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空白  作者: 伊原亜紀
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空白-6

 資源経済学の授業を受ける。相変わらず授業は退屈だが、成績を上げるために懸命にノートを取った。就活をするにあたって、成績が良くて損をすることはない。どうせ同じ時間を使うなら有意義に使いたい。以前は授業中にスマホを弄っていたが、娯楽アプリが消され、使用制限アプリが入ったそれは、授業中にいじるほどの魅力を持っていない。スマホから人生を取り戻す。これができたのが、僕の人生最大の功績だといえるだろう。この媒体に一日何時間奪われていたというのだ。思い返すだけで背筋が凍る。僕が捨ててきた時間たち。二度と戻らない若き貴重な時間。もう失いたくない。

 授業が終わる。以前は感じなかった充実感に基づく疲労感がある。人生には充実が必要だ。充実感が脳の中で快感にかわる。僕は二限の授業が開かれる講義室に向かった。

 廊下でサークルの友人の後ろ姿を見つけた。三ヶ月前のあの日に生活を改革して以降、僕はサークルの集まりに顔を出すことは無くなった。夜早く眠る生活リズムを崩したくはなかったし、非生産的なことに時間を使いたくなかった。自然と彼らとは距離ができた。彼らは誘いを断る僕に執着を見せなかった。人間関係なんて大概はそんなものなのかもしれない。深く狭く、それが理想の人間関係だ。今までの広く浅い関係は切り捨てるべき対象だ。陳腐な言葉だが、何かを得るには、何かを失わなくてはならないのだから。僕は見つけた後ろ姿に追いつこうとはせず、少し遠回りをして講義室に向かった。

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