表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
三章 灼熱の境界域

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/111

第37話 攻略交差

# 第37話 攻略交差


 空洞全体が揺れていた。


 灼熱巨人。


 溶岩土龍。


 二体のボスが暴れている。


 熱霧が渦巻く。


 赤熱した粉塵が舞い、

 視界そのものが赤く滲んでいた。


 焼けた空気が喉へ張り付く。


 呼吸するたび、

 肺へ熱気が流れ込んでくる。


 熱い。


 鼻奥が焼ける。


 喉が乾く。


 汗が頬を流れる。


 だが。


 落ちる前に蒸発した。


 Heat環境そのものが、

 探索者の体力と集中力を削っていた。


 普通なら撤退。


 第十五階層。


 二体同時ボス。


 探索者協会でも、

 即時撤退判断を出す状況だった。


 Rainは、

 本気でそう思っていた。


 怖い。


 本当は逃げたい。


 肺へ流れ込む熱気が、

 呼吸するたびに体力を奪っていく。


 足が重い。


 視界が赤く滲む。


 熱霧の奥で、

 二体の巨影が動くたび、

 身体の奥が冷えていく。


 こんな状況、

 まともじゃない。


 でも。


 Arcは止まらない。


 熱に揺れる視界の中央で、

 Arcだけが戦場を見ていた。


 怯えでもない。


 興奮でもない。


 ただ、

 攻略を組む目だった。


 その背中を見ていると。


 勝てる気がしてしまう。


 それが、

 Rainには一番怖かった。


 なのに。


 前へ出る足は、

 止まらなかった。


 Arcだけは違った。


 視線が止まらない。


 Heat濃度。


 敵位置。


 侵食速度。


 味方損耗。


 全部を見ている。


 Garm耐久低下。


 Crow集中低下。


 Nova魔力消耗。


 Rain侵食進行。


 普通なら、

 もう崩れる。


 でも。


 Arcの中では、

 まだ攻略が継続していた。


 巨人の拳。


 土龍の突進。


 Heat流動。


 衝撃後の硬直。


 全部が、

 Arcの中で繋がっていく。


 どこでぶつけるか。


 どこでRainを入れるか。


 どこでCainが尾を落とすか。


 どこでNovaの火力を通すか。


 既に、

 手順は組み終わっていた。


 普通なら撤退。


 だが。


 Arcの中では、

 既に撃破後の動きまで組み終わっていた。


 溶岩土龍を落とす。


 その後、

 残る灼熱巨人へ戦力を集中させる。


 Heat濃度が上がり切る前に、

 片方を削り切る。


 それしかない。



 灼熱巨人の拳が持ち上がる。


 赤熱した巨腕が軋んだ。


 拳が上がるだけで、

 熱風が巻き起こる。


 大きい。


 いや。


 巨大すぎる。


 視界そのものが、

 赤熱した拳で埋まっていく。


 焼けた空気が、

 鎧の隙間から入り込んできた。


 呼吸するたび、

 肺が焼けるみたいだった。


 Garmは盾を握り直す。


 腕が汗で滑る。


 だが。


 熱で、

 汗はすぐ蒸発した。


 逃げない。


 ここを抜かれれば、

 後ろが死ぬ。


 Rain。


 Nova。


 Sia。


 Crow。


 そしてArc。


 全員が、

 この盾の後ろにいる。


 だから。


 Garmは前へ出る。


《Guard Stance》


 巨盾を押し出す。


 直後。


 赤熱した巨拳が落ちた。


 爆発みたいな衝撃が、

 全身へ叩きつけられる。


 床が砕けた。


 膝が沈む。


 腕が痺れる。


 肺から空気が押し出された。


「ぐっ――!」


 砕けた岩片が、

 熱霧の中へ散る。


 衝撃で岩壁へ亀裂が走った。


 だが。


 止め切れない。


 灼熱巨人の拳が、

 巨盾ごとGarmを押し込んでいく。


 靴裏が岩盤を削った。


 熱い。


 焼けた空気が、

 肺へ流れ込んでくる。


 呼吸が浅い。


 Heatが、

 鎧越しに身体を焼いていた。


 腕が震える。


 限界が近い。


 盾を握る指先の感覚が、

 少しずつ薄れていく。


 痺れが抜けない。


 肩が重い。


 もう、

 腕が上がらない。


 それでも。


 Garmは盾を下ろさなかった。


 ここを抜かれれば、

 後ろが死ぬ。


 だから。


「……まだだ」


 歯を食いしばる。


 巨盾を押し返す。


 灼熱巨人の動きが、

 僅かに止まった。


 その横。


 Siaは見ている。


 赤熱した巨腕。


 重心移動。


 踏み込み。


 拳が落ちる軌道。


 全部を読んでいた。


 灼熱巨人を倒すためじゃない。


 Garmが受けられる角度へ、

 攻撃をズラすため。


 巨人の拳は重すぎる。


 真正面から全て受ければ、

 どれだけGarmでも長くは持たない。


 だから。


 Siaが削る。


 ダメージではなく、

 軌道を。


「右来る!」


《Break Shot》


 矢が走る。


 灼熱巨人の肘関節へ突き刺さった。


 直後。


 巨腕の軌道が僅かにズレる。


《Guard Stance》


 Garmの巨盾が、

 真正面から拳を受け止めた。


 衝撃が走る。


 だが、

 さっきより浅い。


 拳の芯が、

 盾から僅かに外れていた。


 もし。


 Siaの射撃が無ければ。


 今ので、

 Garmごと後衛まで吹き飛んでいた。


 Siaは二射目を番える。


 狙うのは目ではない。


 肩。


 肘。


 踏み込みの膝。


 攻撃前兆が出た瞬間、

 そこへ矢を置く。


 止めるのではない。


 ズラす。


 それだけで、

 Garmが生き残る時間が伸びる。


「次、左肩!」


 短く叫び、

 Siaはまた弓を引いた。



 一方。


 Crowは熱霧の中を滑っていた。


 後方。


 溶岩土龍が追う。


 巨大な赤熱外殻が、

 熱霧を吹き飛ばしながら迫っていた。


 速い。


 地面が砕ける。


 岩盤が沈む。


 吹き荒れた熱風が、

 背中へ叩きつけられた。


 黒コートが激しく揺れる。


 呼吸が乱れる。


 Heat侵食で、

 肺へ流れ込む熱気が思考を削っていく。


 視界が熱で揺れる。


 集中力が落ちる。


 それでも。


 Crowは目を逸らさない。


 溶岩土龍の肩。


 牙の向き。


 重心移動。


 次に来る軌道。


 全部を読む。


 ほんの一瞬。


 判断が遅れれば終わる。


 だから。


 Crowは、

 次の重心移動を見逃さない。


 Crowは走らない。


 むしろ。


 溶岩土龍へ寄っていた。


 普通なら離れる。


 だが。


 Crowは半歩だけ踏み込む。


 赤熱した巨大な顎が開く。


 灼熱の風が吹き荒れる。


 熱気が肺へ流れ込んだ。


 喉が焼ける。


 視界が赤く歪む。


 それでも。


 Crowは前を見る。


 溶岩土龍の視線。


 牙の向き。


 重心移動。


 突進角度。


 全部を読んでいた。


 ほんの僅か。


 立ち位置を変える。


 それだけで。


 溶岩土龍の突進軌道がズレる。


『Crow。

 右』


 Arcの声。


 短い。


 だが。


 Crowは迷わない。


 半歩だけ動く。


 すると。


 溶岩土龍の視線がズレた。


 巨大な顎が、

 灼熱巨人方向へ向く。


 理解する。


 Arcは、

 巨人へぶつけるつもりだ。


「了解」


 Crowは走る。


 灼熱巨人方向へ。



「来る」


 Crowが呟く。


 溶岩土龍が咆哮した。


 熱霧が吹き飛ぶ。


 巨大な顎が開いた。


 突進。


 地面が砕ける。


 熱風が空洞を揺らした。


 Crowは灼熱巨人方向へ走る。


 背後では、

 溶岩土龍の巨体が岩盤を砕きながら迫っていた。


 吹き荒れる熱風が、

 黒コートを激しく叩く。


 焼けた空気が肺へ流れ込み、

 呼吸するたび喉が焼けるみたいだった。


 それでも。


 Crowは止まらない。


 ギリギリまで引き付ける。


 灼熱巨人の拳が持ち上がった。


 赤熱した巨腕が軋む。


 同時に。


 溶岩土龍が大口を開き、

 熱霧を吹き飛ばしながら突っ込んでくる。


 二体の巨体が、

 真正面から交差しようとしていた。


 一瞬。


 誰も動かなかった。


 熱霧だけが揺れている。


 灼熱巨人は、

 ただ拳を振り下ろそうとしていた。


 その瞬間。


 Crowが動く。


《Shadow Shift》


 熱霧が揺れた。


 黒い影が、

 横へ滑る。


 次の瞬間。


 灼熱巨人の拳と、

 溶岩土龍の巨体が激突した。


 爆発みたいな衝撃が走る。


 空洞全体が揺れ、

 熱霧が一気に吹き飛んだ。


 床へ巨大な亀裂が走る。


 岩壁が崩れ、

 赤熱した岩片が雨みたいに降り注いだ。


 灼熱巨人の拳が、

 溶岩土龍の外殻へ深くめり込む。


 赤熱した外殻へ、

 蜘蛛の巣みたいな亀裂が広がった。


「今だ!」


 Arcの声が飛ぶ。


 その瞬間。


 RainとCainが同時に踏み込んだ。


《Quick Step》


 Rainの身体が加速する。


 熱霧を裂き、

 一瞬で溶岩土龍の側面へ回り込んでいた。


《Twin Edge》


 双剣が閃く。


 赤熱した脚部へ、

 連続で斬撃が叩き込まれた。


 火花が散る。


 Heat外殻の隙間を、

 Rainは正確に切り裂いていた。


 関節部。


 筋繊維。


 動力の流れる箇所。


 浅くない。


 確実に、

 溶岩土龍の動きを削っている。


 巨体が揺れた。


 脚が沈む。


「効いてる!!」


 Rainは外殻を割れない。


 Cainほどの破壊力は無い。


 Novaほどの火力も無い。


 それでも。


 Rainには、

 Rainの削り方がある。


 割れた場所だけを狙う。


 巨人の拳で入った亀裂。


 Cainが広げる傷。


 尾を失えば露出する関節。


 そこへ双剣を差し込む。


 広げる。


 裂く。


 動きを奪う。


 派手じゃない。


 でも。


 確実に、

 攻略へ繋がっていた。


《疾駆》


 Cainが床を踏み砕く。


 爆発みたいな加速。


 熱霧が吹き飛ぶ。


 一瞬で、

 溶岩土龍の背後へ回り込んでいた。


 Cainが狙ったのは、

 溶岩土龍の尾だった。


 巨体のバランスを支えている、

 太く赤熱した尾。


 それが振り上がるたび、

 熱風が周囲へ叩きつけられる。


「ぶった斬る!!」


《裂崩》


 大剣が叩き込まれる。


 重い衝撃。


 Heat外殻が砕けた。


 亀裂が走る。


 だが。


 まだ浅い。


 尾は落ちない。


 赤熱した外殻が、

 大剣を押し返そうとしていた。


 だが。


 Cainは止まらない。


 さらに踏み込む。


 岩盤が砕ける。


 筋肉が軋む。


 両腕へ、

 さらに力を込めた。


「っ――らぁぁぁ!!」


 大剣が振り抜かれる。


 直後。


 赤熱した尾が宙を舞った。


 灼熱の血飛沫が、

 熱霧の中へ散る。


 切断された尾が、

 赤熱した岩盤を削りながら転がった。


 熱風が吹き荒れた。


 溶岩土龍が絶叫する。


 咆哮で、

 熱霧そのものが震えていた。


「Rain!」


「分かってる!」


 Rainは止まらない。


 崩れた巨体へ、

 さらに踏み込む。


《Twin Edge》


 双剣が閃く。


 赤熱した脚部へ、

 さらに連続斬撃が叩き込まれた。


 火花が散る。


 Heat外殻の隙間が、

 次々と切り裂かれていく。


 溶岩土龍は、

 尾を失って体勢を崩している。


 その巨体を支えようと、

 脚部へ負荷が集中していた。


 Rainはそこを逃さない。


 沈み込んだ膝。


 露出した関節。


 砕けた外殻の隙間。


 そこだけを狙って、

 双剣を走らせる。


 巨体が大きく揺れた。


 巨大な脚が崩れる。


 バランスが完全に崩れた。


「Nova!!」


 Arcが叫ぶ。


 その瞬間。


 Novaの周囲で、

 膨大な魔力が渦巻いた。


 だが。


 その時。


 灼熱巨人が動く。


 赤熱した巨腕が、

 Nova方向へ持ち上がった。


「Nova狙われてる!」


 Rainが叫ぶ。


 だが。


 Siaは既に弓を引いていた。


《Break Shot》


 矢が走る。


 灼熱巨人の目元へ突き刺さった。


 僅かに。


 巨人の視線がズレる。


 続けて。


《Multi Shot》


 複数の矢が、

 熱霧を裂いて走った。


 狙うのは、

 巨人の顔面ではない。


 肩。


 肘。


 手首。


 Novaへ向かう腕の動きを、

 ほんの数瞬だけ鈍らせる場所。


 矢が突き刺さるたび、

 赤熱した巨腕が僅かに揺れる。


 止められない。


 倒せもしない。


 それでも。


 Novaの詠唱時間を稼ぐには、

 十分だった。


 その数瞬。


 Novaの詠唱が間に合った。


《Mana Burst》


 熱霧が押し返される。


 赤熱した魔力光が、

 空洞全体を染め上げた。


 Novaが狙ったのは、

 Cainが砕いた外殻と、

 Rainが開いた傷口だった。


 硬い外側ではない。


 露出した内部へ、

 爆炎を叩き込む。


「吹き飛べ……!」


《Explosion》


 爆炎。


 赤熱した火柱が、

 溶岩土龍を真正面から飲み込んだ。


 轟音。


 衝撃波が熱霧を吹き飛ばす。


 岩壁が揺れる。


 床へ亀裂が走った。


 爆炎の中。


 溶岩土龍の巨体が揺れる。


 赤熱した外殻が、

 次々と崩れ落ちていく。


 Heat光が明滅する。


 巨体を支えていた脚が沈む。


 そして。


 巨大な身体が、

 ゆっくり地面へ崩れ落ちた。


 熱風が吹き荒れる。


 赤熱した粉塵が舞う。


 一瞬。


 誰も動かなかった。


 熱霧だけが揺れている。


 誰も歓声を上げなかった。


 まだ終わっていない。


 灼熱巨人が残っている。


 Garmの盾が軋む。


 Crowの呼吸が荒い。


 Rainの手が震えている。


 Siaは弓を下ろさず、

 まだ巨人の肩を見ていた。


 Novaの足元では、

 魔力の残滓が赤く揺れている。


 そして。


 溶岩土龍は、

 動きを止めた。


 熱風だけが吹いている。


 誰もすぐには動けなかった。


 Rainは肩で呼吸する。


 肺が焼ける。


 双剣を握る手が震えていた。


 Garmの盾は軋み。


 Crowの呼吸も荒い。


 Novaは魔力消耗で膝をついている。


 それでも。


 Arcだけは違った。


 溶岩土龍は倒れた。


 なのに。


 Arcの視線は、

 もう灼熱巨人しか見ていなかった。


 次の攻略を考えている。


 Heat濃度。


 巨人の損耗。


 残り時間。


 まだ戦えるか。


 もう。


 勝った後のことまで見ているみたいだった。


 Rainは息を呑む。


 怖い。


 まともじゃない。


 でも。


 その背中を見ていると。


 勝てる気がしてしまう。


第三十七話でした。


今回は、

「二体同時ボスをどう攻略するか」

をかなり意識して書きました。


特に、


Crowの誘導

Garmの受け

Siaの軌道ズラし

Rainの削り

Cainの尾切断

Novaのフィニッシュ


この固定PT連携を、

映像っぽく見えるように調整しています。


そして今回から、

Arcの「攻略狂人」感もかなり強めに入れました。


普通なら撤退する状況でも、

Arcだけは攻略を組み続けている。


そこにPTが飲まれていく感じを、

今後もっと出していけたらと思っています。


次回は、

残った灼熱巨人戦になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ