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世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
三章 灼熱の境界域

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第39話 第二段階

# 第39話 第二段階


 熱風が吹き荒れていた。


 赤熱した光が、

 空洞全体を照らしている。


 灼熱巨人。


 第二段階。


 全身へ走る亀裂。


 そこから溢れる赤熱光は、

 第一形態とは比較にならなかった。


 熱い。


 いや。


 痛い。


 呼吸するだけで肺が焼ける。


「はっ……!」


 Rainが膝をつく。


 喉が熱い。


 頭が重い。


 視界が揺れる。


 立っているだけで、

 体力が削られていく。


 空洞を満たす熱気は、

 さっきまでとは別物だった。


 溶岩土龍を倒した。


 そのはずだった。


 なのに。


 状況は悪化している。


 本当に同じボスなのか。


 そう思うほどだった。



 灼熱巨人が咆哮する。


 熱風が吹き荒れた。


 その瞬間。


 地面が赤く光る。


「下がれ!!」


 Arcが叫ぶ。


 全員が反応した。


 直後。


 轟音。


 赤熱した岩盤が爆ぜる。


 溶岩みたいな熱流が、

 床から噴き出した。


 空洞全体へ火柱が走る。


「っ――!」


 Rainが横へ飛ぶ。


 火柱が頬を掠めた。


 焼ける。


 熱いじゃない。


 痛い。


 皮膚そのものが焼かれたみたいだった。


 Novaも転がる。


 Siaも飛び退く。


 ほんの一瞬。


 回避が遅れていたら。


 全員燃えていた。



「今のは……」


 Novaが息を呑む。


 第一形態には無かった。


 地面そのものを爆発させる攻撃。


 灼熱巨人は。


 ただ強くなった訳じゃない。


 別物になっていた。


 Novaは巨人を見る。


 赤熱した亀裂。


 そこから溢れる熱。


 魔力反応。


 何かがおかしい。


 第二形態になってから。


 熱の流れが変わっている。


 だが。


 まだ分からない。


 情報が足りなかった。



 Crowは黙っていた。


 呼吸が乱れている。


 視界も揺れている。


 避け続けた疲労が、

 今になって襲っていた。


 頬が焼ける。


 肺が痛む。


 頭も重い。


 それでも。


 目だけは止まらない。


 肩。


 腕。


 脚。


 重心。


 次の動き。


 全部を見る。


 技術で生き残ってきた。


 だから。


 最後まで見る。


 灼熱巨人がどれだけ強くなろうと。


 動くなら読める。


 そう信じていた。



 灼熱巨人が動く。


 一歩。


 それだけで。


 空洞全体が揺れた。


 轟音。


 岩盤が砕ける。


 熱風が爆発する。


「来る!」


 Siaが叫ぶ。


 巨人の拳が持ち上がる。


 赤熱光が集まった。


 肩。


 腕。


 拳。


 光が流れる。


 熱そのものが圧縮されていく。


 嫌な予感がした。


 今までと違う。


 誰もがそう感じていた。



 拳が落ちる。


《Guard Stance》


 Garmが前へ出た。


 巨盾を押し出す。


 轟音。


 激突。


 空洞全体が震える。


 岩盤が砕けた。


 熱風が吹き荒れる。


 だが。


 止まらない。


 拳が。


 押し込んでくる。


「ぐっ――!」


 Garmが歯を食いしばる。


 腕が軋む。


 肩が悲鳴を上げる。


 膝が沈む。


 第一形態なら。


 受け切れていた。


 だが。


 今は違う。


 重い。


 圧倒的に重い。


 盾を握る指先の感覚が薄れていく。


 腕も上がらない。


 肩も焼ける。


 それでも。


 Garmは退かない。


 後ろには仲間がいる。


 Rain。


 Nova。


 Sia。


 Crow。


 そしてArc。


 だから。


 盾を下ろさない。



 灼熱巨人の拳が軋む。


 さらに力が加わる。


 巨盾が悲鳴を上げた。


 金属が歪む音が響く。


「まだだ……!」


 Garmが踏み込む。


 靴底が岩盤を削る。


 腕の感覚はほとんど無い。


 指先も痺れている。


 それでも。


 盾を離さない。


 離した瞬間。


 後ろが死ぬ。


 それだけは分かっていた。


 怖くない訳じゃない。


 腕は限界だ。


 肩も壊れそうだった。


 それでも。


 自分が立たなければ。


 誰も戦えない。


 だから。


 Garmは前へ出る。



 次の瞬間。


 衝撃が爆発した。


 Garmの身体が浮く。


「なっ――!?」


 巨盾ごと。


 吹き飛ばされた。


 岩盤を削りながら転がる。


 十メートル。


 二十メートル。


 ようやく止まる。


 誰も言葉を失った。


 止められない。


 第一形態とは違う。


 別物だった。



「Garm!」


 Rainが叫ぶ。


「生きてる……!」


 返事は返る。


 だが。


 苦しそうだった。


 血が流れている。


 盾も歪んでいた。


 まともに受けていたら終わっていた。



 Rainは息を呑む。


 本気で死ぬ。


 そう思った。


 怖い。


 逃げたい。


 普通なら撤退する。


 普通なら諦める。


 灼熱巨人を見る。


 圧倒的だった。


 溶岩土龍とは違う。


 力の格が違う。


 あんな怪物に勝てるのか。


 そんな考えが頭をよぎる。


 だが。


 もっと嫌なことがあった。


 置いていかれることだ。


 自分だけ逃げることだ。


 Arcも。


 Cainも。


 Garmも。


 前にいる。


 だから。


 足が止まらない。



 視線が動く。


 Arcを見る。


 Arcだけが。


 少しも慌てていなかった。


 灼熱巨人を見ている。


 ずっと。


 ずっと。


 見ている。


 仲間が吹き飛ばされても。


 熱気が増しても。


 焦りが無い。


 まるで。


 答えを探しているみたいだった。


 危険だ。


 まともじゃない。


 でも。


 Arcを見ていると。


 勝てる気がしてしまう。



 普通なら撤退。


 探索者ならそう判断する。


 だが。


 Arcだけは違った。


 仲間の損耗。


 熱気の上昇。


 敵戦力。


 全部見ている。


 それでも。


 視線は灼熱巨人から離れない。


 既に。


 倒し方を探していた。



 灼熱巨人が再び咆哮する。


 熱風が吹き荒れる。


 空洞全体が震えた。


 その時だった。


「Arc!」


 Siaが叫ぶ。


 矢を番えたまま。


 灼熱巨人を見ている。


「胸じゃない!」


 全員の視線が動く。


「背中だ!」


 肩甲骨の間。


 赤熱した光が、

 一瞬だけ明滅した。


「今光った!」


 Siaは見逃さなかった。


 攻撃の直前。


 ほんの一瞬だけ。


 背中へ熱が集まっていた。


 偶然じゃない。


 何かある。


 そう確信していた。



 Arcの目が細くなる。


 Siaが見つけた。


 Novaが裏付ける。


 だが。


 まだ足りない。


 推測だけでは攻略にならない。


 実際に見て。


 確認する必要があった。



「Crow」


 短く呼ぶ。


 Crowが頷いた。


 確認する。


 それが自分の役目だった。


 熱風が吹き荒れる。


 赤熱光が揺れる。


 だが。


 Arcの口元には、

 僅かな笑みが浮かんでいた。


 勝ち筋が。


 見え始めていた。


「Crow」


 Arcが呼ぶ。


「行けるか」


「問題ない」


 即答だった。


 本当は問題だらけだった。


 呼吸は乱れている。


 視界も揺れる。


 身体中が熱い。


 肺が焼ける。


 頭も重い。


 だが。


 そんなことは関係ない。


 確認する。


 それが自分の役目だった。



「Crowの時間を作る」


 Arcが言った。


 短い言葉だった。


 だが。


 全員が理解する。


 やるべきことは一つ。



「Rain」


「うん」


「Cain」


「おう」


「巨人の意識を逸らせ」


 二人が頷いた。


 倒す必要はない。


 時間を作ればいい。


 Crowが見る時間を。



《Quick Step》


 Rainが走る。


 熱霧を裂く。


 双剣が閃く。


 狙うのは脚。


 巨大な脚部関節。


 火花が散る。


 赤熱した外殻が削れた。


「こっちだ!!」


 Rainが叫ぶ。


 灼熱巨人の視線が落ちる。


 巨人にとっては小さな傷だ。


 だが。


 無視はできない。


 関節部を狙われ続ければ、

 動きが鈍る。


 Rainはそれを理解していた。



 巨腕が動く。


 Rainへ向かう。


 巨大な影が覆い被さった。


 怖い。


 本気で怖い。


 だが。


 止まれない。


 Arcが言った。


 時間を作れと。


 だから。


 前へ出る。


《Quick Step》


 紙一重。


 拳が岩盤を砕く。


 轟音。


 熱風が吹き荒れた。


 Rainの髪が揺れる。


 あと少し遅れていたら。


 潰されていた。


 心臓が暴れる。


 呼吸も苦しい。


 それでも。


 口元が少しだけ上がった。


 生きている。


 まだ戦えている。



《疾駆》


 その瞬間。


 反対側からCainが飛び込む。


 轟音。


 岩盤が砕けた。


 大剣が振り抜かれる。


《裂崩》


 重い一撃。


 脚部外殻へ叩き込まれる。


 赤熱した破片が飛び散った。


 巨体が揺れる。


「こっち見ろォ!!」


 Cainが笑う。


 死線の中なのに。


 楽しそうだった。


 Rainは思う。


 本当に戦闘が好きなんだなと。



 灼熱巨人が咆哮する。


 熱風が吹き荒れる。


 巨腕が振り上がる。


「来る!」


 Siaが叫ぶ。


《Break Shot》


 矢が飛ぶ。


 肩関節へ突き刺さる。


 僅か。


 本当に僅か。


 だが。


 巨腕の軌道がズレた。


 Rainの頭上を通過する。


「助かった!」


「まだ終わってない!」


 Siaが叫び返す。


 額には汗が滲んでいた。


 指先も熱で痺れている。


 それでも。


 狙いを外さない。


 それが自分の役目だった。



 その隙だった。


《Shadow Shift》


 Crowが消える。


 熱霧が揺れる。


 黒い影が滑った。


 灼熱巨人の死角。


 背後。


 さらに背後。



 近い。


 熱い。


 皮膚が焼ける。


 呼吸するたび肺が軋む。


 普通なら近寄れない。


 だが。


 Crowは進む。


 肩。


 脚。


 重心。


 全部を見る。


 攻撃の起点を読む。


 避けるためだ。


 灼熱巨人は強い。


 だが。


 動くなら読める。


 Crowはそう信じていた。



 灼熱巨人が振り向く。


 巨腕が薙ぐ。


 轟音。


 熱風が爆発する。


《Shadow Shift》


 Crowが消える。


 巨腕が通り過ぎる。


 紙一重。


 髪先が焼けた。


 頬も裂ける。


 血が流れる。


 それでも。


 止まらない。


 確認するまでは。


 Arcは推測している。


 だが。


 推測だけでは攻略にならない。


 だから。


 自分が見る。



 見える。


 肩甲骨の間。


 赤熱した亀裂。


 その奥。


 脈打つ光。


 胸部核とは違う。


 もっと深い。


 もっと強い。


 まるで。


 巨人全体を動かしている心臓みたいだった。



 その瞬間だった。


 背部核が脈打つ。


 ドクン。


 心臓みたいに。


 同時に。


 熱が流れる。


 背中から。


 肩へ。


 腕へ。


 拳へ。


 脚へ。


 首へ。


 全身へ。



 Crowは目を見開いた。


 ただ光っている訳じゃない。


 送っている。


 熱を。


 力を。


 背部核から全身へ。


 だから拳が動く。


 だから脚が動く。


 だから巨人は立っている。


 これが第二形態の本体。


 そう確信した。



「Arc!」


 Crowが叫ぶ。


「熱が流れてる!」


 Arcの目が細くなる。


「どこへだ」


「全身だ!」


 即答。


「背中から腕へ!


 脚へ!


 全部だ!」



 Novaも顔を上げる。


 発光を見る。


 熱流を見る。


 魔力反応を見る。


 そして。


 理解した。



「そういうことか……」


 胸部核を破壊した。


 なのに。


 死ななかった。


 その理由。


 今なら分かる。



「胸部核は本体じゃない」


 Novaが言う。


「第一形態を維持するための核だ」


 Rain達が振り向く。


「でも第二形態は違う」


 Novaは背中を見る。


「背部核が熱を循環させてる」



「循環?」


 Cainが眉を上げる。


「心臓みたいなもの」


 Novaが答えた。


「熱を全身へ送り続けてる」


 腕。


 脚。


 胸。


 首。


 全部。


「だから第二形態は動いてる」



 Arcは黙っていた。


 だが。


 頭の中では全部繋がっていた。


 胸部核を破壊した。


 だが死ななかった。


 なら。


 胸部核は本体じゃない。


 第一形態を固定するための核。


 そう考えれば辻褄が合う。



 そして第二形態。


 背部核が熱を循環させている。


 攻撃の直前だけ。


 熱が集まる。


 腕へ流れる。


 脚へ流れる。


 全身へ流れる。


 だから強い。


 だから動ける。


 だから。


 背部核を壊せば終わる。



 Arcは確信した。


 あれだ。


 あれが本体だ。



「Rain」


「うん」


「Cain」


「おう」


「背中を開ける」



「届くのか?」


 Cainが聞く。


 Arcは即答した。


「届かせる」


「一回しか無いぞ」


「十分だ」


 Cainが笑った。



「Garmが受ける」


「おう」


 Garmは立ち上がる。


 腕は痺れている。


 盾も歪んでいる。


 それでも。


 前へ出る。


 自分が立たなければ。


 誰も作戦を実行できない。



「Siaが肩を止める」


「了解」


「RainとCainで体勢を崩す」


 二人が頷く。


「Nova」


「露出した瞬間だな」


 Arcも頷いた。



 作戦は完成した。


 誰も余裕は無い。


 全員限界だ。


 だが。


 勝ち筋はある。



 灼熱巨人が咆哮する。


 空洞が揺れる。


 熱風が吹き荒れる。


 だが。


 もう誰も怯えていなかった。


 勝ち筋が見えたからだ。



「次で終わらせる」


 Arcの声に。


 全員が前を向いた。


第三十九話を読んでいただきありがとうございます。


今回は灼熱巨人第二形態との戦いでした。


第一形態を突破したと思ったら、さらに強力な第二形態が出現。


Aegisもかなり消耗していますが、Sia、Nova、Crowが集めた情報をArcが繋げることで、ようやく勝ち筋が見えてきました。


次回はいよいよ攻略戦本番です。


見つけた攻略法を、本当に形にできるのか。


ぜひ楽しみにしていただければ嬉しいです。


ブックマーク、評価、感想などいつもありがとうございます。


次回もよろしくお願いします。

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