表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強ヒーラー、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する ~伝説のギルド《Aegis》復活~  作者: PeterP4n
第八章 新たな攻略

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/118

第115話 閉ざされた門の内側

# 第115話 閉ざされた門の内側


 門が閉じる音は、思ったよりも重かった。


 ゴォン……。


 金属の響きが空洞の奥へ沈み、足元に走る白銀の線が一瞬だけ淡く光る。閉じた門は動かず、隙間も残っていない。さっきまで通路だった場所は、ただの壁になっていた。


 Crowは背後を見ずに、白銀竜人から目を離さないまま呟く。


「退路なし、か」


 Arcも振り返らなかった。


 門を見ている余裕はない。目の前の白銀竜人は、退路が消えるのを待っていたかのように剣を構えたまま動かない。


「まずは生き残る」


 Arcの声に、全員の意識が戻る。


 倒すことではない。


 逃げることでもない。


 今は、この相手の動きを見極めることが先だった。


 白銀竜人が、ゆっくりと左腕を下げる。


 Cainが付けた亀裂は、外殻盾の表面にまだ残っていた。だが、さっきまで正面にあったその傷は、今は斧槌の軌道から外れる位置へ逃がされている。こちらの攻撃を受けて、もう立ち位置を変えていた。


 Arcはそれを見逃さない。


「攻め急ぐな。癖を見る」


 Cainは斧槌を握り直しただけで、踏み込まなかった。白銀の筋に細い火が走っている。行きたいのを堪えているのが、背中の力の入り方だけで分かった。


 白銀竜人が次に見たのは、Cainだった。


 亀裂を入れた相手。


 斧槌。


 サラマンダーの火。


 黄色い瞳がそれらを一つずつなぞり、剣の切っ先がわずかにCainへ向く。


「次、俺かよ」


 Cainが笑うより早く、白銀竜人が踏み込んだ。


 大剣が振り上がる。


 Cainは斧槌を横へ構え、受け流す姿勢を取った。昨日までの武器なら腕に衝撃が返っていたはずだが、今の斧槌なら流せる。そう判断した動きだった。


 Arcはすぐに声を飛ばす。


「受けるな。外せ」


 Cainは舌打ちしながら半歩ずらす。


 大剣が斧槌の外側を掠めた瞬間、金属音が弾けた。直撃ではない。それでもCainの身体が横へ持っていかれ、靴底が石床を削る。


 白銀竜人は逃げた先へ、もう一歩踏み込んでいた。


 追撃が速い。


 Garmが割り込む。


「《カバー》」


 短く告げるより先に、盾はCainの前へ入っていた。


 白銀の盾と大剣が噛み合う。


 ガァンッ!!


 Garmの肩が沈む。だが、盾は正面で止まらず、衝撃を斜め下へ逃がした。石床へ白い火花が散り、Garmの足元に細かな亀裂が走る。


 受けられる。


 ただし、余裕はない。


 ArcはGarmの腕がわずかに震えたのを見て、杖を向ける。


「《リジェネ》」


 淡い光がGarmの鎧へ染み込み、盾を支える腕へ薄く広がる。傷を消すためではない。衝撃で削られる身体を、崩れない位置へ戻し続けるための支援だった。


 Garmは息を吐き、盾の角度をわずかに直す。


「受けられる」


 その声に迷いはない。


 けれど、Arcには分かる。


 何度も受けられる相手ではない。


 白銀竜人は、今度は盾を見ていた。


 Garmの盾。


 Arcの光。


 受け流した角度。


 その全てを確かめるように、黄色い瞳がわずかに細くなる。


 Rainが横へ回った。


 今度は斬り込まない。双剣を構えたまま、白銀竜人の右側へ浅く踏み込み、すぐ離れる。攻撃ではなく、反応を見るための動きだった。


 白銀竜人の首が追う。


 大剣が動く。


 Rainは《Quick Step》でさらに外へずれた。剣は届かない。だが、追ってくる。速い。けれど、完全ではない。


 Rainは足を止めずに、もう一度だけ右側へ誘った。


 白銀竜人が剣を返す。


 その瞬間、ほんのわずかに肩が遅れた。


「右、少し遅い」


 Rainの声は小さい。けれど、Arcには届いた。


 Siaも同じ場所を見ていた。


 彼女は矢を放たず、白銀竜人の肩、肘、膝、尾の付け根へ順に視線を走らせている。外殻が硬いのは分かっている。だから今は、どこが柔らかいかではなく、どこが遅れるかを探していた。


 大剣を振り戻す時。


 右肩。


 ほんの一瞬。


 Siaの指が矢羽根へ触れる。


「切り返しの後、右肩が開く」


 Crowが白銀竜人の足元へ視線を落としたまま、鼻で息を吐く。


「そこを狙うには、止める必要があるな」


 その通りだった。


 隙はある。


 だが、短すぎる。


 Novaはその間、二体の精霊を肩に置いたまま、白銀竜人の外殻を見ていた。


 サラマンダーの火は小さい。シルフの風も弱く絞られている。派手な魔法は撃たない。ただ、白銀竜人が大剣を構えるたび、外殻を走る淡い光がどこへ流れるのかを追っていた。


 大剣へ光が集まる。


 その瞬間、左腕の外殻盾の明滅が弱くなる。


 次に左腕を構えると、大剣の光が鈍る。


 同時には強くない。


 Novaは杖を握り直し、白銀竜人の剣先から目を離さずに言った。


「切り替えてる」


 Arcが視線だけを向ける。


「剣と盾?」


 Novaは頷く代わりに、サラマンダーの火を小さく揺らした。


「攻撃する時、盾が薄い。守る時、剣が薄い」


 それで十分だった。


 全部が硬いわけではない。


 硬い場所が、変わっている。


 白銀竜人が大剣を持ち上げる。今度は横薙ぎではなく、上段から振り下ろす構えだった。


 Garmを潰す気か。


 それとも、Garmに受けさせて隊列を崩す気か。


 Arcは判断するより先に、白銀竜人の視線を見た。


 狙いはGarmではない。


 Garmの後ろ。


 Rain。


「Garm、流せ。Rain、右へ誘え」


 Garmは盾を構え直し、Rainは返事をせずに右へ跳ぶ。白銀竜人の大剣が落ちる寸前、Crowの鎖が再び床を走った。


「《ブラックチェイン》」


 黒い鎖が足首へ絡む。


 だが、白銀竜人は前回より早く反応した。剣を振り下ろすより先に、足をわずかに捻り、鎖が食い込む角度を変える。


 ギギ、と嫌な音がした。


 鎖が軋む。


 Crowの眉が動く。


「次は二秒もたねぇ」


 それでも、止まった。


 一秒。


 あるいは、それより少し長いだけ。


 だが、Aegisには十分な時間だった。


 Arcの頭の中で、散らばっていた情報が一つずつ噛み合っていく。


 Garmは受けられる。ただし長くは無理。


 Cainの斧槌なら、外殻盾へ亀裂を入れられる。


 Rainは右側の遅れを見つけた。


 Siaは切り返し後の肩を見ている。


 Novaは剣と盾の魔力切り替えを読んだ。


 Crowは一瞬だけ止められる。


 勝つ形ではない。


 崩す形なら、作れる。


 Arcは杖を握り直した。


「次の大振りを誘う」


 その声に、全員が動きを止めずに反応する。


「Garmが流す。Rainは右へ誘導。Crowは一瞬でいい、止めろ」


 Rainが右側へ回り、Garmは盾の角度を落とす。Crowは鎖を握り直したまま、足元だけを見ている。


「Sia、左腕」


 Siaの矢が、まだ放たれないまま弓へ乗る。


「Cain、亀裂を広げろ」


 Cainが笑った。


 今度は声を出さない。


 ただ、斧槌を構える。


 白銀竜人も、それを見ていた。


 黄色い瞳が細くなる。


 こちらが何かを狙っていると、理解している。


 それでも、白銀竜人は大剣を振り上げた。


 剣へ光が集まる。


 左腕の外殻盾が、わずかに暗くなる。


 Arcは、その瞬間を待っていた。


「今だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ