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『世界最強ギルド《Aegis》、サービス終了したゲーム知識で現実ダンジョンを攻略する』  作者: そら


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第十話 ギルドホーム

# 第十話 ギルドホーム


 探索者協会を出た瞬間。


「っはぁぁぁ〜……疲れたぁ……」


 Rainがその場で大きく伸びをした。


「人多すぎでしょあれ」


「有名ギルドになったからな」


 Garmが苦笑する。


 協会内では常に視線を感じていた。


 世界最前線。


 《Aegis》。


 まだ活動数日だというのに、既に名前だけは広まり始めている。


「……面倒だな」


 悠真は小さく息を吐いた。


「でも悪いことばかりじゃないわよ」


 Novaがスマホ画面を見せる。


【速報】

《Aegis》に企業スポンサー接触か


【深層攻略最前線】

現在一位《Aegis》

Depth:6


【掲示板】

・ヒーラー化け物

・あの神官なんなん?

・バフ維持率おかしい

・絶対元廃人


 Rainが吹き出した。


「元廃人は否定できない」


「お前もだろ」


「えへへ」


 その時。


 後ろからDwarfが声をかける。


「で、拠点どうする?」


「拠点?」


 Rainが首を傾げる。


「ギルドホームだよ」


 Dwarfは当然のように言った。


「生産設備置く場所必要だろ」


「あー……」


 確かに。


 武器。


 ポーション。


 素材研究。


 全部外でやるには限界がある。


 悠真は少し考える。


「……必要か」


「必要だな」


 Crowも短く頷いた。


 数時間後。


「……狭くない?」


 Rainが真顔で呟いた。


 《Aegis》が借りたギルドホーム。


 それは都内外れにある、小さな古ビルの二階だった。


「最初はこんなもんだろ」


 Garmが肩をすくめる。


 だが中は意外と広い。


 会議用テーブル。


 空き部屋。


 奥には倉庫スペース。


 生産設備を置くには十分だった。


「工房スペースはこっちか」


 轟鉄馬――《Dwarf》は部屋へ入るなり壁を叩き始めた。


「防音微妙だな」


「最初に見るのそこ?」


「鍛冶で爆音出るからな」


 ゲーム時代から変わらない。


 装備製作になると異常に細かい男だった。


「……ここ、魔力流れ悪くない」


 小さく呟いたのはLuna。


 本名、月城ルナ。


 《Aegis》専属の付与術師。


 普段は大人しい。


 だが、装備強化になると異常な集中力を発揮する。


「また始まった」


 Rainが苦笑する。


 Lunaは既に部屋の魔力流れを確認し始めていた。


「魔力循環整えれば付与効率上がるかも」


「そんなこと分かるのか?」


「なんとなく」


「いや絶対なんとなくじゃないだろ」


 一方。


 部屋隅では、Mistが既に侵食魔晶を並べ始めていた。


「……これ、絶対面白い」


 篠宮ユイ――《Mist》。


 《Aegis》の錬金術師。


 新素材を見ると寝食を忘れる研究狂だった。


「その顔してる時のMist怖いんだよな……」


 Garmが少し距離を取る。


 Mistは気にした様子もなく、侵食魔晶を見つめている。


「普通魔石と内部構造違う」


「どんな感じだ?」


 Dwarfも興味深そうに近付く。


「魔力が圧縮されてる」


「侵食反応か?」


「多分」


「つまり?」


 Rainが聞いた瞬間。


 ボンッ!!


「きゃぁぁぁっ!?」


 小規模爆発。


 紫煙。


 Rainが涙目になる。


「危ないじゃん!!」


「調合比率ミスった」


「怖っ!!」


 だが。


 Mistは気にせず再び素材を見つめ始めた。


「……でもこれ、出力かなり高い」


 その一言で部屋が静かになる。


 今、世界中で研究されている魔石。


 その上位互換かもしれない。


「これ、下手したら世界変わるぞ」


 Dwarfが真面目な顔で呟いた。


 悠真も同じことを考えていた。


 これはもう。


 ゲームじゃない。


 文明そのものが変わり始めている。


 その時だった。


「……出来た」


 Lunaが小さく声を上げる。


 全員が振り向く。


 机上。


 一つの鞄が淡く光っていた。


亜空収納鞄マジックバッグ

試作型。


「え、もう!?」


 Rainが驚く。


 Lunaは少し照れながら頷いた。


「小容量だけど」


 Garmが恐る恐る中を見る。


「……広っ」


 見た目は普通の鞄。


 だが内部には、明らかに通常以上の空間が広がっていた。


「成功か」


 Dwarfが笑う。


「これ量産できたら探索効率かなり変わるぞ」


「協会が欲しがりそうね」


 Novaが呟いた。


 その横。


 Crowは静かに武器を整備していた。


 九条蓮。


 《Aegis》のサブタンク兼近接火力。


 無口。


 だが戦闘になると誰より冷静だった。


「Crowってさ」


 Rainが小声で言う。


「リアルでも静かだよね」


「別に喋る必要ないだろ」


「あ、喋った」


 少しだけ笑いが起きる。


 その空気を眺めながら。


 悠真は小さく息を吐いた。


 昨日までは、ただのゲーム仲間だった。


 だが今は違う。


 現実で。


 本当に同じギルドとして集まっている。


 その時。


 悠真のスマホが震えた。


《探索者協会》


【七階層以降の調査依頼について】


「来たか」


 悠真が画面を開く。


『現在、七階層以降でモンスター活性化を確認』


『上位探索者ギルドへ調査協力を要請します』


 Rainが覗き込む。


「もう次の依頼?」


「まぁ俺たちしか行けないんだろうな」


 Garmが苦笑した。


 実際。


 一般探索者の多くは、まだ三階層にも届いていない。


 その時。


 テレビニュースが流れる。


『現在、《Aegis》と《Fenrir》が世界最前線を維持――』


『企業スポンサーによる接触も始まっており――』


 Rainがニヤニヤしながら悠真を見る。


「人気者だねぇ、ギルマス」


「嬉しくない」


「でもお金は必要」


 Dwarfが即答した。


「設備費かかるぞ」


「現実的だなお前……」


 少しだけ笑いが起きる。


 その空気を眺めながら。


 悠真は静かに窓の外を見る。


 赤黒い空。


 遠くに見える巨大ダンジョン。


 そして。


 机上の侵食魔晶。


 その瞬間。


 ドクン――。


 侵食魔晶が脈打った。


「……?」


 悠真は目を細める。


 黒い魔力。


 そして。


 一瞬だけ。


 頭の奥へ流れ込んだ映像。


《Depth:101》


 暗闇。


 巨大な影。


 そして。


 聞こえる。


 無数の咆哮。


 悠真は静かに呟いた。


「……来る」

読んでいただきありがとうございます。


今回は《Aegis》のギルドホーム設立と、各メンバーの紹介回でした。

攻略組だけでなく、生産職メンバーたちも今後かなり重要になっていきます。


次回からは、七階層以降の本格攻略が始まります。

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