表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『世界最強ギルド《Aegis》、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する』  作者: そら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/36

第二十五話 討伐完了

# 第二十五話 討伐完了


 音が無かった。


 世界から音だけが消えていた。


 耳鳴りだけが、頭の奥で鳴り続けている。


 キィィィ……という不快な高音。


 白煙。


 熱。


 焼けた石の臭い。


 Rainは崩れた石床へ手をついた。


「……っ、は……」


 肺が痛い。


 呼吸するたび熱気が流れ込んでくる。


 喉が焼ける。


 全身が重かった。


 視界もまだ白く霞んでいる。


「……終わった、のか……?」


 掠れた声が漏れる。


 返事はない。


 白煙の向こうで、瓦礫が崩れる音だけが響いていた。


 Rainは無理やり顔を上げる。


 崩壊しかけた広間。


 赤熱した石床。


 砕けた石柱。


 天井の巨大亀裂。


 遺跡そのものが限界だった。


 その中心。


 巨大な影が横たわっている。


 アトラス。


 背部炉は砕け、全身の装甲も半壊していた。


 だが。


 ゴゥ……。


 低い駆動音が響く。


 赤熱した炉心が、不規則に明滅していた。


 全員の身体が強張る。


 まだ動くのか。


 その恐怖が、誰の頭にも浮かんだ。


 ゴゥ……。


 赤光が脈打つ。


 一度。


 二度。


 三度。


 そして。


 ふっと。


 炉心の光が消えた。


 静寂。


 さっきまで遺跡を揺らしていた振動が、嘘みたいに止まる。


 誰もすぐには動けなかった。


 本当に終わったのか。


 まだ何か起きるんじゃないか。


 そんな緊張だけが残っていた。


 その時だった。


《SECOND FORGE ATLAS 討伐完了》


 青白いウィンドウが視界へ展開される。


《特殊条件達成》


《経験値取得》


《LEVEL UP》


「……勝った、のか」


 Rainが呆然と呟く。


 一瞬。


 誰も動かなかった。


 そして。


「っしゃあああぁぁぁぁ!!」


 Novaが叫んだ。


「勝った!! マジで勝った!!」


「うるせぇ……」


 Garmが壁にもたれながら呻く。


 だが口元は少し笑っていた。


「ははっ……」


 Rainも思わず笑う。


 全身ボロボロだった。


 肺も痛い。


 腕も重い。


 それでも。


 生きている。


 全員で勝った。


 その実感が、ようやく湧いてきた。


「……でも、生き残った」


 Mistが小さく呟く。


 その言葉で、ようやく全員の肩から力が抜けた。


「Garm!」


 Rainが振り向く。


 瓦礫の近く。


 巨大盾へ身体を預けながら、Garmが座り込んでいた。


「おい、生きてるか!?」


「……騒ぐな」


 低い声。


 Rainは安堵する。


 Garmは血塗れだった。


 盾は半壊。


 両腕も震えている。


 それでもまだ立とうとしていた。


 Garmは砕けた盾へ視線を落とす。


 何度も命を守ってきた盾だった。


 それでも最後まで壊れなかった。


「……盾役が最後に倒れるわけにはいかん」


 そう言った直後。


 Garmは壁へ身体を預けた。


 もう脚が限界だった。


「いやもう倒れていいから……」


 Novaが呆れたように息を吐く。


 その時。


 壁際から、小さな音が聞こえた。


「……無理……」


 Lunaだった。


 壁へ背中を預けたまま崩れ落ちている。


 顔色は真っ青だった。


 指先もまだ震えている。


「Luna!?」


 Rainが駆け寄る。


「大丈夫か!?」


「……一文字でも間違えてたら、全員吹き飛んでた」


 Lunaが掠れた声で笑った。


「だから集中してただけ……」


 第二炉術式。


 あの暴走炉を止めるため、最後まで解析を続けていた。


 魔力消耗も精神負荷も、他より遥かに重かったはずだ。


「Lunaが止めてなかったら終わってた」


 Rainが真っ直ぐ言う。


「マジで助かった」


 Lunaは少しだけ目を丸くした後、照れたように視線を逸らした。


「Mist!」


「分かってる!」


 Mistは即座にポーションケースを開く。


 残り本数は少ない。


 だが惜しんでいる場合じゃない。


「全員、とりあえず座って」


 Novaも壁へ寄り掛かりながら息を吐いた。


 Crowは静かに座り込み、剣の状態を確認している。


 Mistは深呼吸し、杖を握った。


 淡い緑光が広間へ広がる。


《Heal》


 柔らかな光がRainたちを包み込んだ。


 焼けるようだった痛みが、少しずつ薄れていく。


「……生き返る……」


 Rainが息を吐く。


 Mistは続けてポーションを配り始めた。


「Nova、魔力回復」


「助かる……」


「Garmは侵食緩和も飲んで」


「……あぁ」


「Lunaは精神安定剤も」


「そこまで酷くない……」


「酷いから飲んで」


 即答だった。


 その時。


 Arcが静かに立ち上がった。


 まだ顔色は悪い。


 だが神官杖を握り直し、深く息を吸う。


「……試してみる」


「試す?」


 Rainが振り向く。


 Arcは新しく取得したスキル欄を見る。


《Refresh》


 疲労・状態異常軽減。


「たぶん、戦闘後にも使える」


 淡い白光が杖先へ集まった。


《Refresh》


 柔らかな光が広間へ広がる。


 Rainの身体を、淡い光が包み込んだ。


「……あ」


 肺が楽になった……!?


 Rainが目を見開く。


 さっきまで焼けるようだった呼吸が、少しだけ正常に戻っていた。


 身体の重さも軽くなっている。


「すご……」


 Novaが目を丸くする。


「疲労感が減ってる」


「状態異常軽減も入ってるっぽいな」


 Arcは続けてGarmへ杖を向ける。


《Heal Barrier》


 半透明の光膜が、Garmの全身を包み込んだ。


「……防御強化か」


 Garmが腕を握る。


「いや、違うな」


 Arcが説明欄を確認する。


「一定ダメージ軽減付きだ」


「うわ、当たりスキルじゃん」


 Rainが目を見開いた。


「長期戦かなり変わるぞそれ」


 Arcは小さく息を吐く。


「……やっと神官っぽくなってきたな」


「元からヒーラーだろ」


 Novaが苦笑した。


 その時。


《新規スキル取得可能》


 再びウィンドウが展開された。


「おぉ……!」


 Rainが目を見開く。


「スキル来た!」


「私も来てる!」


 Novaが即座にウィンドウを開く。


 Mistも静かに確認を始めていた。


「たぶん特殊条件だ」


 Arcが停止したアトラスを見る。


「OVERHEAT状態まで行った個体を止めた」


「普通攻略じゃない」


「マジかよ……」


 Rainは自分のウィンドウを開いた。


──────────────────


Name:Rain


Class:双剣士


Level:18 → 22


STR:41


AGI:52


VIT:29


DEX:33


Skill


《Twin Edge Lv4》


《Quick Step Lv1》NEW


《Accel Edge Lv1》NEW


《Cross Edge Lv2》


──────────────────


「加速系二つ!?」


 ウィンドウを開いた瞬間、Rainの身体が少し軽くなった気がした。


 脚へ力が流れ込む感覚。


 まだ慣れない。


 だが確実に、自分が強くなっているのが分かる。


 Rainは軽く床を蹴った。


 さっきまで鉛みたいだった身体が、少し軽い。


「マジで速くなってる……」


「レベルアップってこんな変わるのか」


「完全に前衛特化じゃん」


 Novaが笑う。


 Arcも頷いた。


「たぶん機動系だな」


「めちゃ強くない?」


「かなり強いと思う」


 その横。


「……来た」


 Mistが小さく呟く。


──────────────────


Name:Mist


Class:錬金術師


Level:17 → 21


Skill


《Potion Creation Lv3》


《Rapid Mix Lv1》NEW


《Potion Boost Lv1》NEW


──────────────────


「うわ、完全に工房向きだ」


 Novaが苦笑する。


 Mistは説明欄を確認した。


「Rapid Mixは高速調合……Potion Boostはポーション効果上昇」


「後方支援特化か」


 Arcが頷く。


「むしろかなり当たりだと思う」


「……戦闘向きじゃないけど」


「いや、十分ギルド向き」


 Dwarfが初めて口を開いた。


「前線だけじゃ攻略は続かねぇ」


 Mistは少し驚いたようにDwarfを見る。


「お前の薬、今回かなり助かった」


「……そう?」


「ああ」


 Dwarfは頷いた。


「だからお前はそっち伸ばせ」


 Mistは少し黙った後、小さく笑った。


「……うん」


「俺も来てるぞ」


 Dwarfが笑いながらウィンドウを開く。


──────────────────


Name:Dwarf


Class:鍛冶師


Skill


《Weapon Reinforce Lv1》NEW


《Armor Repair Lv1》NEW


──────────────────


「うわ、完全に鍛冶系」


 Rainが覗き込む。


「武器強化と装備修復か」


「前線向きじゃねぇな」


 Dwarfは笑う。


「でもギルドには必要だ」


 その視線が、砕けたGarmの盾へ向いた。


「……次はもっとマシなの作ってやる」


 Garmが小さく鼻を鳴らす。


「壊れない盾を頼む」


「無茶言うな」


 だがDwarfは少し楽しそうだった。


「けどまぁ、衝撃逃がす構造くらいは試せる」


「できるのか?」


 Rainが目を丸くする。


「今回ので分かった」


 Dwarfは砕けた盾を持ち上げる。


 中央部分が大きく歪み、金属が焼けていた。


「衝撃が一点集中してる」


「だから受け切れなくなる」


 Dwarfが指で歪みをなぞる。


「流せばいい」


「流す?」


「真正面から全部受けるんじゃねぇ」


「受けながら逃がす構造に変える」


 Garmが少しだけ興味深そうに盾を見る。


「……できるなら助かる」


 Dwarfは砕けた盾を見る。


「……今回ので分かった」


「俺は前で殴るより、後ろで作ってる方が向いてる」


 Mistが少し驚いたように見る。


「前線、もう出ないの?」


「必要なら出る」


 Dwarfは砕けたアトラス装甲を見る。


「でも本業はこっちだ」


 赤熱した装甲片を持ち上げる。


 そこにはまだ、微かに赤光が残っていた。


 Dwarfは赤熱装甲を指で軽く叩く。


 カン、と鈍い金属音が響いた。


「熱耐性だけじゃねぇ」


「内部に魔力流路が残ってる」


「加工できれば化けるぞこれ」


「使えそう?」


 Novaが尋ねる。


「かなり」


 Dwarfの目が細くなる。


 その視線は完全に素材へ釘付けだった。


 さっきまで死にかけていたとは思えない。


「……やべぇ」


「加工したい」


「いやお前元気になってない?」


 Rainが呆れる。


「当たり前だろ」


 赤熱装甲を見ながらDwarfが笑う。


「こんな素材見せられて寝てられるか」


 その声は、戦闘中より少し楽しそうだった。


「Garmの盾も作り直せる」


「Rainの双剣も軽量化できるかもな」


「マジ!?」


「ただし素材次第」


 Dwarfが笑う。


「だからもっと潜れ」


「結局そこかよ!」


 Novaもウィンドウを開いた。


──────────────────


Name:Nova


Class:魔導士


Skill


《Multi Cast Lv1》NEW


《Mana Burst Lv1》NEW


──────────────────


「Multi Cast……?」


 Novaは説明欄を二度見した。


「同時詠唱?」


「いや、これ普通にヤバくない?」


「でも魔力消費も増えそうだな」


 Arcが小さく頷く。


「完全に瞬間火力型だ」


「でもボス戦だと強そう」


「それはかなり強いと思う」


 Crowも静かにウィンドウを閉じていた。


「Crowは?」


「……これだ」


──────────────────


Name:Crow


Class:軽戦士


Skill


《Shadow Shift Lv1》NEW


《Dark Guard Lv1》NEW


──────────────────


 Crowは静かに短剣を振る。


 影みたいに身体が沈む感覚。


「……軽いな」


「機動型前衛って感じか」


 Rainが呟く。


「……悪くない」


 Crowは短く答える。


 そして。


 珍しく、小さく笑った。


 Lunaも静かにウィンドウを開く。


──────────────────


Name:Luna


Class:付与術師


Skill


《Enchant Lv1》NEW


《Mana Control Lv1》NEW


──────────────────


「……完全に支援特化」


 Novaが苦笑する。


「でも今回MVPじゃない?」


 Rainが即答した。


「Lunaいなかったら第二炉止められてないし」


 Lunaは少し照れたように視線を逸らした。


 誰も動かなかった。


 動けなかった。


 ただ荒い呼吸だけが、


 静まり返った広間へ響いている。


 崩れた遺跡。


 停止したアトラス。


 焼けた空気。


 その全部が、


 「本当に終わった」と告げていた。


 それでも。


 誰かが笑い、


 誰かが息を吐き、


 誰かが崩れ落ちる。


 全員、生きていた。


 Rainは改めて広間を見回した。


 崩壊した遺跡。


 停止したアトラス。


 ボロボロの仲間たち。


 全員限界だった。


 それでも。


 誰一人欠けていない。


 それは、


 このギルドにとって初めての“大勝利”だった。


第二炉アトラス戦、ようやく決着まで書き切れました。


 今回は「レイドボスを倒した達成感」をかなり意識して書いていました。


 特に後半は、


 ・限界状態からの逆転

 ・PT全員で繋ぐ時間

 ・役割分担

 ・討伐後の脱力感


 この辺をかなり重視しています。


 誰か一人が強くて勝ったわけじゃなく、


 Garmが止め、

 RainとCrowが切り込み、

 Novaが支え、

 Lunaが解析し、

 Mistが全員を繋ぎ、

 Arcが立て直す。


 全員で無理やり勝ち取ったレイド戦にしたかったので、そこが少しでも伝わっていたら嬉しいです。


 あと今回は、Dwarfを書くのがかなり楽しかったです。


 死にかけてたのに素材見た瞬間テンション上がる鍛冶師。


 ああいう「戦闘より素材と装備に目が行く職人キャラ」、MMO感がかなり出て好きなんですよね。


 そしてArcも、ようやく神官っぽいスキルが増えてきました。


 《Refresh》と《Heal Barrier》は、これからかなりPTの要になると思います。


 単純な回復だけじゃなく、


 “長期戦を支えるヒーラー”


 として強くしていきたいです。


 今回の勝利で、ギルドとしてもかなり一段階上へ進んだ感じがあります。


 ただ、その分だけ次からは敵もさらに危険になります。


 次回は、アトラス討伐報酬と素材回収。

 そしてギルドの今後についても少し触れていく予定です。


 ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。


 感想など頂けると、とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ