第九話 探索者協会
# 第九話 探索者協会
『本日、日本政府は“探索者協会”の設立を正式発表しました』
テレビ画面の向こうで、ニュースキャスターが緊張した表情を浮かべる。
『ダンジョン内で採取される“魔石”は、既存エネルギーを大きく上回る出力を確認』
『政府は国家戦略資源として管理を開始――』
街中の大型モニター。
スマホニュース。
SNS。
どこを見てもダンジョンの話題ばかりだった。
【魔石で発電成功したらしい】
【世界変わるぞこれ】
【探索者ガチで職業になるのか?】
【協会設立きた】
【深層勢もう企業から声かかってるらしい】
ダンジョン出現から、まだ数日。
それなのに世界は既に変わり始めていた。
一方。
《Aegis》は一時的にダンジョン攻略を中断し、都内へ戻っていた。
「うわぁ……人増えてる」
Rainが駅前を見回す。
探索者装備を着た人間が明らかに増えていた。
武器屋。
防具屋。
簡易ポーション販売。
数日前まで存在しなかった店まで並び始めている。
「完全に別世界だな」
Garmが苦笑した。
その時。
悠真のスマホが震える。
《探索者協会》
登録要請通知。
「来たか」
悠真は画面を見ながら呟く。
「協会?」
Novaが覗き込む。
「探索者の管理組織だろうな」
現在、世界中で探索者が急増している。
当然。
政府側も統制を始める。
「まぁ必要よね」
「PKとか出てもおかしくないし」
Rainの言葉に、空気が少し重くなった。
現実だ。
力があれば、悪用する人間も出る。
「とりあえず行くぞ」
数時間後。
《探索者協会》本部。
臨時設立とは思えないほど大きな施設だった。
受付前には大量の探索者が並んでいる。
「うわ、混みすぎ……」
「そりゃそうだろ」
Garmが肩をすくめた。
その時。
近くのモニターへ映像が流れる。
《CURRENT DEEPEST FLOOR》
1位:《Aegis》
Depth:6
2位:《Fenrir》
Depth:6
3位:《Helheim》
Depth:5
4位:《Valkyria》
Depth:5
周囲がざわついた。
「《Aegis》ってあいつらか?」
「六階層とか化け物だろ……」
「絶対元プロゲーマーとかだって」
Rainが小さく笑う。
「有名人じゃん」
「嬉しくねぇ……」
悠真はため息を吐いた。
受付へ向かう。
「探索者登録ですね?」
受付女性が端末を操作する。
「はい」
「パーティ登録も行いますか?」
「ギルド登録で」
その瞬間。
受付女性の動きが止まった。
「……ギルド?」
まだ設立直後。
正式ギルド登録者は極端に少ない。
「ギルド名をお願いします」
悠真は迷わず答える。
「《Aegis》」
静寂。
次の瞬間。
周囲がざわついた。
「え?」
「《Aegis》本人!?」
「マジかよ!」
Rainが苦笑する。
「完全にバレたね」
「目立ちすぎだ」
登録端末へメンバー情報が表示されていく。
【Guild:《Aegis》】
Arc
Garm
Rain
Crow
Nova
Dwarf
Luna
Mist
その時。
「ん?」
Mistが受付横の展示棚を見つめた。
「どうした?」
「あれ」
視線の先。
ガラスケース内。
一つの鞄が置かれていた。
《亜空収納鞄》
試作品。
「……マジックバッグ?」
Rainが目を輝かせる。
「え、あるの!?」
受付女性が苦笑した。
「まだ未完成品ですけどね。ダンジョンドロップの研究で作られました」
「容量は?」
Dwarfが即座に聞く。
「現在は小型倉庫程度です」
「充分だろ……」
探索者たちがざわつく。
通常なら大量の荷物を運ぶ必要がある。
だがマジックバッグがあれば話が変わる。
深層攻略効率が一気に上がる。
Mistが目を細めた。
「……内部空間、魔力圧縮式?」
「え?」
受付女性が固まる。
「なんで分かるんです?」
「なんとなく」
「いや絶対なんとなくじゃないですよね?」
Dwarfも興味深そうに見る。
「侵食魔晶使えば容量もっと増やせるかもしれんな」
「多分できる」
受付職員たちが顔を見合わせた。
なんなんだこの集団。
その時だった。
協会奥の扉が開く。
「……やっぱり居たか」
低い声。
振り返る。
そこには、大型戦斧を背負った男が立っていた。
《Fenrir》ギルドマスター。
Fen。
周囲がざわめく。
「《Fenrir》!?」
「世界二位の……!」
Fenは真っ直ぐ悠真を見る。
そして。
小さく笑った。
「久しぶりだな、Arc」
悠真も少しだけ笑う。
「ああ、Fen」
最前線。
世界最強クラスの攻略ギルド同士が、現実で再会した瞬間だった。
読んでいただきありがとうございます。
【スキル・アイテム解説】
《マジックバッグ》
内部へ物資を収納できる魔道具。
容量や性能は素材・付与技術によって大きく変化する。
《侵食魔晶》
通常魔石とは異なる未知素材。
高出力の魔力を持つが、内部に不安定な反応が確認されている。
次回から、《Aegis》のギルド活動も本格的に始まっていきます。




