20(婚約編) リアン〜side〜
1話ずつ毎日21時頃の更新予定です。
馬車に乗ると、ミリィは舟を漕ぎ始めた。ゆっくり俺の肩にもたせさせる。相当、疲れてるようだ。初日だし、ジェイクの直属とはどういうことなのか…。
ジェイクは、筆頭公爵のフロイト家の嫡男で、頭脳明晰の切れ者だ。引くて数多だろうが、未だ婚約者もおらず社交界の花形だった。次期宰相候補として多忙の極みだろうに、新しい文官の指導なんて面倒くさいこと引き受けるだろうか。悪い予感しかない。
伯爵家に着いても、すやすや寝てるミリィを横抱きにして、そのままベッドに寝かせに行く。シーサに様子を見てるように言うと、俺は執務室で書類を片付けながら、ディミトリにジェイクについて聞いた。
「フロイト公爵子息様も首席卒業され、当時は右に出る者はいないと称されていました。幼少の頃から婚約者がいましたが、風の噂では、お相手が浮気したために独り身になったとか…。あの見目で、結婚される兆しもないので、女嫌いと言われておりますね。申し訳ないですが…若旦那様の負けが確定だと…。」
確かにジェイクは、金髪碧眼、家柄財産、次期宰相と来たら、女性が好む優良物件だ。何も戦ってるわけではないのに、ディミトリに余計なことを言われた気がする。ミリィが起きたとシーサが報告しに来たので、さっそく食事して早めに寝ることにした。
ガチャ…。
「…リアン?」
ミリィが、書類から顔をあげて微笑む。ベッドの端に座って、頬を撫でると、くすぐったそうにして可愛い。獣化してしまった一昨日と昨日を反省し、今日こそは…疲れてるミリィを紳士的に寝かしつけたい。
「ミリィ、今日はもう寝た方がいいよ。」
「そうね。ジェイク様に頂いた手順書を読んでたけど、明日にするわ。」
ベッドに横になったミリィの手を握り、額に口付けする。
「うん、寝るまでここにいるよ。」
ミリィが瞼を閉じる。今日は、かなり紳士的にできたんじゃないか!?
少し経つとミリィの目がうっすら開き、薄紫の瞳が不安げに揺れる。
「リアン?」
「ん?眠れない?」
「うん…。リアン……もしかして…今日はキスしてくれないの?」
「…っ?…えぇと…えと、そういうわけじゃないけど、ミリィが疲れてると思うし、ミリィのためにはやめた方がいいかなって…。」
「………私は…したいのに?」
俺のどっかの神経回路が切れた気がする。噛み付くようにミリィに口付ける。角度を変えて、キスしてないところが無いように…。ミリィは「はぁ…」と息継ぎして、そのまま寝落ちしてしまった。
またやってしまった…俺は頭を掻きながら、枕元にある書類を回収して、ベッドサイドに置こうとしたとき、不意に手順書が目に入った。明瞭で、よくできてる。ジェイクが作ったものだろう。あやしいな…本能が警告している。
ミリオンがコール伯爵家に来てから、実はまだ3日目なのに、キスばかりしてるカップルです。リアン・コールは、背中の半分ぐらいまでの赤茶髪を束ねており、切れ長の黒目です。




