表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
三章 灼熱の境界域

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/112

第40話 総力戦

# 第40話 総力戦


 灼熱巨人が咆哮した。


 空洞全体が震える。


 熱風が吹き荒れる。


 赤熱した光が巨体の亀裂から溢れ出していた。


 第二形態。


 だが。


 もう違う。


 勝ち筋は見えている。


「行くぞ」


 Arcが言った。


 短い。


 だが。


 全員が動いた。


 Arcは灼熱巨人を見ている。


 肩。


 腕。


 脚。


 発光。


 熱流。


 全部。


 戦闘開始から観察し続けていた情報が頭の中で組み上がる。


 脚部損傷率。


 熱流循環速度。


 発光周期。


 第二形態移行からの経過時間。


 活性化が進んでいる。


 想定より早い。


 だが。


 まだ攻略可能だ。


 あと一回。


 あと一回大きく崩せば届く。


 その時だった。


 灼熱巨人が拳を振り上げる。


 背部核から熱が流れる。


 肩へ。


 腕へ。


 拳へ。


 赤熱光が脈打った。


 来る。


「Garm!」


「おう!!」


《Guard Stance》


 Garmが前へ出る。


 盾を構える。


 腕は痺れている。


 肩も痛い。


 握力も限界だった。


 それでも退かない。


 自分が退けば終わる。


 それだけは分かっていた。


 巨拳が落ちる。


 轟音。


 激突。


 衝撃が盾越しに全身を貫いた。


「ぐっ……!」


 足が岩盤へ沈む。


 腕が軋む。


 肺から空気が押し出される。


 盾が悲鳴を上げる。


 それでも。


 Garmは重心を落とした。


 耐える。


 踏ん張る。


 押し返す。


 拳がさらに押し込まれる。


 肩が外れそうだった。


 腕の感覚も薄い。


 だが。


 後ろには仲間がいる。


 だから退かない。


「通さねぇよ」


 血の混じった息を吐きながら笑った。


「Sia!」


《Break Shot》


 Siaが弓を引く。


 熱気で空気が歪む。


 汗が目へ入る。


 呼吸も乱れる。


 普通なら狙えない。


 それでも。


 Siaの目は止まらない。


 肩関節。


 次に動く場所。


 その一点だけを見る。


 矢が放たれた。


 一直線。


 肩関節へ命中。


 僅かに。


 本当に僅かに。


 巨腕がズレる。


「今!」


 Arcが叫ぶ。


《ヘイスト》


 Rainの身体が軽くなる。


《バリア》


 青白い光が身体を包む。


 熱風が弾かれる。


 行ける。


 まだ動ける。


《Quick Step》


 Rainが消えた。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 世界が遅い。


 飛び散る溶岩片。


 吹き荒れる熱風。


 振り下ろされる巨腕。


 全部見える。


 全部避けられる。


 だが。


 怖くない訳じゃない。


 一発受ければ終わる。


 それでも。


 踏み込む。


《Twin Edge》


 左脚へ斬撃。


 火花が散る。


 赤熱した外殻が裂けた。


「こっちだ!!」


 灼熱巨人の視線が落ちる。


 その瞬間。


 Rainは脚部外殻を蹴った。


 身体が浮く。


 巨腕へ着地。


 さらに肩へ跳ぶ。


 そのまま背中を駆け上がる。


 熱い。


 靴底が焼ける。


 だが。


 止まらない。


 振り向くより先に。


 死角へ消えた。


 巨腕が薙ぐ。


 だが。


 空を切る。


 残像だけが熱霧へ残った。


《Quick Step》


 再加速。


 左。


 右。


 前。


 後ろ。


 視線を奪う。


 注意を引く。


 それがRainの仕事だった。


「Rain! 左脚継続!」


「了解!」


《Twin Edge》


 連続斬撃。


 火花が散る。


 亀裂が広がる。


 巨人の注意が完全にRainへ向いた。


 だから。


 反対側が空く。


「Cain!」


《疾駆》


 Cainが飛び込む。


 巨人の視線はRain。


 だから。


 止められない。


 全体重。


 全筋力。


 全部乗せる。


《裂崩》


 轟音。


 脚部外殻が爆ぜた。


 赤熱した破片が飛び散る。


 巨体が揺れる。


「こっち見ろォ!!」


 Cainが笑う。


 Rainが誘導した。


 なら。


 自分の仕事は決まっている。


 壊す。


 それだけだ。


「Sia!」


《Break Shot》


 矢が飛ぶ。


 肩へ命中。


 軌道がズレる。


 拳が岩盤を砕いた。


 Cainの横を熱風が通り過ぎる。


 あと一瞬遅れていたら直撃だった。


「助かった!」


「まだだ!」


 Rainが動く。


 Cainが動く。


 左から。


 右から。


 交互に攻める。


 Rainが視線を奪う。


 Cainが叩き込む。


 Rainが誘導する。


 Cainが崩す。


 少しずつ。


 少しずつ。


 灼熱巨人の重心が崩れていく。


 Arcはそれを見ていた。


 脚部損傷。


 重心変化。


 発光周期。


 全部見る。


 その時。


 Arcの表情が僅かに変わった。


 背部核の発光。


 想定より速い。


「……短い」


 予想では三秒。


 だが違う。


 二秒。


 いや。


 一秒半しかない。


 Novaの一撃が間に合わない。


 Arcは即座に判断した。


「計画変更!」


 全員の視線が向く。


「Rain!」


「Cain!」


「露出を維持しろ!」


「了解!」


「任せろ!」


 迷いの無い返事だった。


「Garm!」


「あと三秒耐えろ!」


「おう!!」


 巨拳が落ちる。


 Garmが受ける。


 膝が沈む。


 岩盤が砕ける。


 血が流れる。


 それでも立つ。


「通さねぇ……!」


 絞り出すような声だった。


 だが。


 その一歩が。


 仲間へ届く時間を作る。


「Rain左!」


「Cain右脚!」


「今だ!!」


《Twin Edge》


《裂崩》


 轟音。


 灼熱巨人の姿勢が大きく崩れる。


 肩甲骨の間。


 赤熱した外殻が砕ける。


 光が漏れる。


 亀裂が広がる。


 その奥。


 脈打つ赤熱結晶。


 背部核。


 今までで最も大きく露出した。


「露出した!」


 Siaが叫ぶ。


 Arcの目が細くなる。


 来た。


 待っていた瞬間。


「Crow――!」


 Arcの声が響く。


 Crowが動いた。


《Shadow Shift》


 熱霧が揺れる。


 黒い影が滑った。


 灼熱巨人の背後。


 さらに死角。


 熱い。


 近付くだけで皮膚が焼ける。


 肺が痛む。


 視界も揺れる。


 だが。


 止まらない。


 それが自分の役目だった。


 灼熱巨人が振り向く。


 巨腕が薙ぐ。


 轟音。


 熱風が爆発した。


 だが。


 Crowは見ていた。


 肩が動く。


 肘が動く。


 手首が動く。


 攻撃はその後だ。


 だから。


 Crowには見える。


 何百回。


 何千回。


 Depth Chronicleで死線を潜った。


 その経験が。


 今ここにあった。


《Shadow Shift》


 半歩。


 身体をずらす。


 巨腕が鼻先を通過した。


 髪が焼ける。


 頬が裂ける。


 血が流れる。


 それでも。


 当たらない。


 Crowはさらに踏み込む。


 肩甲骨の間。


 割れた外殻。


 その奥。


 赤熱した結晶。


 ドクン。


 核が脈打つ。


 同時に。


 背部核から熱が流れ出した。


 肩へ。


 腕へ。


 脚へ。


 全身へ。


 まるで心臓だった。


 違う。


 心臓そのものだ。


 あれが止まれば。


 灼熱巨人は動けない。


「Arc!」


 Crowが叫ぶ。


「核だ!」


「熱が全部そこから流れてる!」


 十分だった。


 Arcは頷く。


 背部核。


 露出時間。


 想定より短い。


 一秒半。


 だが。


 今が最大露出。


 これ以上は無い。


 ここで決める。


「Nova!」


 呼ばれたNovaが顔を上げる。


 呼吸は荒い。


 頭痛も酷い。


 魔力も残り少ない。


 だが。


 笑った。


「一発なら」


 十分だった。


 杖を握る手へ力を込める。


 震えている。


 疲労。


 熱気。


 魔力枯渇。


 全部限界だった。


 それでも。


 止めない。


 ここで終わらせる。


 そのためにここまで来た。


 その時。


 灼熱巨人が咆哮する。


 巨腕が振り上がった。


 背部核を守るように。


 最後の抵抗。


「Garm!」


「おう!!」


《Guard Stance》


 Garmが前へ出る。


 腕は限界。


 肩も限界。


 盾も歪んでいる。


 それでも立つ。


 巨拳が落ちる。


 轟音。


 激突。


 膝が沈む。


 岩盤が砕ける。


 血が流れる。


 視界が揺れる。


 拳が押し込まれる。


 盾が軋む。


 骨が悲鳴を上げる。


 それでも。


 退かない。


 後ろには仲間がいる。


 だから。


 退けない。


「通さねぇ……!!」


 Garmが吠えた。


 その声が。


 全員の背中を押す。


 だが。


 灼熱巨人も止まらない。


 もう片方の腕が振り上がる。


 熱が集中する。


 赤熱光が脈打つ。


 Rainの目が見開かれた。


 来る。


「Garm!」


 轟音。


 巨腕が薙ぐ。


《Quick Step》


 Rainが飛び出した。


 躱した。


 そう思った。


 だが。


 熱風がバリアを削る。


 青白い光へ亀裂が走る。


「っ!」


 次の瞬間。


 衝撃が身体を叩いた。


《バリア》


 砕け散る。


 Rainが吹き飛ばされた。


 岩盤を転がる。


 肺から空気が抜ける。


 肩が痛い。


 骨ごと砕かれたみたいだった。


 視界も揺れる。


 立て。


 立て。


 立て。


 Rainは歯を食いしばる。


 視界の先。


 Garmはまだ立っている。


 限界のはずなのに。


 盾を構えている。


 なら。


 自分も止まれない。


「Rain!」


 Arcが叫ぶ。


「問題ない!」


 本当は問題だらけだった。


 それでも。


 止まる理由にはならない。


《ヘイスト》


 身体が軽くなる。


 再加速。


《Quick Step》


 消える。


 熱霧だけが揺れる。


 左。


 右。


 前。


 後ろ。


 残像だけが残る。


 灼熱巨人の視線が追い付かない。


 Rainは脚部を蹴った。


 身体が浮く。


 巨腕へ着地。


 肩へ跳ぶ。


 さらに。


 背中を駆け上がる。


 熱い。


 靴底が焼ける。


 それでも止まらない。


 背部核の反対側へ回り込む。


 完全な死角。


 巨人の視線がさらにRainへ引き寄せられる。


「こっちだ!!」


《Twin Edge》


 双剣が閃く。


 火花が散る。


 注意が逸れる。


 それでいい。


「Cain!」


「おう!」


《疾駆》


 Cainが飛び込む。


 巨人の注意はRain。


 だから。


 止められない。


 全体重。


 全筋力。


 全部乗せる。


《裂崩》


 轟音。


 脚部外殻が爆ぜた。


 赤熱した破片が飛び散る。


 巨体が揺れる。


 重心が崩れる。


「まだだァ!!」


 Cainが吠える。


 さらに踏み込む。


 Rainが左を崩す。


 Cainが右を砕く。


 何度も繰り返した連携。


 言葉なんて要らない。


 Aegisはそういうパーティだった。


「Sia!」


《Break Shot》


 Siaが弓を引く。


 指先は震えていた。


 熱のせいだ。


 疲労のせいだ。


 それでも。


 目だけは止まらない。


 熱気で空気が歪む。


 普通なら狙えない。


 それでも。


 Siaは肩関節を射抜いた。


 矢が命中する。


 巨腕がズレる。


 巨人がよろめく。


 背部核が完全に晒された。


 Arcの目が光る。


 来た。


 勝ち筋だ。


「Nova!!」


 Novaが杖を掲げる。


《Mana Burst》


 残る魔力。


 全部。


 解放する。


 杖が悲鳴を上げる。


 圧縮された魔力が震える。


 空気が歪む。


 熱霧が吹き飛ぶ。


 制御限界だった。


 あと少し。


 あと少し集中が乱れれば。


 自爆する。


 それでも。


 Novaは笑った。


 Garmが耐えた。


 Rainが走った。


 Cainが崩した。


 Siaが射抜いた。


 Crowが見つけた。


 ここまで繋いだのは仲間だ。


 なら。


 最後は自分の仕事だった。


「終われ――!!」


《Explosion》


 爆炎。


 赤熱した火柱が空洞を貫く。


 一直線。


 背部核へ。


 直撃。


 轟音。


 衝撃波。


 熱霧が吹き飛ぶ。


 岩壁が揺れる。


 床へ巨大な亀裂が走った。


 一瞬。


 静寂。


 そして。


 背部核へ亀裂が走る。


 一本。


 二本。


 三本。


 赤熱した光が漏れ出した。


 灼熱巨人が絶叫する。


 今までで最大の咆哮。


 空洞全体が震えた。


 天井から岩塊が落ちる。


 熱風が吹き荒れる。


 誰もが身構える。


 最後の抵抗だった。


 最後の足掻きだった。


 だが。


 背部核を失った身体は。


 もう支えられない。


 崩壊は止まらなかった。


 まず右腕。


 亀裂が広がる。


 熱が噴き出す。


 支えを失った腕が崩落する。


 続いて左腕。


 脚部。


 胸部。


 全身。


 熱が制御を失ったように暴走する。


 背部核が悲鳴を上げるように明滅する。


 そして。


 次の瞬間。


 砕け散った。


 轟音。


 巨大な身体が揺れる。


「離れろ!」


 Arcが叫ぶ。


 全員が飛び退く。


 灼熱巨人が傾く。


 ゆっくり。


 本当にゆっくり。


 膝をついた。


 十五階層を支配していた巨体が。


 初めて地へ屈する。


 そして。


 崩れ落ちた。


 轟音。


 赤熱した粉塵が舞う。


 熱風が吹き荒れる。


 やがて。


 静寂が訪れた。


 荒い呼吸だけが響く。


 誰も動かなかった。


 全員。


 限界だった。


「もう二度とやりたくねぇ……」


 Garmが座り込む。


「嘘つけ」


 Cainが笑う。


「どうせ次も前に出るだろ」


「出ねぇよ……」


「出るな」


 Rainが即答した。


「出る」


 Crowも言う。


「出ると思います」


 Siaまで頷く。


「お前らな……」


 Garmが頭を抱える。


 全員が笑った。


 疲労で。


 傷だらけで。


 今にも倒れそうなのに。


 笑っていた。


 その時だった。


 灼熱巨人の残骸が淡く光る。


 巨大な赤色魔石。


 そして。


 その隣。


 見たことのない赤い結晶。


 Arcの表情が変わる。


「……これは」


 Rainが首を傾げる。


「何か知ってるの?」


 Arcは答えない。


 ただ。


 赤い結晶を見つめていた。

第四十話を読んでいただきありがとうございます!


ついに十五階層ボス《灼熱巨人》を撃破しました。


ここまで長かったですが、Aegisらしい連携戦闘を書けたかなと思います。


特に今回はRainの高速機動や、Garmの耐久、そしてNovaのフィニッシュを意識して描きました。


ですが――。


まだ探索は終わっていません。


次回は攻略後の判断と、Aegisの今後についてのお話になります。


引き続き応援していただけると嬉しいです!


ブックマーク、評価、感想も励みになります!


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ