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空白  作者: 伊原亜紀
13/18

空白-13

「大智くん、内定おめでとう!」シャンパングラスを手にした佳奈は、嬉しそうに言った。

「ありがとう。佳奈のおかげだよ」僕は思ってもないことを言った。就活において佳奈が助けになったことはない。

「いやいや、私なんにもしてないよ」

「一緒に居てくれでしょ。それだけで良い息抜きになったよ」

「そう?なら良かった」佳奈は嬉しそうに笑った。

「それにしても、よくこんなおしゃれなところ知ってたね」僕は周りを見渡した。こんなに高級感のある店も、コース料理も、僕は初めてだ。

「インスタで探したの。ちゃんとジャケット着て来てくれてありがとね。大知くん、スーツとかジャケット似合うよね。姿勢が良いからかな」

「ありがとう。よく言われる」

「あ、照れてる?」

「照れてる照れてる」僕はシャンパングラスを傾けて、少しだけ飲んだ。高級な味がした。

「それにしても、OWCなんてすごいね。良かったね、第一志望から内定貰えて」

「運が良かったね」

「いやいや、実力だよ。なんか目標を立てたら、絶対にそれを達成するっていう執念を感じるよ。大智くんからは」

 ウェイターが前菜を持ってきてくれて、料理の説明をした。見たことのない料理で、料理名も使っている素材も、耳から抜け落ちていった。分かったのはニンジンとセロリを使っていることだけだ。

「なんかすごいね」

「でしょ」佳奈は小さなバックからスマホを取り出して写真を撮った。

「インスタ用?」

「そう。せっかくこんな店に来たんだから。大智くんもやれば良いのに」

「いや、俺は大丈夫」

「まあやってないほうが、浮気の心配がなくてよいけどね」

「そういうもんか」

「そういうもんだよ。大智くんハイスペックだからね。プロフィールの内容で女の子が寄ってきちゃうよ」佳奈はそう言って笑った。

「そんなことないでしょ」

「いやそんな事あるよ。高身長、高学歴、高収入。3Kだよ」

「ずいぶん古い価値観じゃない?」

「女の子はいつまでも3Kが好きなんだよ」

 僕は名前の忘れた料理を口に入れた。見た目に特徴はあったが、満足感はなかった。

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