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空白  作者: 伊原亜紀
5/18

空白-5

 腕に力を入れ、顎がバーを越すまで体を引き上げる。当初は一回しかできなかった懸垂も十回できるようになっていた。

 僕は壁に貼ってある紙に目をやった。懸垂15回と紙には書いてある。TOEIC750点、可愛い彼女を作ると書いてある紙もある。目標を視覚化することは大切だ。懸垂も目標を見えるところに書いたおかげで、十回できるようになったのだ。TOEICも700点に到達した。僕は着実にレベルアップしている。

 朝のルーティーンの筋トレメニューを消化し、プロテイン飲料を飲む。バナナの強い香料を感じる。服を脱いで洗濯機の中に入れ、浴室に移動する。僕は鏡に映った自分の体を見る。格好良い体だ。懸垂を始めたのは正解だった。わかりやすく背中の幅が広がり、逆三角形の体ができている。格好良い。ジムに行く必要は感じなかった。自分の理想の体も、女の子から人気のある体も自宅で懸垂をしていれば作ることができる。蛇口を捻り、冷たい水を体に浴びせる。心臓が縮こまり、呼吸が浅くなる。体感時間で十五秒ほど水を浴びる。肺から出てくる息が冷たい。ボディーソープを手につけて体を軽く洗い、再び冷たい水を浴びて体の泡を流す。冷水を浴びた後、体が内側から温まっていくのを感じる。素晴らしい感覚だ。

 服を着た後、朝食を用意する。目玉焼き、納豆、味噌汁、白米。ルーティーンと化しているいつもの朝食だ。朝食を黙々と平らげ、すぐに皿を洗う。時計に目をやる。いつも通り、八時前を指している。僕は電子書籍端末を取り出し、昨日購入した本を読み始めた。成功者の行動と精神が僕の身体に染み込み、高揚感を与える。自己啓発本を読んでいる時、僕は未来の自分に期待することができる。自己啓発本の教えが、現在の僕を縛り付けてくれる。僕は人生でかつて感じたことのない快感を感じていた。

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