空白-13
「大智くん、内定おめでとう!」シャンパングラスを手にした佳奈は、嬉しそうに言った。
「ありがとう。佳奈のおかげだよ」僕は思ってもないことを言った。就活において佳奈が助けになったことはない。
「いやいや、私なんにもしてないよ」
「一緒に居てくれでしょ。それだけで良い息抜きになったよ」
「そう?なら良かった」佳奈は嬉しそうに笑った。
「それにしても、よくこんなおしゃれなところ知ってたね」僕は周りを見渡した。こんなに高級感のある店も、コース料理も、僕は初めてだ。
「インスタで探したの。ちゃんとジャケット着て来てくれてありがとね。大知くん、スーツとかジャケット似合うよね。姿勢が良いからかな」
「ありがとう。よく言われる」
「あ、照れてる?」
「照れてる照れてる」僕はシャンパングラスを傾けて、少しだけ飲んだ。高級な味がした。
「それにしても、OWCなんてすごいね。良かったね、第一志望から内定貰えて」
「運が良かったね」
「いやいや、実力だよ。なんか目標を立てたら、絶対にそれを達成するっていう執念を感じるよ。大智くんからは」
ウェイターが前菜を持ってきてくれて、料理の説明をした。見たことのない料理で、料理名も使っている素材も、耳から抜け落ちていった。分かったのはニンジンとセロリを使っていることだけだ。
「なんかすごいね」
「でしょ」佳奈は小さなバックからスマホを取り出して写真を撮った。
「インスタ用?」
「そう。せっかくこんな店に来たんだから。大智くんもやれば良いのに」
「いや、俺は大丈夫」
「まあやってないほうが、浮気の心配がなくてよいけどね」
「そういうもんか」
「そういうもんだよ。大智くんハイスペックだからね。プロフィールの内容で女の子が寄ってきちゃうよ」佳奈はそう言って笑った。
「そんなことないでしょ」
「いやそんな事あるよ。高身長、高学歴、高収入。3Kだよ」
「ずいぶん古い価値観じゃない?」
「女の子はいつまでも3Kが好きなんだよ」
僕は名前の忘れた料理を口に入れた。見た目に特徴はあったが、満足感はなかった。




