……」


 Rainが顔をしかめる。


「まだ熱階層か」


 Novaも周囲を見回した。


 だが。


 景色は変わっていた。


 そこは街だった。


 巨大な街。


 崩れた建物。


 砕けた石畳。


 倒壊した塔。


 赤く光る結晶。


 溶岩が流れる水路。


 焼け焦げた壁。


 街全体が廃墟になっている。


「街……?」


 Rainが呟く。


「街だな」


 Crowも周囲を見る。


 人の気配は無い。


 静かだった。


 Heatだけが支配している。


 Arcは目を細めた。


 ゲームにも存在した。


 だが。


 違う。


 大きさが違う。


 建物の数が違う。


 まるで別物だった。


「ゲームと同じか?」


 Cainが聞く。


「違う」


 Arcは即答した。


 全員の表情が引き締まる。


「似ているだけだ」


「別物と思え」


 誰も反論しなかった。


「索敵する」


 Siaが前へ出る。


《Arrow Vision》


 周囲を確認。


 建物の上。


 路地裏。


 崩壊した塔。


 視界を広げる。


 そして。


「反応あり」


 全員が武器へ手を伸ばした。


「数は?」


 Arcが聞く。


「東から八体」


 Siaが答える。


「接近中」


 数秒後。


 路地裏から現れた。


 人影。


 いや。


 違う。


 骨だった。


 全身が黒く焼けている。


 眼窩には赤い炎。


 手には剣。


 鎧の残骸。


 燃え続ける骸骨。


「スケルトンか」


 Cainが大斧を構える。


「初見だな」


 Crowが言う。


「ゲームにはいた」


 Arcが答える。


「だが」


 骨を見る。


「こんなのじゃなかった」


 Flame Skeleton。


 骨の隙間から炎が漏れている。


 ゆっくり。


 だが確実に近付いてくる。


 そして。


 一斉に走った。


「来るぞ!」


 Arcが叫ぶ。


「Garm!」


「おうよ!」


 Garmが前へ出る。


《War Cry》


 咆哮が灼熱廃都へ響いた。


 Flame Skeleton達の視線が一斉にGarmへ向く。


 同時に。


 Arcが杖を構える。


《プロテクション》


 淡い光がGarmを包む。


 続けて。


《ヘイスト》


 Rain。


 Cain。


 二人の身体が軽くなる。


 さらに。


《Fly》


 Arc自身へ発動。


 身体がゆっくり浮かび上がる。


 一メートル。


 二メートル。


 戦場全体が見える。


 初実戦。


 だが。


 視界は良好だった。


「Crow!」


 上空から叫ぶ。


「北から四体!」


「そっちのヘイト取れ!」


「了解」


 Crowが即座に方向転換する。


 崩れた建物の影。


 別ルートから接近していたFlame Skeletonへ走る。


「Sia!」


「援護!」


「了解」


 Siaが弓を引く。


 狙うのはCrowへ向かう個体。


 いつもの連携だった。


「Nova!」


 Arcが叫ぶ。


「正面!」


「了解!」


 Novaが前へ出る。


 杖を掲げた。


《Lightning》


 青白い雷光が走る。


 轟音。


 雷撃がFlame Skeletonの群れを貫いた。


 骨が弾ける。


 さらに。


 雷撃を受けた個体が一斉に硬直した。


「今だ!」


「行く!」


 先頭。


 剣持ち。


 Cainが迎え撃つ。


《瞬撃》


 大斧が振り抜かれる。


 轟音。


 Flame Skeletonが砕け散った。


 だが。


 その後ろ。


 槍持ちが突っ込んでくる。


「遅い!」


 Rainが飛び出した。


《飛燕》


 二連撃。


 骨が崩れ落ちる。


 建物の上。


 弓兵型。


 炎の矢が放たれる。


「右上!」


 Arcが叫ぶ。


 Siaが即座に反応した。


《Break Shot》


 矢が一直線に飛ぶ。


 Flame Skeletonの胸骨へ直撃。


 衝撃。


 体勢を崩した弓兵が屋上から転落した。


「ナイス」


「当然」


 Siaは短く答えた。



 北側。


 Crowが四体を引き付けていた。


 剣。


 槍。


 盾。


 弓。


 それぞれ武器は違う。


 だが。


 Crowの動きには追い付けない。


《Shadow Shift》


 一瞬で背後へ。


 短剣が閃く。


 骨が砕ける。


「後ろ!」


 Arcが叫ぶ。


 同時に。


 矢が飛んだ。


 Siaの援護。


 Crowへ迫っていた弓兵の頭部を撃ち抜く。


「助かる」


「仕事」


 短いやり取りだった。



 最後の一体。


 Novaが杖を向ける。


《フレア》


 炎弾。


 直撃。


 Flame Skeletonは爆散した。


 静寂。


 戦闘終了。



 時間にして一分も掛かっていない。


 圧勝だった。


「弱いな」


 Cainが言う。


「十六階層にしてはな」


 Crowも頷いた。


 だが。


 Arcは違う場所を見ていた。


 地面。


 砕けた骨。


 焼けた鎧。


 剣。


 槍。


 弓。


 どれも人間の装備だった。


「どうした?」


 Garmが聞く。


 Arcはしゃがみ込む。


 剣を拾う。


 Heat Wolfではない。


 灼熱巨人でもない。


 明らかに違う。


 まるで。


 兵士だった。


「この街」


 Arcが呟く。


 全員が見る。


「昔」


「人が住んでいたのかもしれない」


 沈黙。


 Rainが周囲を見渡した。


 崩れた家。


 倒れた塔。


 石畳。


 確かに。


 街だった。


 その時。


 Siaが再び顔を上げた。


「反応」


 全員が振り向く。


「またか?」


 Cainが笑う。


 だが。


 Siaの表情は硬かった。


「違う」


 短く言う。


「大きい」


 空気が変わった。


 街の中心部。


 崩れた塔の向こう。


 巨大な影が立っていた。


 普通のFlame Skeletonではない。


 赤黒い鎧。


 巨大な剣。


 燃え上がる炎。


 明らかな上位個体。


 それは静かにこちらを見ていた。


 Arcはそれを見る。


 記憶を探る。


 だが。


 知らない。


 見たことがない。


 ゲーム知識にも存在しない。


 十六階層。


 灼熱廃都。


 そして。


 そこに立つ巨大な骸骨。


 Aegisはまだ知らない。


 それが。


 この階層を率いる指揮官級個体。



第四十五話を読んでいただきありがとうございます。


ついに十六階層へ到達しました。


ここからは火炎龍が支配する二十階層へ向けて攻略が進んでいきます。


Arcのゲーム知識が通じない要素も増えていく予定です。


面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!


次回もよろしくお願いします。

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