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43(婚約編)

1話ずつ毎日21時頃の更新予定です。

 収穫祭が近づく今日は、ビアンカの『カフェ・ルパルト』の開店日。私は朝からお店の中を忙しく動き回っていた。


 試食をしたとき、ビアンカが引き抜いてきた腕の良いパティシエが、私達の作った素人のレシピを素敵にアレンジしていて、プロの技に感動してしまった。『ビアンカ'sコレクション』と呼んでいるオーディションを勝ち抜いたバトラー服の男性達も、今か今かと接客の準備をしている。


 ビアンカの指示が飛ぶ。私も手伝ったり、質問に答えたり…初日なので皆そわそわしている。


 いよいよ時間になり、ビアンカが扉を開けて、開店を待ってくださっているお客様に、優雅にカーテシーをする。


「ただいまから『カフェ・ルパルト』、始めさせていただきます。お待たせいたしました。」


 良く通る声が響き、『ビアンカ'sコレクション』が一斉にお辞儀をして、お客様を出迎える。お客様が入ってくると、お店の中が活気で満ち溢れてきた。私も、ルパルト領産の食材を説明したり、デザートに合うお茶の提案をする。美味しいと言ってくださると嬉しいし、色々なご意見も頂いて勉強になる。




 目紛しくお客様を出迎えては、送り出していく。客足が落ち着いてきた夕方に、リアンが来てくれた。


「ミリィ、来たよ。リック君も連れてきた。」


「フロイト公爵令嬢、素晴らしいお店ですね。我がルパルトの名が掲げられており、感謝いたします。」


「コール伯爵子息、ルパルト伯爵子息、本日は来てくれてありがとう。あと、お祝いの花も。ミリィ、もうお店はいいから、ご一緒したら?ゆっくりして行ってね。」

 ビアンカは、他のテーブルにも声をかけながら、とても楽しそうだ。


「姉上、さっそく頼んでも良いですか?」


「いいわ。どれにする?」

 リックの隣に座り、顔を合わせてメニューを見る。姉弟で王都にいるのに、一緒に外食するのは初めてだった。デザートやお茶の説明をし終えると、リックは悩み始めた。


「姉上、私はチーズケーキとアップルパイが食べたいのですが、二つは多いでしょうか?」


「半分こする?どちらもアイスクリームが付いてるし、多いかもしれない。リアンは何にする?」


「…え?…ええと、俺は…苺のタルトにするよ。ミリィは、苺が好きだろ?少しあげるよ。」


「兄上、姉上は苺と林檎なら林檎の方が好きですよ。私と好き嫌いが似てるので。」

 余り気にしたことが無かったけど、リックの言う通りかもしれない。


「でも、苺も好きよ。あ、店員さんが来るわ。」

 注文を取ってもらい、チーズケーキとアップルパイは二人で食べると伝える。


「姉上、このお店の従業員、皆んな男前ですね。女性客の目が輝いていますよ。」


「そうなの!ビアンカ'sコレクションよ。皆んなルパルト領の出身なのよ。ビアンカ曰く、『味覚と視覚に訴える』らしいわ。」


「私もここで働かせてほしいですよ。」


「だめ。リックは勉強で忙しいでしょ?」

 ぷにっとリックの頬をつねる。リックは柔らかい頬の持ち主で、昔から私はリックの頬を触るのが好きだった。


「学園だと肩身が狭くて…。」


「大丈夫?学園で上手くやっていけてないの?」


 リックが私の耳に手のひらを当てて、内緒話をする。『マリア嬢に付き纏われて、大変なんですよ。』驚いてリックの顔を見ると、心底困った様子だ。私も耳打ちする。『あとで、リアンに止めるように言ってあげるわ。』リックが嬉しそうに頷く。


 リックは小さい頃から、女性から付きまとわれたり、待ち伏せされたり、嫌がらせを受けてきた。『学園のプリンス』の話を聞いて、もしかしてと思っていた。


「私は、早く人口密度の低いルパルト領に帰りたいですよ。」


「ふふっ…可哀想なリック。あと一年以上先ね。」

 私と同じ貧相な薄い金髪を撫でてあげる。こんな地味な見た目なのに、何故なのかしらね…。同じ薄紫の瞳を見つめながら、リックが貧乏伯爵家の後を継ぐ頃には、ルパルト領がもっと豊かになりますように、と苦労ばかりの弟の幸せを願う。


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